広報誌「かけはし」

■2016年12月 No.543
 平成28年度健康保険組合全国大会が11月29日(火)12時から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。「改革の早期実現!次世代へ安心・納得の確保を!」と副呼称に掲げた全国大会には、約3500人の健保組合関係者が集まった。大阪からの参加者は200人を超えた。
 開会の辞、議長あいさつのあと、健保連の大塚陸毅会長が基調演説を行った。大塚会長は、まず、消費税率引き上げ再延期により高齢者医療制度の見直しも先送りされ、健保組合財政をめぐる環境が、いっそう厳しくなっていることを指摘した。
 次いで、大塚会長は、1278億円の黒字となった平成27年度健保組合決算見込みについて、「保険料率引き上げの影響によるもの。すでに協会けんぽの料率以上の組合が291組合にのぼっており黒字は一時的」と説明した。そして、「被用者保険財政は安定しているから、改革の必要はない」といった誤った認識をされないよう、関係方面に対して正確に情報を伝えていかなければならないと訴えた。
 また、介護納付金の総報酬割導入案に対しては、介護給付や自己負担見直しなどの適正化策がともなわない案には断固反対―と強調。安易な国庫負担減らしと負担の転嫁によって、健保組合がますます運営に行き詰まってしまうことについて、「今日の1円を惜しむあまり明日の百円を失うことのないように」と訴えた。
 続いて、健保連の白川修二副会長が、大会決議と、スローガン(@高齢者医療費の負担構造改革の早期実現A皆保険の堅持に向けた健保組合の維持・発展B実効ある医療費適正化対策の確実な実施C現役世代が納得できる介護保険制度の実現)の趣旨を説明した。
 このあと、鹿児島銀行健保組合の水流弘行常務理事が大会決議案を力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で馬場成志厚生労働大臣政務官に要請した。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    デンソー健保組合  齋藤隆夫常務理事
  議長あいさつ 中国新聞健保組合  北村浩司理事長
  会長基調演説 健保連  大塚陸毅会長
  決議の趣旨説明 健保連  白川修二副会長
  決議 鹿児島銀行健保組合  水流弘行常務理事
  厚生労働大臣政務官への決議の手交
  厚生労働大臣政務官あいさつ
  政党代表あいさつ 自民党・公明党・民進党
  関係団体あいさつ 日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    全国健康保険協会
  講演 政策研究大学院大学  島崎謙治教授
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健保組合  阪口克己常務理事

 日本が世界に誇る国民皆保険制度は今、超高齢社会を迎え、その存続が危惧されている。かつてないスピードで進行するわが国の高齢化は、国民医療費の約6割を占める高齢者医療費の増加に拍車をかけ、その負担が現役世代に重くのしかかっている。
 この過重な費用負担により、健康保険組合も厳しい財政運営を強いられ、今まさに存亡の危機にある。これまで保険料率の引き上げで対応してきたが、被保険者1人当たりの年間保険料は現行の高齢者医療制度創設以降、約10万円も増加し、負担はもはや限界に達している。
 皆保険制度を持続性あるものとするためには、現役世代の負担軽減が不可欠かつ急務である。平成29年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げは2年半延期されるが、消費増税の動向にかかわらず、必要な財源を確保し、公費拡充をはじめとする高齢者医療費の負担構造改革を早期に実現すべきである。また、改革の早期実現とともに、全面総報酬割等に伴う負担軽減措置の確実な実施と更なる拡充、短時間労働者の適用拡大に伴う負担増に対する激変緩和措置など、健康保険組合の安定運営に向けた十分な財政支援を強く求める。
 健康保険組合は、自主・自立の特性を生かし、事業主との連携のもと、加入者の実態に沿ったきめ細かい健康保持・増進、疾病予防などの効果的な保健事業の推進や、医療費適正化に向けた積極的な取り組みなど、優れた保険者機能を発揮して、国民皆保険制度のけん引役としての役割を果たしてきた。
 これからも、データヘルスや健康経営など健康長寿社会の実現へ貢献するとともに、全国約3、000万人の加入者の健康を守り、皆保険制度の中核として、その維持・発展に使命感を持って取り組む所存である。
 国民の安心確保に向け、皆保険制度を次世代へ引き継ぐため、また現役世代が納得できる制度の実現を期し、われわれ健康保険組合は次の事項を組織の総意をもってここに決議する。
一、高齢者医療費の負担構造改革の早期実現
一、皆保険の堅持に向けた健保組合の維持・発展
一、実効ある医療費適正化対策の確実な実施
一、現役世代が納得できる介護保険制度の実現
平成28年11月29日
改革の早期実現! 次世代へ安心・納得の確保を!
平成28年度 健康保険組合全国大会

