広報誌「かけはし」

■2017年4月 No.547


医療・介護保険改革の対応を強化
29年度事業計画・予算を決定

 健保連大阪連合会は3月22日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で、平成28年度第2回総会を開催した。総会には大阪連合会の全176組合が参加(当日出席:144組合、委任出席:32組合)。大阪連合会の平成29年度事業計画案、同予算案などを審議、承認した。
 国民医療費は、国民皆保険が確立した昭和36年度には5130億円だった。しかし、現状をみると、平成26年度には40兆円を突破。団塊の世代がすべて後期高齢者となる37年度には、50兆円を軽く超えるとの予測がある。
 医療費の増加にともない、負担する側の財政は苦しさを増すばかり。いまや国民皆保険の存続さえ脅かされている。とくに大阪の健保組合は深刻だ。
 総会では、はじめに大阪連合会の小笹定典会長があいさつに立った。小笹会長は、大阪連合会176健保組合の厳しい現状を「約5割が経常赤字、保険料収入の半分近くを拠出金として支出、積立金が枯渇、保険料率引き上げももう限界」と、端的に説明した。そして、その打開策として高齢者医療費の負担構造改革はじめ、高齢者医療制度の抜本改革が急務であることを強調した。
 そのうえで小笹会長は、「同時に健保組合は保険者機能を発揮し、事業主とのコラボによるデータヘルス推進など医療費適正化の取り組みを推進していくことが大切」と述べた。
 続いて、来賓として出席された近畿厚生局の田邊毅保険課長があいさつした。
 田邊課長はこのなかで、平成29年度健保組合予算編成を踏まえた一般保険料率の状況を説明した。
 それによると、近畿厚生局管内で保険料率変更を申請したのは、2月末時点で47組合。内訳は、引き上げ35組合、引き下げ12組合となっており、一時より引き上げ組合は減っている。
 しかし、平成20年度以降の引き上げは相当数にのぼっており、料率100‰以上の組合が管内で30%に近づき、料率引き上げに歯止めがかからない、という厳しい状況を示した。
 また、30年度から始まる第三期特定健診・保健指導、第二期データヘルス計画に向けて「29年度は、各組合でのこれまでの保健事業の実績から『どのような効果が生じたのか』を検証し、次のステップのための事業目標を考える年度となる」と重要性を説いた。
 この後、議事に入り小笹会長が議長となって、日立造船健保組合、関西文紙情報産業健保組合の2組合を議事録署名者に指名した後、議案の審議を行った。
 総会終了後には、来賓として出席された健保連本部の白川修二副会長から、中央情勢報告(こちらに要旨掲載)があった。

 ●総会の経過
 議案第1号
 平成29年度事業計画(案)
 議案第2号
 平成29年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 平成29年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること
  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 平成28年度被用者保険運営円滑化推進事業会計収入支出予算および同説明(案)
  以上、原案どおり承認された。

