広報誌「かけはし」

■2017年12月 No.555
 平成29年度健康保険組合全国大会が11月28日(火)12時から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
 「迫る超高齢社会!皆保険の存続へ改革断行!! 優れた保険者機能を発揮し、我々が皆保険を守る」をテーマに掲げた全国大会には、3500人を超える健保組合関係者が集まった。大阪からの参加者は200人を超えた。
 開会の辞、議長あいさつのあと、健保連の大塚陸毅会長が基調演説を行った。大塚会長は、いまの健保組合にとっての最大の課題は、高齢者医療制度への拠出金である。すでに支援金と納付金の割合が平均46.1%に達し、法定給付費を上回っている組合は363組合にも上っている。その影響もあり、赤字組合も4割近くになり、健保組合が本来果たすべき役割すら、十分に果たし得ない可能性があると危惧した。
 また、国民皆保険制度を堅持するための新たな提言を公表した。一つ目は、高齢者医療費の負担構造改革である。現役世代が高齢者を支えることを否定しないが、現役世代に過度に依存する状況には歯止めが必要である。二つ目は、国民医療費を抑制することである。現在、各都道府県においては地域医療構想が策定され、来年度からの医療計画に反映される。三つ目は、健康で働く意欲のある高齢者は、支える側に加わってもらうというもの。現役世代が限界に達している今、1人でも多くの支え手が必要である。
 世界に冠たる国民皆保険制度を次世代につなぐため、中心となって支えている現役世代が納得でき、公平な制度を構築する。そのために、あらゆる提言活動を一丸となって取り組んでいきたい、とした。
 続いて、健保連の白川修二副会長が、大会決議と、スローガン(@拠出金負担に50%の上限、現役世代の負担に歯止めをA高齢者医療費の負担構造改革の早期実現B実効ある医療費適正化対策の確実な実施C生涯現役社会を目指し、保健事業等の積極的な推進)の趣旨を説明した。
 このあと、コニカミノルタ健保組合の鈴田朗常務理事が大会決議案を力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で高木美智代厚生労働副大臣に要請した。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    デンソー健保組合  齋藤隆夫常務理事
  議長あいさつ 四国電力健康保険組合  杉ノ内謙三理事長
  会長基調演説 健保連 大塚陸毅会長
  決議の趣旨説明 健保連  白川修二副会長
  決議 コニカミノルタ健康保険組合  鈴田朗常務理事
  厚生労働副大臣への決議の手交
  厚生労働副大臣あいさつ
  政党代表あいさつ 自民党・公明党・立憲民主党
  関係団体あいさつ 日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    全国健康保険協会
  特別企画 パネルディスカッション
   パネリスト
   堀 真奈美(東海大学教養学部教授)
   山口  聡(日本経済新聞社シニアエディター)
   棟重 卓三(健保連理事)
   コーディネーター
   梅村  聡(よどがわ内科クリニック理事長)
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健康保険組合  阪口克己常務理事

 世界に誇るわが国の皆保険制度は、加速度的に進行する超高齢化と継続する医療費の増加により、特に保険財政の面から大きな危機に直面している。皆保険制度を支える、われわれ健康保険組合も、増え続ける拠出金負担により財政が圧迫され、その存続さえも脅かされている。
 健保連が行った将来推計では、2025年度には国民医療費が現在の1.4倍、約58兆円まで増加し、特に高齢者医療費はこれ以上の伸びを示すと見込まれる。現在、高齢者医療費への拠出金が加入者に対する法定給付費を上回るという非常に厳しい健康保険組合が多数ある中で、2025年度には組合全体で拠出金割合が50%を超える異常な事態が発生する。また、この間に被保険者1人当たりの年間保険料は約18万円も増加し、現役世代の負担は限界を超える水準に達することは確実である。
 国民の生活基盤である皆保険制度を存続させるためには、現役世代の負担を軽減する「高齢者医療費の負担構造改革」が急務である。消費税率の引き上げなどにより必要な財源を確保しつつ、少なくとも拠出金負担割合に50%の上限を設定し、上限を超える部分は国庫で負担するなどの具体策を講じて、現役世代の負担に一定の歯止めをかけなければならない。また、制度の持続性を高めるためには、あらゆる方策を通じて医療費全体の伸びを抑制することが不可欠である。国に対しては、実効ある医療費適正化対策の断行を強く求める。
 われわれ健康保険組合は、自主・自立の組織という特性を生かして、事業主との連携のもと、加入者の実態に沿ったきめ細かい健康保持・増進、疾病予防などの保健事業を推進するとともに、医療費適正化への積極的な取り組みなど優れた保険者機能を最大限発揮してきた。これからも、皆保険制度の中核を担う保険者として制度を守りぬくための活動を、これまで以上の努力と使命感をもって粘り強く行っていく所存である。
 将来にわたって国民が安心でき、公平性、納得性の高い皆保険制度の実現に向けた抜本的改革の断行を求め、われわれ健康保険組合は次の事項を組織の総意をもってここに決議する。
一、拠出金負担に50%の上限、現役世代の負担に歯止めを
一、高齢者医療費の負担構造改革の早期実現
一、実効ある医療費適正化対策の確実な実施
一、生涯現役社会を目指し、保健事業等の積極的な推進
平成29年11月28日
迫る超高齢社会!皆保険の存続へ改革断行!!
― 優れた保険者機能を発揮し、我々が皆保険を守る ―
平成29年度 健康保険組合全国大会

