広報誌「かけはし」

■2015年8月 No.527
時評

医療提供体制の効率化に期待

― 地域ビジョンに保険者の意見反映を ―


 良質で効率的な医療提供体制を構築することは、国民みんなの願いだろう。地域における医療および介護の総合的な確保に関する法律が、昨年6月に成立した。その後、同法を基本に関連各法に沿って、各地で医療体制整備へ向けた取り組みが始まっている。
 関連法の一つ改正医療法により、昨年10月から医療機関の病床機能報告制度が施行された。この制度では、「一般」(急性期)と「療養」に大別していた病床を、さらに高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの病床機能別に細分化した。医療機関は現状と今後の方向を見定めて、区分けに合った病床機能を選択、都道府県に報告する仕組みだ。
 これまで、急性期医療を担う一般病床に、必ずしも急性期対応を必要としない患者が入院していてロスがあった。それを是正していくのが制度のポイントだ。
 今年3月時点で報告された「一般」と「療養」の病床数は合計約123万床。内訳は高度急性期19万床、急性期58万床、回復期11万床、慢性期35万床となっている。しかし、療養病床でありながら高度急性期医療を担うとして報告された極端なケースもみられる。こうした混在の解消が今後のカギとなる。
 4月からは、報告をもとに都道府県が地域医療ビジョンを医療計画で策定することとされている。現在、各地で策定のための体制づくりが進んでいる。医療計画は、法改正前に全都道府県で作成済みだが、いっそう地域の実情を反映させようという構想だ。
 大阪府には現在、平成25〜29年度までの「保健医療計画」がある。とくに、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患の5疾病と、救急、災害、周産期、小児、在宅の5医療事業への取り組み強化を示している。
 また、一次〜三次までの医療圏が設定されている。一次は市町村単位、二次は府下8ブロックで病院・診療所の病床整備を図る圏域、三次は府全域で高度先進医療までカバーする。
 このうち二次医療圏は、大阪市、堺市、豊能(箕面市など)、三島(高槻市など)、北河内、中河内、南河内、泉州に区分されていて、各圏域に整備目標の基準病床数が設定されている。現在、全圏域で既存病床数が基準を上回っている。つまり病床過剰の状態なのだ。
 病床過剰地域に削減義務が課されるわけではないが、今後は医療機能別の細部まで病床の過不足が検討され衆目に付されることから、地元で医療提供体制への認識が深まり、効率化の機運の高まりも期待できる。
 一方、医療計画の策定にあたり、保険者協議会の意見を聴くことが、高齢者医療確保法で規定され、4月から施行された。健保組合、協会けんぽ、共済組合、国保などで構成する保険者協議会は、以前から都道府県ごとに設置されていたが、法律上の位置づけが明確になるとともに、これまで以上に役割が広がった。
 健保組合は保険者の立場から、地域医療の質の向上と効率化を図るための主張をする機会が増える。同時に、地域の加入者や住民に対して、医療や医療費の実態について関心を高めてもらう機会を得ることになった。保険者協議会での活動は、保険者機能発揮と医療費節減の両面から有効打となるよう期待したい。
  (T・M)