■2015年7月 No.526
医療費の抑制が急務
― 高齢者の自己負担にもメスを! ―
去る5月27日、参院本会議で「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部改正法」が可決され、成立した。
同法は医療保険制度全体の改革を目的としながらも、後期高齢者支援金の全面総報酬割で不要になる国費2400億円のうち1700億円を国保財政基盤強化のために充当するなど、国保の財政支援を最重視したものであろう。
毎年膨らみ続ける医療費は平成25年度で39.3兆円(概算)。37年度には52.3兆円にものぼると予測されており、そのうち75歳以上の高齢者の医療費が占める割合は46%を超える見込みだ。
今回の案にも入院時の食事代の段階的な引き上げ、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入など、負担の公平の観点からさまざまな施策がおり込まれた。
しかしながら、それらの施策をすべて実行したときに、肝心の医療保険制度全体の財政状況は健全な状態を保っているのだろうか。極めて難しいと感じるのは筆者だけではあるまい。
いま、急務なのは、効果的な医療費の抑制ではないか。そのためにはさまざまな対策がとられるべきだが、進展している少子高齢化の現状において、高齢者の自己負担増は避けて通れない。
現在の75歳以上原則1割負担から2割負担への移行を急ぎ実行すべきと考える。国民皆保険制度維持のためには、現役世代だけではなく高齢者も相応の負担をせざるを得ないという考えは広く理解してもらえるはずだ。
先ごろ、財政制度等審議会からは、ジェネリック医薬品の使用割合目標の引き上げ(29年度内に80%)などの案に加えて、現役世代と高齢者で差がある高額療養費の見直しや、75歳以上の人の窓口負担について段階的に引き上げる案などが意見書として出された。議論の進展を期待したい。
20年度の高齢者医療制度発足以来、健保組合は拠出金の増大に苦しんできた。毎年、支出削減のためにさまざまな保健事業を見直しており、このままでは保険者として本来実施すべき事業まで廃止対象にせざるをえない。財源不足から今後のデータヘルス計画の取り組みにも影響が出てくるものと思われる。
政府が29年に消費税率を10%に上げる際の公費拡充は必須だが、それだけでは現役世代の負担が年々増える構図は変えられないであろう。
真に持続可能な医療保険制度を構築するため、政府にはそろそろ医療保険制度間の財政調整の議論から一歩進んでいただきたい。抜本的な医療費抑制策の提言と実行がぜひとも必要だ。
(M・I)