広報誌「かけはし」

■2016年4月 No.535


28年度事業計画・予算を決定

 健保連大阪連合会は3月23日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で、平成27年度第2回総会を開催した。総会には148組合が出席、委任状提出26組合を含め、合計174組合が参加した。総会では、大阪連合会の平成28年度事業計画案、同予算案などを審議、承認した。
 総会では冒頭、大阪連合会の小笹定典会長があいさつに立った。
 小笹会長は、昨年5月に成立した医療保険制度改革関連法について言及した。同会長は、「拠出金負担の重い健保組合への軽減措置が盛り込まれるなど一定の成果はあった」としたものの、「後期高齢者支援金の総報酬割化など健保組合全体に負担を強いる内容だった」と、あらためて遺憾の意を表明した。そして今後、「高齢者医療制度の負担構造改革を実現するべく、粘り強く訴えていく」と強調した。
 続いて、来賓として出席された近畿厚生局の田邊毅保険課長があいさつした。
 田邊課長はこのなかで、平成28年度健保組合予算編成における一般保険料率の状況を説明した。
 それによると、近畿厚生局管内で保険料率変更を申請したのは、現時点で36組合。ほとんどが料率引き上げの申請で、どの健保組合も前期高齢者納付金の負担増加を理由にあげている。
 料率変更の変遷をみると、24年度が123組合、25年度が102組合、26年度が76組合、27年度が57組合と減ってきているが、管内健保組合の平均保険料率は、3分の1近くの健保組合が協会けんぽの料率(100‰)以上になっている―という厳しい状況を示した。
 この後、議事に入り小笹会長が議長となって、池田泉州銀行健保組合、西日本パッケージング健保組合の2組合を議事録署名者に指名した後、議案の審議を行った。
 総会終了後には、来賓として出席された健保連本部の白川修二副会長から、中央情勢報告(こちらに要旨掲載)があった。

 ●総会の経過
 議案第1号
 平成28年度事業計画(案)
 議案第2号
 平成28年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 平成28年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること
  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 平成27年度被用者保険運営円滑化推進事業会計収入支出予算および同説明(案)
  以上、原案どおり承認された。

 ●健康保険組合をめぐる諸情勢
 
(1)医療保険制度等を取り巻く諸情勢
   医療保険制度改革関連法が昨年5月に成立した。同法は、国保の財政運営の安定化に力点が置かれ、高齢者医療制度の構造的改革を柱とする健保連の主張とはほど遠い内容であった。しかし国会審議の過程で、高齢者医療制度に関する検討の続行や高齢者医療運営円滑化等補助金の財源確保などが附帯決議されたのは、一定の成果であった。
 政府は6月に「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針2015)を閣議決定した。社会保障費の自然増を抑制し、その伸びを今後3年間で1.5兆円程度にするというものである。日本の医療制度の持続可能性確保に向けた取り組みの中で、思い切った医療費適正化策によって歳出を削減するという方向性は、健保組合はじめ保険者にとって望むところである。
 また、7月に発足した経済団体や保険者、医療関係者による「日本健康会議」では、健康寿命の延伸と医療費の伸びの適正化を図るため、予防や健康づくり、重症化予防・健診事業への取り組みなど、健康づくりの国民運動化を図ることとしている。加入者の健康を守る健保組合においても、データヘルスの活用など効果的な保健事業を実施することにより、保険者機能を発揮し、存在価値を示す良い機会である。これからも健保組合は皆保険制度を守り、健康長寿社会を実現する中心的存在として貢献し、使命を果たしていかなければならない。
 一方、今年4月の診療報酬改定では薬価を含め全体でマイナス0.84%の引き下げ改定となった。今後は医療費の動向を把握し、一層医療費適正化に傾注する必要がある。
 団塊の世代が前期高齢者となり、さらに少子高齢化が進むなか、今年4月からは後期高齢者支援金の総報酬割が3分の2に拡大。10月からは、短時間労働者への健保適用拡大が実施され、健保組合の財政はますます厳しい状況に陥ると予測される。
 今年度は、昨年11月に健保組合全国大会で決議した「現役世代が納得できる公平な制度の実現」をめざして、高齢者医療制度の負担構造改革の実現、保険者機能に効果的な健保組合方式の維持・発展などに積極的に取り組んでいかなければならない。今後、政府の29年度予算編成、29年4月の消費税率10%への移行といった山場が控えている。健保連大阪連合会では各関係団体との連携を強化しつつ、高齢者医療制度はじめ医療保険制度の抜本改革を、粘り強く訴えていくことが重要である。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
   健保組合の財政状況は、平成26年度決算では、保険料率の引き上げ等により全体では経常収支で7年ぶりに黒字となった。しかし、保険料収入に対する高齢者医療拠出金の割合は42.45%となり、組合財政にとって過重な負担が続いており半数を超える組合では経常収支で赤字となっている。28年度は、後期高齢者支援金の総報酬割拡大により、負担が増える健保組合がさらに多くなり、保険料率の引き上げで対応せざるを得ない状況が続くとみられる。こうした現状を打破するために、高齢者医療拠出金の算定方法の見直しをいっそう強く求めていく必要がある。増大する医療費の適正化対策として、従来にも増してレセプト点検、療養費の適正化、後発医薬品の使用促進、およびデータヘルスの活用など、きめ細かな取り組みを行わなければならない。
(3)大阪連合会の事業等
   大阪連合会では、各健保組合・各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、常に真摯な議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
 本年度は、要求実現の取り組みも含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。


