 |
この10月から、柔道整復療養費など療養費の算定基準が、全体で0.28%引き上げられる。政府が決定し、社保審医療保険部会の療養費検討専門委員会に報告した。専門委員会ではこれまで、療養費の不正請求や詐欺事件への対応策なども検討してきたが、議論の整理をしてまとめる。健保連は療養費改定にあたり8月9日、協会けんぽと連名で、適正化・厳正化などについて、厚労省保険局長あてに要請書を提出している。 |
 |
10月から「柔道整復」、「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう」療養費の施術料金が改定される。政府が、全体で0.28%の引き上げを決定し8月30日、社会保障審議会医療保険部会の療養費検討専門委員会に報告した。
療養費の改定率はこれまで、診療報酬のうち医科改定率の半分とする慣例があった。今年4月に診療報酬改定があり、医科改定率は0.56%だった。結果的に今回も踏襲されたかたち。健保連は専門委員会で、マイナス改定や給付の適正化を主張していた。
「柔整」料金改定の基本的考え方としては、適正化の流れを踏まえつつ、適正な請求を行う施術者が正当に評価されるよう、整復料等にウエイトを置いた改定を行う、とされている。
おもな具体策は、@骨折・不全骨折・脱臼の整復料・後療料等の引き上げ、A初検料の引き上げ、B冷罨法料の引き上げ―など。鎖骨骨折は1100円アップの5200円、初検料は10円アップの1460円、冷罨法料は5円アップの85円になる。
「あはき」料金改定の基本的考え方としては、往療料が関係療養費総額の6割を占めている現状を是正するため、往療距離加算の額を引き下げ、基本的な施術料の上乗せを行う、とされている。
おもなものでは、技術料の引き上げ策として、「あん摩マッサージ指圧」のマッサージが10円アップの285円、変形徒手矯正術が10円アップの575円、「はり・きゅう」の施術料(1術)が30円アップの1300円、施術料(2術)が10円アップの1520円になる。
往療距離加算は30円引き下げられて770円になる。
柔整療養費の支給総額は、平成25年度ベースで約4000億円。国民医療費約40兆円の1%を占めている。また、「あはき」療養費は、約1000億円に達している。
療養費の適正化については「柔道整復療養費検討専門委員会」、「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」で検討が続いており、議論の整理をしてまとめる。両検討専門委員会の議論の整理の骨子は次のとおり。 |
|
|
 |
1.支給対象の明確化に向けた個別事例の収集
2.不正の疑いのある請求に対する審査の重点化
3.療養費詐欺事件等への対応の強化
4.適正な保険診療を促すための施術管理者の要件強化 |
|
あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会での議論の整理 |
|
 |
1.支給基準の明確化
2.施術所の登録管理・指導監督、受療委任制度の検討
3.往療料のあり方
|
健保連が協会けんぽと連名で、8月9日に厚労省保険局長あてに提出した要請書の骨子は次のとおり。 |
|
|
 |
T.平成28年度療養費の引き下げ(マイナス改定) |
 |
U.柔道整復療養費への要望
1.支給基準について
(1)算定方法の定額給付化
(2)施術期間および施術回数の上限の設定
(3)三部位施術に対する逓減制の強化
(4)算定部位の明確化
(5)「亜急性」の削除
(6)初検時相談支援料の廃止
(7)負傷原因の記載の義務化
2.不正請求への対応
(1)療養費にかかる審査体制の強化
(2)指導監査体制の強化
(3)受療委任契約状況の情報提供
(4)医師による同意書の添付義務化
(5)施術管理者の要件強化
(6)白紙委任への対策
(7)問題のある患者に対する受療委任払いの中止
3.事務手続き等について
(1)療養費支給申請書の電子化
(2)支給申請書の作成要件の統一化
(3)支払事務の合理化 |
 |
V.はり・きゅうおよびあんま・マッサージ療養費への要望
1.支給基準について
(1)算定方法の定額給付化
(2)施術期間および施術回数の上限の制定
(3)保険適用となる疾患の限定(はり・きゅう)
2.不正請求について
(1)行政からの指導監督体制の整備
(2)施術録の整備義務
(3)領収書および診療明細書の発行義務
3.事務手続き等について
(1)再同意書の添付義務化
(2)同意書様式の詳細化 |
 |
W.治療用装具への要望
1.支給基準の明確化
(1)治療用装具の作成基準の明確化 |
 |
X.共通の要望
1.支給基準の明確化(柔整とあはき療養費)
(1)重複施術の制限
(2)往療料の適正化
2.その他
(1)不正請求等に対する支払いの停止
(2)健康保険を利用する場合の注意事項等説明義務化
(3)広告の是正 |
|
 |