■2015年12月 No.531
医療費の効率化に国民的視点を
― 診療報酬改定議論に注目 ―
平成28年4月の診療報酬改定に向けた動きが活発だ。
改定を審議する中医協(中央社会保険医療協議会、厚労大臣の諮問機関)は、2年前の26年改定以降、改定結果の検証や課題の整理などを行ってきた。
中医協では、11月初旬には、医療機関の経営実態と保険者の財政状況を調べた医療経済実態調査が報告され、検討された。
また、12月上旬には、社会保障審議会の医療保険部会と医療部会の両部会から、「改定の基本方針」を受けた。28年度改定は、この方針に沿った内容になる。
一方、政府は「骨太2015」の基本方針にもとづき、12月中に診療報酬全体の改定率を決定。改定率は28年度政府予算案に反映される。
中医協は、改定率の範囲内で、診療行為や薬価などへの点数配分を決める。そして、最終的なまとめは、年明け2月頃、厚労大臣あてに答申される。
前回改定率は、消費税アップ分の措置もあってトータル0.1%の引き上げとなったが、改定は診療報酬本体と薬価改定を切り離して実施された。健保連はじめ支払い側は、この考えを評価。今回改定にあたっても前回同様、薬価引き下げ分を診療報酬本体の引き上げ財源とすることなく、確実に国民に還元すべきと主張した。
これまでの中医協審議では、改定の重点課題として医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムを推進することをあげた。
患者の立場からみれば、急性期、回復期、慢性期などの病態に応じて質の高い医療を適切に受けることができ、必要に応じて介護サービスも求められるなど、切れ目のない医療提供体制が確立されていることが望ましい。
前回改定では、「入院」に関して、高度急性期を担う病院と、それ以外の急性期対応病院について、患者の重症度や医療・看護の必要度による評価に分けた。
しかし、同じ病態の患者が違う診療機能をもつ別の病床に混在するという非効率性は改まっていない。支払い側は、もっと進んだ医療機能分化対策を求めている。
「外来」では、かかりつけ医機能の充実や、大病院の専門的な外来機能の確保(紹介状なしの患者に一部負担導入)などが焦点になっている。
「薬剤」では、後発医薬品の価格の一律引き下げが議論されている。後発品の使用は、ここにきて進んでいるが、さらにスピードアップさせて医療費の節約を図ろうとするねらいだ。
現在、その価格は、先発品の原則6割で薬価収載されるが、支払い側は、引き下げを求めている。
薬については他にも、飲み残し薬(残薬)の問題、湿布薬など市販品と同じ成分の医薬品を保険適用からはずす問題、いまの医薬分業は患者にとって有効に機能しているかという問題―など課題は多い。
中医協での審議は、これから大詰めを迎える。高齢社会に突入したいま、医療費は自然増だけでもかさむ。医療費の効率化、ムダ排除には国民的視点が欠かせない。中医協では、ぜひこの方向で議論を尽くしてほしい。議論の決着まで注視したい。
(T・M)