各界からメッセージ
 大会では、次の各界代表者から健保連・健保組合に対する協力や激励のあいさつ、メッセージを受けた。高木美智代厚生労働副大臣、牧原秀樹厚生労働副大臣、田畑裕明厚生労働大臣政務官、大沼みずほ厚生労働大臣政務官、橋本岳自民党厚生労働部会長、桝屋敬悟公明党政務調査会長代理、海江田万里立憲民主党最高顧問、井上隆経団連常務理事、相原康伸連合事務局長、安藤伸樹協会けんぽ理事長。
パネルディスカッション
 大会の後半では、医療法人適塾会よどがわ内科クリニック理事長の梅村聡氏をコーディネーターとして、東海大学教養学部教授の堀真奈美氏、日本経済新聞社シニアエディターの山口聡氏、健保連理事の棟重卓三氏によるパネルディスカッションが行われた。
 「2025年度に向けた医療保険制度改革」をテーマに、梅村氏が各発言者に意見を求める形で進んだ。
 堀氏は、医療保険の危機的状況を国民に周知することが大切であり、また、費用を使う優先順位を議論する重要性についても述べた。
 山口氏は、拠出金を出している健保組合が制度設計についての発言権を持たない現状を変え、主導権を発揮してほしい、と述べた。
 棟重氏は、国だけではなく、国民、保険者、医療関係者といったステークホルダーが協力することが必要であり、健保組合が行っている内容を広く伝え、関係団体とともに高齢者医療の負担構造改革等に取り組む必要があると述べた。
 全国大会は、阪口克己クボタ健保組合常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
全国紙に意見広告
 健保連は、全国大会をピークにした要求実現活動の一環として、全国紙ならびに経済誌へ次のように意見広告を掲載した。
 大会当日の28日(火)、日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞朝刊に、タイトル「健康保険が抱える2025年問題」として、超高齢社会の到来で国民医療費の増大が見込まれるなか、世界に誇る国民皆保険を守るための国民的議論が必要であること等を訴えた。
 週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済11月27日(月)発売号に、「医療保険制度は高齢化の波に耐えられるか」をテーマに、西沢和彦日本総研主席研究員、土居丈朗慶應義塾大学教授による対談が掲載された。
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
伊佐 進一 衆・公明
(大阪6区)
大阪府電設工業 喜多 顧問
武田薬品 竹内 常務理事
パナソニック 小寺 主事
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 西本 医療対策室長
とかしき なおみ 衆・自民
(大阪7区)
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
平野 博文 衆・無所属
(大阪11区)
関西電力 橋村 常務理事
ヤンマー 朝倉 常務理事
サントリー 伊藤 常務理事
大阪連合会 長井 参与
大阪連合会 山田 事務局長
長尾 敬 衆・自民
(大阪14区)
大阪港湾 後藤 常務理事
ダイダン 平井 常務理事
大阪連合会 長井 参与
大阪連合会 西本 医療対策室長
大阪連合会 本田 職員
松川 るい 参・自民
(大阪府)
近畿日本鉄道 赤阪 常務理事
シャープ 松本 常務理事
大阪連合会 長井 参与
太田 房江 参・自民
(比例)
日本生命 高橋 常務理事
塩野義 森口 常務理事
住商連合 賀屋 常務理事
大阪連合会 坂根 主任
大阪連合会 栗本 職員
矢田わか子 参・民進
(比例)
大阪府建築 寺嶋 常務理事
クラシエ 伊藤 常務理事
大阪府信用金庫 木内 常務理事
大阪連合会 長井 参与