広報誌「かけはし」

■2016年10月 No.541
時評

前期高齢者納付金 制度の検証を望む


 「光陰矢の如し」。初孫もできて、もう少しで筆者も前期高齢者であるが、地域自治会では、いまだに壮青年部で活躍しており老人部ではない。
 ところで、前期高齢者とは、65歳から74歳までの人を指している。どうして前期高齢者に対する医療費負担の仕組みができたのかというと、この年代が偏在することによる負担の不均衡を保険者間で調整するための仕組みとして生まれたものと聞く。
 保険者では、前期高齢者の加入率を基本にして、前期高齢者納付金を算出している。加入率の低い保険者が、高いところに補填することなので、その式には疑問点があるものの、主旨は理解できる。
 しかし、健保組合の多くは、前期高齢者納付金の負担増および異常に大きい振れ幅のために、自助努力では財政の赤字体質が修復できず、組合存亡の危機に瀕している。
 また、制度には公費補助がなく、保険者間の財政調整のみとなっており、健保組合・健保連は公費投入をずっと訴え続けている。だが、前回の消費税の第一次引き上げ時には、改善策は盛り込まれなかった。
 今度の消費税第二次引き上げ時には、なにがなんでも公費投入を成し遂げなければいけないとの決意で、要請活動を行ってきたが、消費税増税は平成31年10月に先送りとなった。
 ここは公費投入以外にも制度の不条理なところをアピールしていければと思う。
 その不条理な点の一つ目は、前期高齢者にかかる後期高齢者支援金も調整対象に入っているということである。これは、後期高齢者支援金の算出根拠に前期高齢者も入っているという理由からであろうが、納付側からみれば重複払いであり、なんとも姑息な賦課方法だといえる。
 また、保険者間の完全財政調整のため、自組合の責によらない医療費を負担しなければならない。その額が十数倍という組合もある。「調整」にしてはすこぶる荒すぎるのではないか。
 二つ目は、納付額が毎年大きく変動することである。2年前の前期高齢者の医療給付費をベースに、一定の伸び率で納付する概算納付金と、当年度の算出納付金との差額を精算金として2年後に精算する方式は、おそらく理論的には正解なのだろう。
 しかし、前期高齢者の1人あたり給付費の変動により納付額が大きく変動するので予算に大きく影響し、健保組合の中長期的な運営計画が立てられない。もっと単純明快で、いきなり大きく納付額が変動することのないものにできないか。現在の納付方式については、いくら組合会等で説明しても、ほとんど理解してもらえないのである。
 三つ目は、交付金の使途の明確化である。交付金は、いまや市町村国保に、その保険料収入を上回る額が交付されており、使途も国保前期高齢者の医療給付費の不足分と限定されていない。
 つまり、先に交付金の額が決まるため、所得の高い前期高齢者から保険料を多く徴収した場合、余った交付金は国保の現役世代の医療給付費に回る。これでは苦しい台所事情から泣く泣く納付金を捻出しているわれわれ健保組合は、とうてい納得ができない。
 制度の見直しと公費投入を強く要望し、だれもが納得できる前期高齢者医療費の負担の仕組みとしなければならない。
  (K・N)