各界からメッセージ
 大会では、次の各界代表者から健保連・健保組合に対する協力や激励のあいさつ、メッセージを受けた。馬場成志厚生労働大臣政務官、太田房江自民党厚労部会長代理、桝屋敬悟公明党政調会長代理、白眞勲民進党団体交流委員会副委員長、井上隆経団連常務理事、逢見直人連合事務局長、小林剛協会けんぽ理事長。
島崎謙治教授が講演
 全国大会に寄せて、政策研究大学院大学の島崎謙治教授が講演を行った。テーマは「医療制度改革の課題と展望〜保険者に求められるもの〜」。
 島崎氏は、高齢者医療費の増加による過重な費用負担で、健保組合はたいへん厳しい財政運営を強いられている。消費税率引き上げの再延期、短時間労働者への適用拡大など、今後の事業運営への不安が拭えない。しかし、皆保険制度の維持・発展のために、健保組合は保険者機能を発揮し、存在価値を示していく必要がある、などと説いた。
 全国大会は、阪口克己クボタ健保常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
全国紙に意見広告
 健保連は、全国大会をピークにした要求実現活動の一環として、全国紙ならびに経済誌へ次のように意見広告を掲載した。
 全国大会前の11月27日(日)、読売新聞、朝日新聞の朝刊全国版、毎日新聞の朝刊東京版にバカボン版。大会当日の29日(火)、日本経済新聞の朝刊全国版にグラフ版。12月5日(月)の読売新聞朝刊全国版に、11月8日(火)福岡開催分の「あしたの健保セミナー」の模様。
 週刊東洋経済の11月28日(月)発売号に、10月22日(土)東京開催分の「健康みらいトーク」の模様。週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済12月5日(月)発売号に、白川副会長、西沢和彦日本総研主席研究員、和田勝国際医療福祉大学大学院特任教授による鼎談の模様。
大阪連合会が要請活動
 健保連大阪連合会は全国大会当日、国会議員への主張実現要請活動を展開した。結果は次の通り。
自民党 ▽とかしきなおみ厚生労働部会長(場所:議員会館)(要請者:喜多眞生大阪府電設工業健保常務理事、竹内周次武田薬品健保常務理事、小寺悦パナソニック健保主事、川隅正尋大阪連合会専務理事、長井輝臣大阪連合会参与)、▽太田房江参院議員(場所:大会会場)(要請者:川隅専務理事、長井参与)
 ▽松川るい参院議員(場所:大会会場)(要請者:赤阪朋彦近畿日本鉄道健保常務理事、倉岡謙吉シャープ健保常務理事、川隅専務理事、長井参与)、▽長尾敬衆院議員(場所:大会会場)(要請者:阪口克己クボタ健保常務理事、中村慶三ダイダン健保常務理事、後藤秀行大阪港湾健保常務理事、川隅専務理事、長井参与)
公明党 ▽伊佐進一衆院議員(場所:議員会館)(要請者:喜多常務理事、竹内常務理事、小寺主事、川隅専務理事、長井参与)
民進党 ▽矢田わか子参院議員(場所:大会会場)(要請者:寺嶋隆男大阪府建築健保常務理事、岩尾誠クラシエ健保常務理事、木内博大阪府信用金庫健保常務理事)、▽平野博文衆院議員(場所:議員会館)(要請者:橋村雅隆関西電力健保常務理事、朝倉孝則ヤンマー健保常務理事、伊藤裕之サントリー健保常務理事、山田克廣大阪連合会事務局長)
日本維新の会 ▽松浪健太衆院議員(場所:議員会館)(要請者:高橋芳宏日本生命健保常務理事、森口恭明塩野義健保常務理事、賀屋晶博住商連合健保常務理事、坂根充大阪連合会主任、栗本竜磨大阪連合会職員)