広報誌「かけはし」

■2017年6月 No.549
時評

番号制度の本番運用に向けて

 番号制度の運用の本番が近づいている。各健保組合では、これに向け、いろいろな作業に取り組んでいるところである。振り返れば、筆者の組合では昨年、マイナンバー制度に対応した規程の整備に始まり、事務所のレイアウトの見直しを行った。
 年が明けて、被保険者・被扶養者のマイナンバーの取得を開始した。2月には情報連携用の統合専用端末のパソコンが届き、それを利用して総合運用テストなどの準備作業を行った。7月からは、いよいよ情報連携を開始する。
 この番号制度の導入前に注目していたのは、医療機関における加入資格の確認、および医療・健診情報の蓄積とその活用の2点である。
 まず、医療機関における資格の確認により、医療機関の転記ミスや保険者の異動情報を確認できないことなどの是正が行われ、事務の効率化につながる。
 次に、医療・健診情報の蓄積とその活用は、それを疾病予防に利用することにより、加入者一人ひとりの健康向上に役立てるとともに、全体では医療費適正化につながることになる。
 医療費適正化は、健保組合にとってただ単に保険給付費の削減だけではなく、高齢者医療費の節減による拠出金の軽減につながり、厳しい状況が続いている健保組合の財政健全化に寄与するものである。
 ところが、番号制度導入に関する説明会に出るたびに不安がつのるのが本音である。すこし前だが、3月に開催された厚労省主催の「第3回医療保険者等における番号制度の説明会(健保組合向け)」では、将来的な情報連携の活用予定で、「オンライン資格確認」と「医療費控除申告簡素化のための医療費通知の活用」の2点のみが説明された。
 「オンライン資格確認」は、思った以上に運用までの時間を要し、予想以上に健保組合に負荷がかかるのではないかと不安になる。
 「医療費控除申告簡素化のための医療費通知の活用」では、“マイナポータルを経由し保険者の提供するサイトから医療費通知データを取得し、医療費控除の申告に活用する”とあるが、システム改修費用等が発生することが見込まれている。
 現状のシステムによる医療費通知をなくすことができれば、効率化と経費削減になるが、新たに発生する費用がどの程度なのかわからず、実際に経費削減になるかどうかわからない。
 第3回の説明会では、平成30年以降の具体的な話は出なかった。ほんとうに医療・健診情報を活かし医療費適正化につなげられるようになるのか、費用と手間の発生だけで終わりはしないかという疑念がわいてくる。
 数少ない説明会なので、具体的に決定していることだけでなく、将来に向け、健保組合にも期待を抱かせるような内容や、番号制度について将来のビジョンなどの説明も聞きたいところであった。
 番号制度の導入は、国を挙げての施策であり、後戻りはできないものである。医療制度全体の効率化と医療費の適正化につながると信じ、番号制度の本格導入に向けて各組合は頑張っている。番号制度を上手に活用し、将来につながる実効性のある制度になることを求めたい。
  (S・K)