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限界に直面する健保組合 
― 負担増の波を前にして ― |
「限界」とは、「物事の、これ以上あるいはこれより外には出られないというぎりぎりの範囲、境」という意味である。
今年の夏も暑い。熱中症にならないよう、暑さの限界を超える前に冷房を使う。
このように、自分自身のために、限界を超える前に対処することは、経済的な面を別にしてもやむを得ない。…が、ここ数年の健保組合は、制度改正によって負担増を強いられるばかりだ。
前期高齢者納付金や後期高齢者支援金などの拠出金に加え、短時間労働者への健康保険適用拡大。そして、本年8月分から介護納付金にも総報酬割が導入された。このように次から次へと負担は増え、これに合わせて保険料率を引き上げないと、義務的経費だけで保険料収入を超えてしまう。これは、すでに限界といっても過言ではない。
健保組合は「限界を超える=解散」であるため、その対処法として、保険料率の引き上げや、準備金や積立金の取り崩しを行ってきた。加入している事業所や従業員へ負担増をお願いし、なんとか理解を得ながらここまでやってきたのである。しかし、これらの努力も大きな力の前では、焼け石に水の状態に思えてくる。
さて、押し寄せる負担増の波として、前述した介護納付金の総報酬割について、少し細かく述べたい。
今年の5月26日、介護納付金の総報酬割導入を盛り込んだ介護保険法等改正法が成立した。健保連は、総報酬割導入には断固反対の姿勢を貫き、関係国会議員への理解促進と支援を求める要請活動を展開してきた。しかし、政府原案どおりに成立し、附帯決議もなされなかった。法案審議では、与野党を問わず、健保組合を憂慮する意見も多く聞かれたにもかかわらず、だ。これに対して、健保連の大塚会長から、強い憤りを感じている旨のコメントが出されたところである。
3年間の負担軽減策が盛り込まれたものの、約1100億円の負担増である。協会けんぽへの国庫補助削減のため、介護保険料に的を絞った形だ。高齢者医療への拠出金の影響も大きく、すでに崖っぷちの状態の健保組合に対してさらなる負担を強いることは、一層解散のリスクを高める。もしも解散すれば協会けんぽへ移管し、その分の国庫負担が増える、ということは誰もが承知しているはずである。それにもかかわらず、負担増の波は、健保組合を確実に飲み込もうとしている。
このような状況でも耐え忍んでいるのは、保険者としての使命を果たすためにほかならない。
企業単位や業界単位という強い結び付きを活かした自主的な運営により、加入者に対してきめ細やかなサービスが提供できる。これは健保組合だけが持つ長所ではなかろうか。加入者からみても身近な存在であり、いざというときの頼りがいを感じているだろう。
わが国の国民皆保険制度は、非常に優れたものであると世界中で評価されている。この制度を中核となって支える健保組合への負担増は、国民皆保険の屋台骨を崩しかねない。
国民医療費の増大という目先の対応に固執するのではなく、もっと根本的な問題を見据え、健保組合をはじめとした保険者への負担軽減策の継続や拡充、将来的な制度の見直しについて早急に取り組むべきだ。安定した皆保険制度を持続させるべく議論を重ねることが、なによりも先決である。 |
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(M・S) |
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