広報誌「かけはし」

■2015年12月 No.531
 平成27年度(2015年度)健康保険組合全国大会が11月25日(水)、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。今年の全国大会は、10年ぶりに国会閉会中の開催となった。
 副呼称に「現役世代が納得できる公平な制度の実現へ」と掲げた全国大会には、小雨で肌寒いなか、約3500人の健保組合関係者が参集、大阪からは190人が参加した。
 基調演説に立った健保連の大塚陸毅会長は、昨今の政治情勢について触れた後、健保組合の最大の関心事である医療制度改革について述べた。
 大塚会長は、今年5月に成立した医療保険制度改革関連法に対して、「国保運営の都道府県化に主眼をおいた改革となっている。後期高齢者支援金の全面総報酬割によって生じる国費財源の7割相当を、国保の財政対策に転用することにした。これは国の財政責任を現役世代の保険料負担に転嫁する『肩代わり』そのもの」とあらためて指摘した。
 そのうえで今後、「29年4月予定の消費税率10%への引き上げを視野に、高齢者医療制度の負担構造改革の要求実現活動を展開していかなければならない」と強調。全国すべての健保組合の団結を訴えた。
 続いて、次の各界来賓、代表者からあいさつがあった。竹内譲厚生労働副大臣、古川俊治自民党厚労部会長、桝屋敬悟公明党政調会長代理、長妻昭民主党代表代行、阿部泰久経団連常務理事、神津里季生連合会長、小林剛協会けんぽ理事長。大会の副呼称「現役世代が納得できる公平な制度の実現へ」には、各人から賛意が示された。
 今年の大会では、会場の健保組合代表による質疑・意見発表と、それに対する回答および決議の趣旨説明があった。
 質疑・意見発表は、山田豊彦福岡県情報サービス産業健保常務理事、新谷元司SGホールディングスグループ健保常務理事、武内俊明イオン健保常務理事の3氏が、健保組合の窮状を訴えるとともに打開策について述べた。
 それに対して、白川修二健保連副会長が回答。大会決議とスローガン4点(@高齢者医療費の負担構造改革の実現 A安定した組合運営に向けた財政支援の継続・拡充 B実効ある医療費適正化対策の実施 C保険者機能の発揮に効果的な健保組合方式の維持・発展)の趣旨を説明した。
 決議文は、宇田川昭彦ヤマトグループ健保常務理事が力強く朗読し、決議は出席者全員一致で採択された。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    三菱健保組合 徳永一夫理事長
  議長あいさつ アイシン健保組合  中井享常務理事
  会長基調演説 健保連 大塚陸毅会長
  厚生労働副大臣あいさつ
  政党代表あいさつ 自由民主党・公明党・民主党
  関係団体あいさつ 日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    全国健康保険協会
  質疑・意見発表  
  質疑・意見発表に対する回答および決議の趣旨説明
    健保連 白川修二副会長
  決議 ヤマトグループ健保組合
宇田川昭彦常務理事
  特別企画 VTR&トーク
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健保組合 阪口克己常務理事

