■2016年4月 No.535
医療機能分化をもっと明確に
― 4月から診療報酬改定 ―
4月から診療報酬が改定された。平成28年度改定は、薬価引き下げ分を含めて、全体で0.84%のマイナス改定となった。この改定率の範囲内で、医療機能の分化・連携の推進策などが盛り込まれた。
機能分化の具体策の一つとして、7対1入院基本料の施設基準見直しが掲げられた。この入院基本料は、1日のうち患者7人に対して看護職員1人を配置するなど、高度急性期医療を担う病院を対象にしている。
さらに、重症度や、医療・看護の必要度の高い患者が一定の割合以上、入院していることも算定要件となっている。
今回算定要件が変更され、重症度などの基準が見直されるとともに重症患者の入院比率が15%以上から25%以上に引き上げられた。同時に、病棟群単位での算定や200床未満の病院への適用に対して、経過措置として2年間の猶予期間が設けられた。
これについては中医協での審議中、早期の病院機能分化を目指して入院比率を高く設定したい支払い側と、急激な施設環境の変更に難色を示す診療側の意見が隔たっていたところだ。
支払い側のねらいは、ハードル引き上げによる対象病床の削減、入院日数の短縮、それによる医療費の効率化と、患者の精神的・経済的負担の軽減。今回決着した内容だけでは不十分といえる。
このほかの医療機能分化策としては、紹介状なしに大病院を受診する場合の患者負担が義務化された。各大学病院、ならびに国立循環器病研究センターなどの特定機能病院や、500床以上の地域医療支援病院は、初診5000円(歯科3000円)、再診2500円(歯科1500円)以上を徴収する。病院同士あるいは病院と診療所間の機能分担強化を図ったものだ。
診療所に対しては、認知症患者や小児かかりつけ医、かかりつけ歯科医の要件が明確になり、主治医機能の評価が重くなった。かかりつけ薬剤師・薬局の要件も設けられた。それは、患者に対する一元的・継続的服薬管理や、医療機関との連携で減薬などの処方提案をするのが可能なことと定義された。
診療報酬改定答申にあたり、中医協は18項目もの附帯意見を付けた。この数は、過去10年で最も多かった24年度改定と同じである。それだけ超高齢社会での医療・診療報酬に対する課題が多いということだろう。
中医協が今回改定の影響を検証するのは今秋からになる。少なくても4〜6月の医療費動向の把握が必要だからだ。秋の時点というと、2年後の次期改定まで1年半足らずしかない。期間が短いことが、大胆な診療報酬改革を困難にし、課題をためる一因にもなっている。
医療費を負担する保険者、患者(被保険者・家族)は、改定の早急な検証と、それにもとづくさらなる改革、そして「患者中心の医療の実現」を望んでいる。
健保組合には、診療の2カ月後にレセプトが回付される。そのタイミングで健保組合独自に、疾病別医療費分析などを素早く行って改定の影響を把握し、広く発信していけば、保険者機能を発揮するいい機会になるはずだ。
(T・M)