広報誌「かけはし」

 
■2016年7月 No.538
最新!時間栄養学から学ぶ ヘルシーダイエット

 6月17日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。兵庫県立大学 環境人間学部 教授 永井 成美氏が「最新!時間栄養学から学ぶヘルシーダイエット」をテーマに講演されました。参加数は、39組合・48人。(以下に講演要旨)

 
 
永井 成美 氏
 体内時計(24時間の時を刻む脳の主時計)は、朝の光で活性化され精神活動や栄養代謝などの機能をスタートさせ、朝食は内臓の時計(末梢時計)を目覚めさせる。主時計と内臓時計が同調することで身体機能が最適化されるが、逆に体内時計が乱れると肥満や生活習慣病を引き起こしやすい。講演では、体内時計を整えるための食事や生活リズムを科学する「時間栄養学」の知見を紹介する。

1.なぜ朝食を食べると肥りにくいのか
 同じ1食を朝食と昼食で食べた場合と、朝食を抜いて昼食で2食分を食べた場合では、食後の体熱産生(余分に熱として散逸されるエネルギー)は1食ずつ食べたほうが高い。
 また、同じ食事を「朝・昼・夕」と「昼・夕・夜食」で食べた場合を比べると、前者のほうが体熱産生は高い。つまり、同じだけ食べるのであれば、朝食は抜かないほうが肥りにくいといえる。
 夕食や夜食が多い人は、それらを減らすとお腹周りがすっきりしてくる。その効果を実感するためには、同じパジャマで@寝る直前とA起床後(トイレを済ます)の2回、体重を計り続けてグラフ化するとよい。
 夜の食事とお酒をちょっぴり控えた翌朝は、体重の落ちがよい。たまに食べ過ぎて体重グラフが跳ね上がっても、数日間でもどすようにすればよい。体重が下げ止まったら、歩く時間や階段を使う機会を増やすと再び下がり始める。
 また、胃には毎日同じくらいの時刻(食前)に消化の準備を行う「予期活動」があるが、朝食を食べないと予期活動が弱まり食欲もわかなくなって欠食が固定しやすい。
 朝が食べにくい人は、温かいスープや味噌汁、ヨーグルト、スムージー、バナナなどを毎朝同じ時刻に口にして、内臓の時計を再調整することをお勧めしたい。

2.カフェインや夜間の光などにも注意
 寝る前(概ね3時間以内)にカフェイン(珈琲や濃い緑茶など)をとったり強い光を浴びると、眠りのホルモン「メラトニン」の分泌リズムを遅い時間へずれさせやすいことが知られている。最近では、液晶(TV、パソコン、スマホなど)から出るブルーライトにも同じような作用があることも報告されている。
 さらに、平日は普通に寝起きして週末は寝だめすると「ソーシャル・ジェットラグ」という、時差ぼけに似た状態になりやすいという。
 まずはできるところから、体内時計を意識した生活(夜は少し部屋の照明を落とす、カフェインをとるタイミングを考える、夜に食べ過ぎない、朝食をとる、昼間は活動的に過ごす、など)を送ることが望ましい。

3.夜遅い勤務、シフトワークの方の食事
 イギリスのHSEから、夜間勤務やシフトワークの人向けに次のような食事が推奨されている。夜遅く帰宅される方の食事の参考にもなる。

パスタ、米飯、パン、サラダ、フルーツ、野菜、乳製品といった消化のよい食品を選びましょう。
油こいもの、スパイシーなもの、重たい食事は消化が悪いので避けましょう。これらは、あなたが目覚めなくてはいけない時に眠気を催させ、休養が必要な時に眠りを妨げてしまいます。
チョコレートのような甘い食品は、夜間や眠る前などの体のエネルギー代謝が落ち着いている時に代謝を上げてしまうので避けましょう。
フルーツと野菜は、含まれている糖質がゆっくりとエネルギーになります。ビタミンやミネラル、食物繊維の給源にもなるのでよい食品です。
水分は十分にとりましょう。脱水は心身のパフォーマンス低下に影響します。ただし眠る前の飲み過ぎはトイレに行きたくなるので避けましょう。

 時間栄養学の知恵を活かして、健康で充実した毎日を送られることを望みます。

HSE:Health and Safety Executive