広報誌「かけはし」

■2016年1月 No.532


わが国のがん動向とがん対策

〜知っておきたい6つのポイント〜

 11月10日、薬業年金会館で健康教室を開催。大阪がん循環器病予防センター 副所長 山崎 秀男氏が「わが国のがん動向とがん対策〜知っておきたい6つのポイント〜」をテーマに講演されました。参加数は、54組合・67人。(以下に講演要旨)

 

 

山崎 秀男 氏
 わが国のがんには、胃・肺・肝がんなど減少傾向を示すものと、膵・乳・前立腺がんなど増加傾向を示すものがあります。原因は、多くのがんでほぼ判明していますが、膵がんのように不明なものもあります。
 がん対策として最も有効なものはがん検診です。多くの健康情報では、具合がちょっとでも悪いと早めに医療機関を受診するよう勧めています。しかし、これはがん検診とはいいません。
 がん検診とは、自覚症状がない方が、厚労省により推奨された検査法、対象年齢、受診間隔にしたがい、定期的に検査を受けることをいいます。
 週刊誌や夕刊紙などで、がん遺伝子をはじめとする新しい検査法についての記事をよく見かけます。これでがんが克服されるかのような印象を与えるものもありますが、そのほとんどは効果が不明確で基本的な成績すら示されていません。がん検診は死亡率減少効果が証明されて初めて有効と認められます。
 現在、厚労省が有効と認め、がん対策として行われているものに、胃がん検診として胃X線検査、大腸がん検診として免疫学的便潜血検査、肺がん検診として胸部X線検査と喫煙者に対する喀痰細胞診検査、子宮がん検診として子宮頸部細胞診検査、乳がん検診として視触診とマンモグラフィー検査があり、職域の検診や市町村でも住民検診として行われています。
 有効ながん検診でも、精度管理が悪いと効果を発揮しません。精度管理をきちんと行うためには、機器の整備や資格を持った人材の確保、要精検者や発見がん患者のフォローアップを行い、成績を集計する体制の整備が必要であり、費用と人手がかかります。
 がん検診は、このような費用を惜しむと、結果的に効果が上がらず、経費のムダ遣いに終わる可能性の高い対策でもあります。
 職域検診は、対象者の把握が容易で、受診しやすい環境を用意でき、検診の費用負担も軽く、受診率が高いとのメリットがあります。反面、精度管理が不十分と推測されますが、成績を評価する仕組みがないため実態が不明です。
 胃・大腸・肺がんは年齢が高くなるほどリスクが高くなり、60歳代はがん検診が最も効果を発揮する年齢層です。将来、職場でがん検診を受ける機会がなくなった方は、自分から市町村に申し込んで受ける必要があります。
 大阪府の市町村が行うがん検診は、全国的にみて精度管理の成績が良好です。
 皆様方には、定年後こそがん検診の重要性が増すことをよく理解していただき、すすんで受けていただきたいと思います。

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