 ●健康保険組合をめぐる諸情勢
 
(1)医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢
   政府は平成28年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太方針)を閣議決定した。骨太方針では、社会保障の安定財源のための費用捻出をねらう消費税率引き上げを、29年4月から31年10月に2年半再延期することとした。また、32年度の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標の堅持もあらためて示した。健保連は、以前から消費税財源での高齢者医療への公費投入・拡大を主張してきたが、引き上げ措置の先送りによって高齢者医療費の負担構造改革も引き延ばしとなった。しかし、医療保険制度を持続性あるものにするためには、消費増税の動向にかかわらず、公費拡充による高齢者医療費の負担構造改革の早期実現が不可欠である。
 12月、平成29年度政府予算案が閣議決定された。予算案には、高齢化による自然増の伸びを年間5000億円程度に抑えるなど、政府方針による社会保障関係費に対する様々な抑制措置が盛り込まれている。具体的には、医療保険での@高額療養費制度の見直し、A後期高齢者の保険料軽減特例の見直し、B入院時の光熱水費に係る患者負担の見直し、C高額薬剤の薬価引き下げ―等の対策である。
 この方針の一環として、被用者保険の保険者が負担する介護納付金を段階的に総報酬割に移行することとし、29年8月分から2分の1総報酬割(満年度で3分の1)、30年度は2分の1、31年度は4分の3、32年度は全面総報酬割とすること等が示された。全面総報酬割となった場合、健保組合全体では約1100億円の負担増となり、この内容を含んだ改正案は、予算関連法案として通常国会で審議されることとなっている。
 29年度は、昨年11月に健保組合全国大会で決議した「改革の早期実現!次世代へ安心・納得の確保を」をめざして高齢者医療費の負担構造改革の早期実現、現役世代が納得できる介護保険制度の実現等に積極的に取り組んでいくこととしている。今後、政府の30年度予算編成、診療報酬・介護報酬の同時改定の議論が控えており、健保連大阪連合会では、各関係団体との連携を強化しつつ、高齢者医療制度はじめ医療保険制度・介護保険制度の抜本改革を、強く主張していくことが重要である。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
   健保組合の財政状況は、平成27年度決算では、保険料率の引き上げ等により全体では経常収支で26年度に続き黒字となった。しかし、保険料収入に対する高齢者医療拠出金の割合は41.39%で、組合財政にとっては過重な負担が続き、半数近くの組合が経常収支赤字となっている。29年度は、後期高齢者支援金の全面総報酬割、短時間労働者の適用拡大が満年度化することによって、さらに負担増となる健保組合が多くなり、ますます厳しい状況が予測される。今後、高齢者医療拠出金の算定方法の見直しを一層強く求めていくとともに、増大する医療費の適正化対策として、事業所とのコラボヘルスの実施によってデータヘルスを推進することや、レセプト点検の強化、療養費の適正化、後発医薬品の使用促進など、きめ細かな取り組みを行わなければならない。
(3)大阪連合会の事業等
   大阪連合会では、各健保組合・各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、常に真摯な議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
 本年度は、主張実現に向けた活動も含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。


事 業 計 画
 
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
   医療・介護保険制度改革に向けた対応および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら健保連本部との連携を密にして、次の事項について取り組む。
  @理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A健保連の主張実現に向け、政党・国会議員への効果的な要請活動を展開する。
B機関誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
Cデータヘルスの一層の推進に向けて、保険者機能強化への支援を行うとともに、健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
D社会保障・税番号制度について健保組合の円滑な運用に向けて支援を行う。
E健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
F健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
G関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
H医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
I大阪府保険者協議会では、医療費の適正化・有効な保健事業・地域医療構想の取り組みについて健保組合の意向を反映させる。
J国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
K近畿地区各連合会と密接な連携を図る。
L他府県の健保組合も加えた保健事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
Mその他、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
   組織活動の強化を図り、次の事項を実施する。
  @理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催する。
B地区会を中心とした諸活動を支援する。
C主張実現に向けたシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、次の事項を実施する。
@会員組合専用サイトを活用し、円滑な情報提供・充実を図る。
A組合予算編成等事務説明会を開催する等、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B永年勤続者表彰式を挙行する。
C会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
D会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行
@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療・介護保険制度改革関連(高齢者医療費の負担構造改革、健保組合の運営安定化に向けた国の財政支援の拡充等)。
・医療費適正化関連と健康づくり関連。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と地区会の事業活動。
・政党・国会議員への要請活動。
・「あしたの健保プロジェクト」の活用。
(2)広報活動の強化
@会員組合の事業活動の推進に役立つようホームページの充実を図る。
A会員組合が行う広報活動に役立つ広報研究会を開催する。
B会員組合の広報活動に具体的に役立つ広報資料を提供する。
(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
・経営者団体・労働団体および医療関係団体。
・その他、必要な関係者。

2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上
@事務長・中堅職員等研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・庶務会計)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D後発医薬品に関する講習会を開催する。
E健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・合理化の推進
    @情報セキュリティ講習会を開催する。
Aパソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
    データヘルスに関する研修会等を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化
@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
A柔道整復療養費に関する情報の収集を行い、適正化を促進する。
B後発医薬品の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
@レセプト点検事務に関する研修会を開催する。
A柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費に関する研修会を開催する。
B求償事務に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談および法律相談を実施する。

4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
(3)大阪府保険者協議会との連携
保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
    インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約。
・プール施設等利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
A健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。
B健康経営・健康宣言の普及促進を図る。

5.総合組合の運営推進
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
    @総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
Aデータヘルスの効果的な実施について検討する。
B医療費適正化対策について検討する。
C協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。

平成29年度 収入支出予算概要
(単位 千円)