■2016年2月 No.533
日本は世界一の健康国なのか
― 健康寿命は男女ともトップだが ―
この原稿は正月の帰省中、郷里の91歳の母の横でまとめた。一人で暮らしている母は、一昨年は盲腸、昨年は胆石と入院生活を送りながらも「ボケずに100歳まで生きるのが目標」と毎年言っている。私はストレスなども重なり、平均寿命までいけるかとの思いである。
そういえば、「門松は冥途の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」と詠まれているように、それなりの年配者は、あと何年生きられるのだろうかと思い悩む。せめて平均寿命までとか、いやいやPPK(ピンピンコロリ)で逝きたいとかは、話題の定番なのである。
ここでの平均寿命は、健康水準の指標としてよく用いられている。日本は世界でも高い水準を維持しており、これも皆保険のおかげかと思っていた。しかしこのごろは平均寿命でなく、「健康寿命」が高くなければならないといわれている。
健康寿命とは、健康で支障なく日常の生活を送ることができる期間を示すもので、生活の質を重視する考え方にもとづき、WHOが2000年にこの概念を公表した。平均寿命から介護や病気で寝たきりの期間を引いたものが健康寿命になる。つまり、何歳まで自立して健康に暮らせるかの指標である。
例えば、80歳まで生きたとして、介護に3年、そして入院に3年を要した場合は、健康寿命は74歳となる。どんなに平均寿命が延びても生活の質が低ければ、満足のいく老後を送ることができない。したがって、平均寿命よりも健康寿命を延ばすことが重要とのことである。
昨年報道された、米ワシントン大学などの国際チームが世界188カ国のデータを分析した2013年の健康寿命の調査結果では、男女とも日本がトップであった。
以下、国別のベスト5では、男性が2位シンガポール、3位アンドラ、4位アイスランド、5位イスラエル。女性が2位アンドラ、3位シンガポール、4位フランス、5位キプロスの順である。
大したものだと喜んでいたが、なぜか素直に喜べないではないか。アンドラって国は聞いたこともないし(スペインとフランスに挟まれた人口約7万9000人の公国だそうな)、イスラエル、キプロスといわれてもリアクションのとりようがない。
アメリカ、イギリス、ドイツなどの先進国はどうなっているのか。イメージ的に健康立国の北欧の国々はなぜ入ってないのか。どのような調査方法なのかとも思うし、ここに日本が入っていていいのかとさえ思う。
ところで、日本は世界一健康な国なのに、われわれ国民には実感がなく、健康に関して明るい未来を持てていないのが不思議である。
そして国は、これ以上健康に関してなにを求めているのか。医療費や介護費用の抑制のために健康寿命の引き上げは当然であるが、費用対効果でいうなら、最後のところを引き上げようとすればとんでもない費用がかかるものである。
たゆまざる努力をしなければトップを維持できないのだろうが、そのツケを健保組合に押しつけようとしているのではないか。
今年は「医療保険制度改革関連法」による制度改正実施の年でもある。法改正でのお題目の「負担の公平化」が、全体として不公平にならないよう願うばかりである。
(K・N)