広報誌「かけはし」

■2017年12月 No.555
時評

新年を迎えるにあたって

― 年の瀬に思う ―

 すでに今年もあとわずかである。年の瀬は、新年に向けてゆっくりしたいところであるが、健保組合関係者は、そうも言っていられない。年が明ければ、すぐに来年度の予算編成に着手することになる。こちらの準備に大忙しである。
 来年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定、第3期特定健診・特定保健指導、第2期データヘルス計画など、健保組合に関係のある事柄が山積みである。それに加え、ずっと健保組合が頭を抱える要因になっている拠出金への対応。これらを踏まえた保険料率の設定も容易ではない。限りある予算のなかで、課せられた事業運営を知恵と工夫で乗り切るしかない。
 去る11月28日、今年も健康保険組合全国大会が開催された。この大会において、全健保組合の総意によって決議された内容は、健保組合の置かれた厳しい現実に対する改革を求めるものだった。
 皆が危惧する2025年度には、健保連の推計によれば、国民医療費は現在の1.4倍である約58兆円まで増加する。そして、高齢者医療制度への拠出金は、加入者に対する法定給付費を上回り、組合全体で保険料収入に対する拠出金割合が50%を超えるという。このような状態を回避するためには、消費税率の引き上げなどにより財源を確保し、少なくとも拠出金割合に上限を設定するなどの策を講じる必要がある。何も策を講じなければ、高齢者医療制度を支えている現役世代が先に倒れるのは明白である。
 今般の衆議院選挙における与党の公約のなかで、消費増税分の使途について、はっきりしていない部分はあるが、ここは当初のとおり、社会保障の充実を優先していただきたい。
 また、これからの皆保険制度を安定したものとするためには、▽高齢者医療制度の負担構造を改革し、高齢者にも所得に応じた負担を求めること▽高齢化や医療の高度化に伴い増加する医療費について、確実に適正化対策を実施し、国民医療費を抑制すること▽将来にわたっての医療費適正化のため、生涯健康に暮らせる社会を目指し、きめ細やかな保健事業を実施し続けている健保組合を維持・発展させること―などの改革も必要である。
 皆保険制度を中核となって支えている健保組合は減少の一途を辿っており、先にも述べたが、存続している健保組合も、非常に厳しい運営を強いられている。
 もはや一刻の猶予もない。これからの日本の社会保障制度について、抜本的な改革を議論するのは、まさにいまである。国会においてはいろいろな話題が飛び交うであろうが、国民が将来的に安心して暮らしていくためには何を最優先に議論すべきか、誰もが気づきながら、先送りされているのが現状だ。
 ツギハギだらけでその場しのぎではなく、いまの子供たちの未来にツケを回すこともなく、全国民が納得できる公平な制度を構築する。これこそが、いまを生きるわれわれに与えられた使命である。
  (M・S)