広報誌「かけはし」

■2017年4月 No.547


 健保連大阪連合会は4月10日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で「安心・納得の医療保険制度に向けて あしたの健保組合を考える大会 PART3」を開いた。大会には約250人の健保組合関係者が出席。近畿地区各府県からも多数の参加があった。大会では前半に「どうなる医療保険制度は?」をテーマに、和田勝教授(国際医療福祉大学大学院)が講演。後半には「安心・納得の医療保険制度に向けて」をテーマに、とかしきなおみ衆議院議員らによる対談が行われた。
 健保連は、高齢者医療の負担構造改革や実効ある医療費適正化対策の強化を、昨年の健保組合全国大会で決議。要求実現活動を全国で展開している。大阪連合会による「あしたの健保組合を考える大会」は、その一環で、今回で3回目の催しだ。
 大会には、大阪府内の健保組合役職員をはじめ、府外の近畿地区各府県の健保組合からも多数の参加があり、約250人が集まった。
 小笹定典大阪連合会会長の開会あいさつの後、大会前半には和田勝教授(国際医療福祉大学大学院)が「どうなる医療保険制度は?」をテーマに講演をした。
 後半には、とかしきなおみ衆議院議員(自民党・大阪7区)と、健保連の白川修二副会長の対談に、和田教授が加わり、講演での課題提起をベースに話が進展した。
「社会保険方式で皆保険堅持を」 和田教授
 和田教授は、わが国の医療保険の現状と医療提供体制の概要を、国際比較を交えながらわかりやすく説明した。現状認識の後、「わが国は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現した」と皆保険の意義を提示した。
 同教授は、日本の国民皆保険制度の特徴として、@国民全員を公的医療保険で保障、A医療機関を自由に選べる(フリーアクセス)、B安い医療費で高度な医療、C社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入――をあげた。
 これらを踏まえ、今後とも「現行の社会保険方式による国民皆保険を堅持し、国民の安全・安心な暮らしを保障していくことが必要」と強調した。
 皆保険堅持のためには、医療保険制度の早急な改革が必要だ。和田教授は、改革には10点もの多くの課題があることを指摘した。同教授の指摘事項は次のとおり。
 @消費税率10%への引き上げなど、安定した運営財源の確保、A診療報酬・介護報酬の改革―医療費の適正化・効率化、B地域医療構想、医療費適正化計画の策定、C薬剤費の適正化、薬価制度改革、D評価の考え方の見直し、EICTの推進と活用、F医療・介護分野の人材養成・確保・定着、Gゲノム医療を活用した疾病管理、H終末期医療(平穏死)、看取り、在宅死、I成長産業としての医療・介護、国際貢献。
「今後も制度改革を続行」 とかしき議員
 「安心・納得の医療保険制度に向けて」をテーマにした対談では、最初に自民党厚生労働部会会長のとかしき議員(大阪7区)が、いまの医療保険制度の姿に対して、問題点と課題をあげた。
 国民医療費は40兆円を超え、毎年1兆円ずつ自然増があるのが現状だ。とかしき議員は、「自然増分を年間5000億円程度に抑えるのが政府の『骨太の方針』で明示」と説明し、増大する医療費の抑制と、少子高齢化対策が現状での課題とした。
 また、医療費増大のなかで、現役世代と高齢者の負担バランスが崩れていることを指摘。高齢者の定義について、「制度設計を考える時期にきている」と示唆した。
 とかしき議員は、医療費適正化の具体策として、「病床機能の分化、入院医療の適正化、地域包括ケア、後発医薬品の使用促進、予防・健康づくり諸施策を組み合わせて実行することが重要」と述べた。
 今後については、「消費税率が引き上げられたとしても、その後どうしていくか考えるべき」とした。また、当面今年は、年末に診療報酬・介護報酬同時改定の本格論議を控え、「税率アップがないなかでの改定であり、厳しい論議になることは必至」と示唆。「これからも社会保障改革の促進に取り組んでいきたい」と抱負を語った。
「皆保険制度は過渡期」 白川副会長
 「高齢化率の高まりという人口構造の変化から、世界に冠たる皆保険制度が過渡期にある」と位置づけた白川副会長は、大きく変革させるべき3点をあげた。
 1点目は、医療保険財政の問題。「国の財政は、医療保険への負担で厳しい状況だ。唯一、国の補助金なしで運営しているのが健保組合だ。しかし、組合も負担の増大で体力が極めて弱まっている」と現状を説明した。
 その対応策として、「高齢者と現役世代の負担の公平、税と保険料の負担の公平問題を検討、見直しが必要」と指摘した。
 同時に白川副会長は、「われわれは、一貫してこの主張をしてきた。2025年の高齢化のピーク時までには、いまの仕組みを変えないと皆保険制度は維持できない」と強調した。
 2点目は、医療提供体制の問題。「いま急性期病床が多くを占めているが、社会では療養病床を多く求めており病床転換が必要」としながらも、病院経営が立ちいくかという壁があり、難しい問題であることを示唆した。
 3点目は、医療費の効率化・適正化。白川副会長は「全体的に医療サービスのレベルをどうするか。サービスのレベルを維持して医療費を下げろといっても無理。国民の納得を得ながら、どこまで下げられるか覚悟が必要な時期にきている」とした。具体的には、現行の自己負担とフリーアクセスの再考をあげた。
左から白川副会長、とかしき議員、和田教授
会場からも要請の声
 対談出席者に対して、会場の2氏から意見や要請があった。大阪自動車整備健保の荒木正志常務理事は、高齢者医療制度への拠出金の増加で財政運営が極端に困難な総合組合の状況を説明。「高齢者医療の負担構造にメスを入れ、踏み込んだ医療費適正化をしない限り、皆保険制度は維持できない」と訴えた。
 武田薬品健保の竹内周次常務理事は、データヘルス計画に対する健保組合の積極的な取り組みを紹介するとともに、今後のビッグデータ活用のためにも、健保組合の負担によらず国のシステム整備を急ぐべきと要請した。