 |
爆笑計と健康科学
〜意外と知らない笑いのチカラ〜 |
7月24日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。大阪電気通信大学 医療福祉工学部 医療福祉工学科 教授 松村 雅史氏が「爆笑計と健康科学〜意外と知らない笑いのチカラ〜」をテーマに講演されました。参加数は、43組合・58人。(以下に講演要旨) |
 |
|
 |
|
松村 雅史 氏 |
日本では「笑う門には福来たる」といわれ、大きく笑うことで元気が出た、気分がスッキリしたという実感を多くの方がもたれていると思います。最近、笑いがもたらす心身の健康増進に関する研究が行われています。笑いのポジティブな介入は、楽しく、気軽に継続することができることから、ストレス低減、糖尿病の重症化予防を目指す先制医療での利用が期待されています。
そのためには、笑いのポジティブな介入の有用性を示すエビデンスも求められます。ストレスなどの健康状態を検査する方法は医療分野で使用されていますが、1日の笑いの回数や時間、会話の時間のモニタリングが必要となってきます。
本講演では、日常生活下での笑いの回数や時間、会話の時間をモニタリングする爆笑計に関する研究を紹介します。
まず、日常生活下において笑いを測るために、周囲雑音に対して頑健で、四肢を拘束しないウェアラブル(身体装着型)笑い計測システムを開発しました。これを爆笑計といいます。
この爆笑計は咽喉マイクロフォンを用いて測定した口腔咽喉音から笑いを検出します。笑い声の特徴は「ワッハッハッハッハ」と繰り返す点にあり、会話などと識別することができます。笑いには大きな笑いと小さな笑いがあります。爆笑計では「ワッハッハッハッハ」という4音を繰り返し発声された大きな笑いを「爆笑1回」としました。
この爆笑計を用いたデータを紹介します。まず、1日に何回笑うか? という実験(対象:大学生、30日間)結果では、32.7回でした。笑い回数が多いのは友人と一緒にいるときでした。次に爆笑とストレス低減効果に関する実験では、落語観賞の前後でストレス評価(唾液中コルチゾール)を行い、落語観賞後にストレスが低減することが確かめられました。
さらに、日常生活下の実験では、笑うことを心がけた日は1日のストレスが低減傾向にあり、一方、笑いをおさえた日が続くと、ストレスが日に日に溜まっていく傾向が認められました。さらに爆笑時の心電図を調べた結果、爆笑後の心拍数が減少し、本人もリラックスできたとの感想がありました。このように、日常生活下でも適度に笑うことがストレスをためない、リラックスする秘訣になることが示されました。
次に、爆笑と嚥下機能に関する研究を紹介します。大きく笑うことが声を出し、口の運動にもなります。そこで、高齢者を対象として、笑いのポジティブな介入と嚥下機能の関連を調べました。その結果、笑いの介入により嚥下時間間隔が減少し、嚥下機能向上を示唆する結果を得ることができました。また、笑いと嚥下体操を組み合わせることで、楽しく嚥下体操ができるとの感想もいただきました。
以上のように、笑いには健康寿命を延ばす効果が期待できます。海外で研究発表を行ったとき、「Laughter is the best medicine:笑いは最高の薬」ということも聞きました。爆笑計の実験では、周りの人たちが笑っていると、なんとなく笑う気分になります。自分が笑っていると周りにも笑いが伝わっていきます。
この爆笑計の数値も、単なる爆笑回数で終わるのではなく、心の健康につながることを期待します。 |
|
 |