 健康保険組合は、これまで医療保険者の中核として国民の安心の基盤である皆保険制度を支えてきた。しかし、高齢化の進展、医療費の増大、また制度の改変によって、現在、かつてない厳しい財政状況におかれている。
 その最大の要因は、高齢者医療制度への過重な費用負担にある。保険料収入の5割近くを占める拠出金負担は、現行制度の創設以降、累計で約24兆円にも達している。健康保険組合はこれまで保険料率の引き上げなどで対応してきたが、被保険者1人当たりの年間保険料はこの8年間で約9.5万円も増加し、負担はもはや限界に達している。
 そのうえ、団塊世代の前期高齢者入りに伴う高齢者医療費の増大や、後期高齢者支援金の総報酬割の拡大実施等により、高齢者医療制度に対する支援金・納付金負担の増加は避けられず、更なる財政悪化が懸念される。このままでは、健康保険組合は保険者の中核としての役割を果たせないばかりか、自らの存続さえ危ぶまれる状況にある。
 今後も、健康保険組合は優れた保険者機能を発揮して加入者の健康を守り、医療保険制度の中核として皆保険制度を守り、また「日本健康会議」等で提唱されている健康長寿社会の実現に貢献していかなければならない。国は医療保険制度改革関連法の「附帯決議」の趣旨を尊重し、負担の公平性等の観点から高齢者医療制度に関する検討を早急に実施し、平成29年4月の消費税率10%への引き上げ時には、前期高齢者医療への公費投入をはじめとする高齢者医療費の負担構造改革を断行すべきである。
 また、改革実現までの間も、全面総報酬割等に伴う負担軽減措置の実施・拡充、短時間労働者の適用拡大に伴う激変緩和措置など、健康保険組合の安定運営に向けた十分な財政支援が不可欠である。
 一方、増大する医療費の重点化・効率化を行わない限り、どのような制度であっても持続安定性は確保できない。国においては実効ある医療費適正化対策を一層実施・推進することを強く望む。
 現役世代が納得できる公平な制度の実現に向け、われわれ健康保険組合は次の事項の実現を期し、組織の総意をもってここに決議する。
一、高齢者医療費の負担構造改革の実現
一、安定した組合運営に向けた財政支援の継続・拡充
一、実効ある医療費適正化対策の実施
一、保険者機能の発揮に効果的な健保組合方式の維持・発展
平成27年11月25日
現役世代が納得できる公平な制度の実現へ
平成27年度 健康保険組合全国大会

特別企画VTR&トーク
 大会決議の後、特別企画として「VTR&トーク」が行われた。会場の大画面に、健保組合について聞いた街頭インタビューと、健保組合の活動の模様を写したVTRが流れ、白川副会長、安藤伸樹日本通運健保理事長(広報委員長)、野路日出男セーレン健保専務理事(大会企画委員)がコメントした。
 3氏は、健保組合の認知度はまだまだ低く、まず広く健保組合を知ってもらう広報活動が大切と、「あしたの健保プロジェクト」の推進を説いた。
 全国大会は、阪口克己クボタ健保常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
全国紙に意見広告掲載
 全国大会当日には、全国紙の読売新聞、日経新聞の朝刊に健保連の意見広告が掲載された。読売新聞はカラー全1面。内容は、イメージキャラクター「天才バカボン」を使って、高齢者医療への拠出金の増加による保険料率アップで、給与手取り額が減っている現状を訴え、制度の早期改革の必要性を説いている。
 日経新聞は、白黒全1面で、国民皆保険を守るために制度改革が必要なことを訴えた内容となっている。「カラー版」は全国大会に先立ち11月6日、朝日新聞の朝刊全国版にも掲載された。
大阪連合会が要請活動
 全国大会に関連して、健保連大阪連合会は国会議員への主張実現要請活動を実施した。国会閉会中のこともあって議員の所在もまちまちなため、議員会館に限らずケースバイケースでの対応となった。要請活動の結果は次の通り。
 11月25日 ▽(要請先)とかしきなおみ厚生労働副大臣[衆・大阪7区・自民]、(場所)全国大会会場、 (要請者)川隅正尋大阪連合会専務理事、長井輝臣大阪連合会参与 ▽(要請先)太田房江厚生労働大臣政務官[参・比例全国・自民]、(場所)全国大会会場、(要請者)川隅専務理事、長井参与
 ▽(要請先)竹本直一衆院議員[大阪15区・自民]、(場所)議員会館、(要請者)倉岡謙吉シャープ健保常務理事、赤阪朋彦近畿日本鉄道健保常務理事、長井参与 ▽長尾敬衆院議員[比例近畿・自民]、(場所)議員会館、(要請者)長井参与
 ▽(要請先)松浪健太衆院議員[比例近畿・おおさか維新の会]、(場所)議員会館、(要請者)高橋芳宏日本生命健保常務理事、森口恭明塩野義健保常務理事、中村卓史住商連合健保常務理事、川隅専務理事、山田克廣大阪連合会事務局長
 11月26日 ▽(要請先)平野博文衆院議員[比例近畿・民主]、(場所)大阪事務所、(要請者)橋村雅隆関西電力健保常務理事、長井参与、山田事務局長