■2016年11月 No.542
メタボとサルコペニア
10月24日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 真田 樹義氏が「メタボとサルコペニア」をテーマに講演されました。参加数は、44組合・56人(以下に講演要旨)。
真田 樹義 氏
身体不活動は日本人の死亡関連要因の第3位
2007年の国民栄養調査の結果から、運動不足による非感染性疾患と外因による死亡者数は、年間5万2200人で死因に関連する危険因子としては、喫煙、高血圧に次いで第3番目であったと報告されています。
つまり、国民の身体活動量を増加させることは国民の健康増進にとって重要な要因であると考えられます。これは近年、運動スポーツと寿命との関連についての研究が世界中で増えたことと、信頼性の高い体力や身体活動量の測定が行えるようになったことなどが関連しています。
「運動は健康によい」ということは頭ではわかっているという方がほとんどだと思いますが、最先端の研究から、「日常の身体活動量を増やすと長生きする」ということは真実だといえます。
健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)
アクティブガイドは、国民の健康増進を図ることを目的とする健康日本21の一環として、1日どれくらいの活動が必要なのかについてのガイドラインとして発表されました。
具体的には、18〜64歳の方では「元気にからだを動かしましょう 1日60分!」、65歳以上の高齢者では「じっとしないで 1日40分!」、筋力トレーニングやスポーツが含まれるとなお効果的です! というものです。
今回のアクティブガイドの大きな特徴の1つとしては、+10(プラス・テン)から始めよう! をキャッチコピーにしていることです。
身体活動は、歩行や自転車等の運動や家事、洗濯、通勤等の生活活動など、どれでも10分から行い、それらを1日6回(高齢者は4回)確保します。身体活動は続けて行う必要はなく、コマ切れでも十分に健康づくりの効果が認められるためです。
痩せとの関連
一般に体組成の加齢変化としては、体脂肪の増加とともに全身筋量の低下が認められます。つまり、高齢者は「肥満」と「痩せ」の問題を同時に抱えていることになります。
体格指数(BMI)と心血管系疾患による死亡リスクとの関係をみると、肥満だけでなく、痩せの場合でもそれらのリスクが高いということが報告されています。
加齢による筋量の減少は「サルコペニア」と呼ばれていますが、最近、この「サルコペニア」と肥満の合併がさらなるメタボリックシンドローム・リスクを高めることが話題になっています。これは、サルコペニア肥満と呼ばれています。
サルコペニアも肥満も、それぞれが単独でメタボリックシンドローム・リスクや死亡率を高めることから、サルコペニア肥満はそれらの危険をさらに高める可能性が考えられます。
しかし最近、われわれが発表した研究では、75歳以上の高齢者の場合、サルコペニア肥満よりもサルコペニア単独の方がより死亡リスクが高いという結果が確認されました。
このことから、75歳以上の高齢者が長生きを目指すならば、肥満よりはむしろ筋肉づくりを目指すなど、サルコペニアの予防・改善に焦点を当てるべきであるといえます。この点については、今後のさらなる研究が必要であると考えられます。
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