広報誌「かけはし」

■2016年9月 No.540


 この10月から、柔道整復療養費など療養費の算定基準が、全体で0.28%引き上げられる。政府が決定し、社保審医療保険部会の療養費検討専門委員会に報告した。専門委員会ではこれまで、療養費の不正請求や詐欺事件への対応策なども検討してきたが、議論の整理をしてまとめる。健保連は療養費改定にあたり8月9日、協会けんぽと連名で、適正化・厳正化などについて、厚労省保険局長あてに要請書を提出している。
 10月から「柔道整復」、「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう」療養費の施術料金が改定される。政府が、全体で0.28%の引き上げを決定し8月30日、社会保障審議会医療保険部会の療養費検討専門委員会に報告した。
 療養費の改定率はこれまで、診療報酬のうち医科改定率の半分とする慣例があった。今年4月に診療報酬改定があり、医科改定率は0.56%だった。結果的に今回も踏襲されたかたち。健保連は専門委員会で、マイナス改定や給付の適正化を主張していた。
 「柔整」料金改定の基本的考え方としては、適正化の流れを踏まえつつ、適正な請求を行う施術者が正当に評価されるよう、整復料等にウエイトを置いた改定を行う、とされている。
 おもな具体策は、@骨折・不全骨折・脱臼の整復料・後療料等の引き上げ、A初検料の引き上げ、B冷罨法料の引き上げ―など。鎖骨骨折は1100円アップの5200円、初検料は10円アップの1460円、冷罨法料は5円アップの85円になる。
 「あはき」料金改定の基本的考え方としては、往療料が関係療養費総額の6割を占めている現状を是正するため、往療距離加算の額を引き下げ、基本的な施術料の上乗せを行う、とされている。
 おもなものでは、技術料の引き上げ策として、「あん摩マッサージ指圧」のマッサージが10円アップの285円、変形徒手矯正術が10円アップの575円、「はり・きゅう」の施術料(1術)が30円アップの1300円、施術料(2術)が10円アップの1520円になる。
 往療距離加算は30円引き下げられて770円になる。
 柔整療養費の支給総額は、平成25年度ベースで約4000億円。国民医療費約40兆円の1%を占めている。また、「あはき」療養費は、約1000億円に達している。
 療養費の適正化については「柔道整復療養費検討専門委員会」、「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」で検討が続いており、議論の整理をしてまとめる。両検討専門委員会の議論の整理の骨子は次のとおり。
柔道整復療養費検討専門委員会での議論の整理
 1.支給対象の明確化に向けた個別事例の収集
 2.不正の疑いのある請求に対する審査の重点化
 3.療養費詐欺事件等への対応の強化
 4.適正な保険診療を促すための施術管理者の要件強化
あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会での議論の整理
 1.支給基準の明確化
 2.施術所の登録管理・指導監督、受療委任制度の検討
 3.往療料のあり方
 健保連が協会けんぽと連名で、8月9日に厚労省保険局長あてに提出した要請書の骨子は次のとおり。
平成28年度療養費改定にあたっての意見(要請)
 T.平成28年度療養費の引き下げ(マイナス改定)
 U.柔道整復療養費への要望
   1.支給基準について
    (1)算定方法の定額給付化
    (2)施術期間および施術回数の上限の設定
    (3)三部位施術に対する逓減制の強化
    (4)算定部位の明確化
    (5)「亜急性」の削除
    (6)初検時相談支援料の廃止
    (7)負傷原因の記載の義務化
   2.不正請求への対応
    (1)療養費にかかる審査体制の強化
    (2)指導監査体制の強化
    (3)受療委任契約状況の情報提供
    (4)医師による同意書の添付義務化
    (5)施術管理者の要件強化
    (6)白紙委任への対策
    (7)問題のある患者に対する受療委任払いの中止
   3.事務手続き等について
    (1)療養費支給申請書の電子化
    (2)支給申請書の作成要件の統一化
    (3)支払事務の合理化
 V.はり・きゅうおよびあんま・マッサージ療養費への要望
  1.支給基準について
    (1)算定方法の定額給付化
    (2)施術期間および施術回数の上限の制定
    (3)保険適用となる疾患の限定(はり・きゅう)
  2.不正請求について
    (1)行政からの指導監督体制の整備
    (2)施術録の整備義務
    (3)領収書および診療明細書の発行義務
  3.事務手続き等について
    (1)再同意書の添付義務化
    (2)同意書様式の詳細化
 W.治療用装具への要望
  1.支給基準の明確化
    (1)治療用装具の作成基準の明確化
 X.共通の要望
  1.支給基準の明確化(柔整とあはき療養費)
    (1)重複施術の制限
    (2)往療料の適正化
  2.その他
    (1)不正請求等に対する支払いの停止
    (2)健康保険を利用する場合の注意事項等説明義務化
    (3)広告の是正
療養費の推移(概算)