広報誌「かけはし」
 

■2016年10月 No.541



 健保連は9月9日、全国1405健保組合の平成27年度決算見込みを発表した。経常収支は1278億円の黒字で、2年連続の黒字決算となった。しかし、黒字の最大の要因は保険料率の引き上げ。全組合の22.3%にあたる313組合が料率を引き上げている。その結果、平均保険料率は9.035%に上昇し、初めて9%の大台を超えた。赤字の組合も651組合(46.3%)あり、健保組合財政はいぜん厳しい状況が続いている。

313組合が料率引き上げ
 平成27年度健保組合決算見込みは、全国1405健保組合の決算状況を集計したもの。それによると、経常収支は1278億円の黒字。26年度(黒字額=634億円)に続き、2年連続の黒字決算となった。経常収支が改善したのは、前年度決算より、収入額の伸びが支出額の伸びを上回ったことによる。
 経常収入は、前年度と比べて1831億円増(2.4%増)の7兆7854億円。このうち大半を占める保険料収入は、1843億円増(2.5%増)の7兆6676億円だった。
 健保連では、保険料収入増加の要因を、次のように分析している。保険料率の引き上げ952億円(増額の51.6%)、被保険者数の増加374億円(20.3%)、標準報酬月額の増加304億円(16.5%)、賞与額の増加213億円(11.6%)。
 最大の増収効果は、保険料率の引き上げによるもので、経済状況を反映した「被保険者数・標準報酬月額・賞与額」の増加より増収効果が高かった。
 保険料率を引き上げざるをえない第一の要因は、高齢者医療への多額な拠出金。保険料収入に対する割合は42.7%に達している。
 保険料率を引き上げたのは、全組合の22.3%にあたる313組合。2年連続で保険料率を引き上げた組合も92組合あった。にもかかわらず、36組合は2年連続で赤字となった。
 料率引き上げの結果、全国の健保組合の平均保険料率(調整保険料率含む)は、前年度より0.153ポイント増加して9.035%となり、初めて9%の大台を超えた。
 平均保険料率は、平成20年の高齢者医療制度創設以降、毎年上昇し、協会けんぽの平均保険料率(10.0%)に近づいた。個別にみると、すでに協会けんぽの料率以上の組合が291組合(20.7%)あり、なかには12.0%以上の組合が4組合ある。
 健保組合全体の経常収支は黒字だったが、個別組合の状況をみると、1405組合中、651組合(46.3%)は赤字となっている。とくに、総合組合は260組合中、143組合(55.0%)が赤字で、いっそう厳しい財政状況を示している。
 おもな適用状況は、被保険者数が対前年度比約9万人増(同0.6%増)の1583万人、被扶養者数が約16万人減(1.2%減)の1333万人、平均標準報酬月額が1855円増(0.5%増)の37万0164円、賞与額が1万5623円増(1.4%増)の112万5097円だった。
 
表1.過去5年間の推移
拠出金は約3兆3千億円
 おもな経常支出科目をみると、法定給付費が対前年度比1180億円増(3.2%増)の3兆7897億円となっている。伸び率は前年度(1.7%増)を上回った。27年度は高額な医薬品の保険適用が相次いだため、調剤医療費の伸びの影響があるとみられる。
 拠出金総額は52億円減(0.2%減)の3兆2742億円。内訳は、後期高齢者支援金が1兆6496億円(3.2%増)、前期高齢者納付金と退職者給付拠出金の合計が1兆6246億円(3.4%減)。
 後期高齢者支援金は、高齢者人口の増加や、総報酬割部分が3分の1から2分の1への変更により増加。前期高齢者納付金は、団塊世代の人員増で増加。退職者給付拠出金は、退職被保険者の新規適用がなくなったため大幅減少(43.9%減)。25年度分の支援金・納付金の精算による戻りが1019億円あったこともあり、拠出金全体では26年度と比較して総額は微減となった。
 しかし、1年間の拠出金総額はゆうに3兆円を超え、、“高止まり”状態が続いている。保険料収入に対する拠出金の割合は42.7%でいぜん高い。50%以上の組合が267組合(19.0%)あり、現行拠出金方式の見直しが求められている。
 保健事業費は、データヘルス事業の開始にもかかわらず、対前年度比62億円増(2.0%増)の3184億円にとどまった。
 これらにより、経常支出は26年度より1187億円(1.6%)増えて7兆6576億円となった。経常収入から経常支出を差し引いた1278億円が27年度の黒字額となっている。
収入の92.1%が義務的経費
 一方、財政指標をみると、法定給付費と拠出金の合計額、いわゆる義務的経費の保険料収入に対する割合は92.1%となっている。なかには、保険料収入では義務的経費すら賄えない100%超の組合が303組合(21.6%)あった。
 健保組合がその年、事業運営をするために、実質的にどの程度の保険料率の賦課が必要かをみたのが実質保険料率。27年度の全組合の単純平均は8.928%となっている。高齢者医療制度創設前の19年度は7.168%となっており、これとの比較では1.760ポイント上昇している。
 
表2.おもな適用状況
表3.おもな経常収支状況                 (単位:億円)