広報誌「かけはし」

■2015年11月 No.530
時評

高齢者医療費の負担問題を考えよう

― 診療報酬体系の抜本改革も ―


 厚労省が平成26年度の医療費の動向を公表した。医療費の伸びは平成23年度まで毎年3%台で推移していた。その後、24年度1.7%、25年度2.2%、26年度1.8%と、やや低目におさまっているものの、確実に増加の一途をたどり、26年度には40兆円にふくらんだ。
 団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる10年後の37年度(2025年度)には、国民医療費は55兆円超と想定される。
 平成27年9月現在の人口推計では、65歳以上の高齢者人口は3384万人で、総人口に占める割合は26.7%。それが10年後には30.3%になる。75歳以上の人口は現在1637万人で、全体の12.9%だが、10年後には18%を超える見込みである。
 医療費は40兆円のうち、14.5兆円が75歳以上にかかる医療費であり、全体の36.3%を占めている。
 現在の1人あたりの医療費は31.4万円だが、75歳以上は93.1万円で、約3倍となっている。
 後期高齢者医療費の財源負担は、ざっと公費5割、各医療保険者の支援金4割、高齢者の保険料1割となっている。したがって、被用者保険の財政は、このままだとますます苦しくなる構図である。
 安倍内閣の骨太方針をもとに、先ごろ「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」が成立した。しかし、中身は文字通り、国民健康保険の財政と運営の安定化を優先したものであった。
 われわれ健保組合にとっては、後期高齢者支援金の全面総報酬割や短時間労働者に対する適用拡大などで、より過重な負担となる内容となっている。
 平成20年度以降、高齢者医療制度への拠出金が増え続け、健保組合は苦しい財政のやりくりに追われている。そんな組合への財政支援措置や、能力に応じた負担、後発医薬品の使用促進、医療費適正化に向けた医療と介護の連携体制強化―などの施策が、ある程度盛り込まれてはいる。
 しかし、われわれ保険者にとっては、いぜんとして負担を強いる制度が根本的に改められていない。
 28年度は診療報酬改定の年である。前回はプラス改定であったが、現状と将来の医療保険財政を考えるならば、抜本的な医療費抑制策の立案は避けて通れない。
 増加の一途をたどる高齢者医療にかかる診療報酬点数体系を創るべきではないか。医療の質を落とさず費用のみ下げるという視点が必要と考える。
 より効率的な医療保険制度への転換が、日本の高齢社会に求められている。
 世界に冠たる国民皆保険制度を持続させるためにも。
  (M・K)