■2015年5月 No.524
「世界禁煙デー」に思う
― 健康日本21の目標達成めざして ―
最近、「たばこ」や「たばこのけむり」を本や歌詞、映画、テレビドラマでみかけなくなった。小説や映画の世界では「たばこ」や、ゆらゆらと漂うそのけむりは、寂しさやはかなさなど、臨場感や想像をかきたてる重要な要素である。とくにオールドファンには映画の名シーンを思い起こす人も多いだろう。
しかし、そのノスタルジーには、いまや情状酌量は許されない。公共の場での喫煙には制約がかかり、“安息の地”家庭でも喫煙場所を制限される状況にまで追いやられている。
有名なアニメ映画作品の喫煙シーンに対して、青少年への影響を懸念する声があがるなど、社会風潮として厳しい見方をされている。
喫煙のメンタル面の効能や、喫煙場所で濃密なコミュニケーションがとれることなどを訴え、懸命の抵抗をしても、受動喫煙を含めた医学的なデータの前には「百害あって一利なし」と一刀両断に切り捨てられている。喫煙者にとっては、肩身が狭いなかで喫煙を続ける覚悟が必要になっている。
厚生労働省が提唱する「健康日本21」では、喫煙について平成34年度に成人の喫煙率を12%まで下げることを目標にしている。JT(日本たばこ産業梶jの調査によると、平成25年から26年にかけて喫煙率は1.2ポイント減少し19.7%となっている。このペースで減少を続ければ、34年度の目標達成も視野に入ってくるかとみられるが、現実はそう甘くないと考える。
禁煙グッズ、禁煙補助薬、禁煙外来、カウンセリングなど、巷では禁煙サポートや支援ツールがあり、テレビの健康番組でも頻繁に啓発が行われている。いまや喫煙の害について知らない人は、ごくわずかだろう。
そのなかで、いまなお喫煙を続けている人は、百も承知で続けている人達である。禁煙の挫折経験があったり、禁煙の意思がまったくない人が多かったりするなか、これから先の喫煙率の低減は従来の延長線では困難になることは容易に想像できる。
家族のなかに喫煙者がいれば、禁煙について「愛情」を持って説得する人が多いと思う。国も受動喫煙による弊害を強調するだけでなく、愛情溢れるメッセージを添え、健康リスクに警鐘を鳴らしてはどうか。
同時に、禁煙を促すのに十分な税率の改定や屋内禁煙、路上禁煙など、いままで以上に強い規制や施策を打ち出し、肩身が狭い喫煙より禁煙後の幸せがどれほど大きいかアピールして欲しい。
また、禁煙施策以上に重要なことは、新たな喫煙者をつくらない取り組みである。若年層の喫煙率は他の年齢層と比べて高くはないものの、将来的に重い健康リスクを背負ってしまうことは、人口減少のなかで医療費・労働力など大きな損失である。
未成年者の喫煙は言語道断。地域や社会で喫煙を許さない風潮をつくるとともに、興味本位や大人のマネなど喫煙のきっかけになることを断ち切ることが必要である。
5月31日は「世界禁煙デー」。いまや世界の最長寿国の日本が、禁煙への取り組みについても「クールジャパン」として世界に誇れる日がくることを願う。
(K・K)