■2015年6月 No.525
動き出す「マイナンバー」に期待する
― 医療費適正化の一助に ―
「マイナンバー制度(以下、制度)が始まりますよ」というCMが、人気女優を起用して放映されている。いよいよ始まるのかとの思いと、われわれ健康保険組合にとって、事務の効率化や被保険者の利便性につながるものになるのかと、期待と不安が交錯している。
制度導入のスケジュールをみると、まず国民への個人番号の通知が平成27年10月から開始される。そして、28年1月からは税・社会保障の申請書等へのマイナンバーの記載が始まり、以後、行政機関等での番号利用、本人の希望による個人番号カードの交付などが順次始まる。
医療保険分野における関係書類への記載届出は29年1月1日提出分からとなっている。健保組合のマイナンバー取得は、おもに事業主からとなるので、取得時期や届出書類の変更事務などの詳細を事業主と協議しなければならない。
一方、国は、診療報酬明細書(レセプト)など保険者が管理するものについては、30年度以降に活用することを検討している。
われわれの関心事としては、制度のもとでの「医療機関における保険資格の確認」がある。これは、医療機関の資格情報の転記ミスや保険者の異動情報が確認できないこと等を是正し、事務の効率化を図るのに効果が大きい。
しかし、個々の健保組合のシステムとのマッチング、データ更新の期間、メンテ費用など、コストと手間がどれだけかかるか、現状ではみえない。
さらに国は、健診情報や予防接種履歴の蓄積、確認により、疾病予防に活かせることができ、国民の健康向上に役立てることができると考えているらしい。しかし、医療機関側は医療情報を第三者が管理することに反発しているという。
思えば、制度は全国民に個人番号を付番し、個人を一意的に特定することを可能とする。「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号利用等に関する法律」および関連法が25年5月に成立したおりも、いまも、変わらない論評がある。
「一人一つの共通番号を持って行政サービスを包括するものがないのは、先進国としてはかなり珍しい」「不法に情報を入手した者による不正使用の懸念がある」「国家により個人情報が一元管理されることは、国家の統制となり徴兵制度などにつながる」などだ。テレビ番組では、荒唐無稽な心配をしているコメンテーターもいた。
国がいう「行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現するために行う」ことを信じるならば、制度に反対する理由はない。他国にできてわが国にできないことはないと思うがどうだろうか。
そうはいっても、国は本音のところは、正しい所得の把握や生活保護費等の不正受給の防止、年金記録問題などの解消を大目標としているのではなかろうか。
いずれにせよ、制度が医療費の適正化、効率化につながり、膨らみ続ける高齢者医療制度への拠出金軽減の一助になればと期待している。
(K・N)