事 業 計 画
 
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
   医療・介護保険制度への対応、および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら、健保連本部との連携を密にして、下記事項について取り組む。
  @理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A健保連の主張を国政の場に反映させるため、政党・国会議員への効果的な要請活動を推進する。
B機関誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
C「レセプト管理・分析システム」の活用による、保険者機能強化への支援を行う。
Dデータヘルスの一層の推進に向けて、保険者機能強化への支援を行う。
E社会保障・税番号制度について健保組合の円滑な導入に向けて支援を行う。
F健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
G健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
H関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
I医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
J大阪府保険者協議会では、医療費の適正化や有効な保健事業、地域医療構想について健保組合の意向を反映させる。
K国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
L近畿地区各連合会と密接な連携を図る。
M他府県の健保組合も加えた保健事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
Nその他、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
   組織活動の強化を図り、下記事項を実施する。
  @理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催する。
B地区会を中心とした諸活動を支援する。
C要求実現のためのシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記事項を実施する。
@会員組合専用サイトを活用し、円滑な情報提供・充実を図る。
A組合予算編成等事務説明会を開催する等、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B永年勤続者表彰式を挙行する。
C会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
D会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行
@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療・介護保険制度改革関連(高齢者医療費の負担構造改革、健保組合の運営安定化に向けた国の財政支援の拡充等)。
・医療費適正化関連と健康づくり関連。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と地区会の事業活動。
・政党・国会議員への要請活動。
(2)広報活動の強化
@会員組合の事業活動の推進に役立つようホームページの充実を図る。
A会員組合が行う広報活動に役立つ広報研究会を開催する。
B会員組合の広報活動に具体的に役立つ広報資料を提供する。
(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
・経営者団体・労働団体および医療関係団体。
・その他、必要な関係者。

2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上
@事務長・中堅職員等研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・庶務会計・徴収)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D後発医薬品に関する講習会を開催する。
E健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
    @レセプト管理・分析システムの活用等研修会を開催する。
Aデータヘルスに関する研修会を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化
@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
Aレセプトおよび特定健診・特定保健指導データの分析活用を図る。
B柔道整復療養費に関する情報の収集を行い、適正化を促進する。
C後発医薬品の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
@改定診療報酬説明会を開催する。
Aレセプト点検事務に関する研修会を開催する。
B柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費に関する研修会を開催する。
C求償事務に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談を実施する。

4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
(3)大阪府保険者協議会との連携
保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
    インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約。
・プール利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
A健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。

5.総合組合の運営推進
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
    @総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
Aデータヘルスの効果的な実施について検討する。
B医療費適正化対策について検討する。
C協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。

平成28年度 収入支出予算概要
(単位 千円)