広報誌「かけはし」

■2015年5月 No.524


 健保連はこのほど、平成27年度予算(早期集計)の概要をまとめた。全国に1403ある健保組合のうち、予算データの報告があった1384組合の数値をもとに推計した。それによると、経常収支は1429億円の赤字。高齢者医療制度が創設された平成20年度以降、8年連続の赤字となった。組合全体の約7割が赤字、平均保険料率は前年度より上昇して9.021%となり、健保組合の財政苦境が続いているのを示している。
経常収支状況と保険料率引き上げ組合数の推移
(注1) 平成19〜24年度までは決算、25年度は決算見込、26年度は予算、27年度は予算早期集計の数値である。
(注2) 保険料率引き上げ組合数は、19〜25年度までは前年度決算、26年度は25年度決算見込との比較。
27年度は予算データ報告組合(1,384組合)と26年度予算との比較である。

 平成27年度予算(早期集計)の概要は、4月1日現在で全国にある1403健保組合のうち、27年度予算データの報告があった1384組合の数値をもとに、全組合ベースに推計した。
1429億円の経常赤字
 それによると、27年度の経常収支は、経常収入7兆6488億円、経常支出7兆7917億円で、差引1429億円の赤字。赤字は、高齢者医療制度が創設された20年度以降8年連続で、その間の累計赤字額は約2兆5300億円にも及ぶ。
 26年度予算と比較すると、経常収支赤字額は2254億円下回った。これは経常収入が2267億円(3.05%)増加したのに対して、経常支出が12億円(0.02%)の微増にとどまったため。
 経常収入増加のおもな要因は、月額、賞与額の増加、被保険者数の増加、保険料率引き上げなど。経常支出があまり増えなかったのは、支援金・納付金の微減、被扶養者数の減少などによる。
 経常収支が赤字見込みの組合は945組合で、全組合の67.3%。保険料率の引き上げは316組合で、全組合の2割強となっており、苦しい財政状況が続いている。
大きい料率引き上げ効果
 経常収入のほとんどを占める保険料収入総額は、7兆5313億円。対前年度比2259億円(3.09%)の増加となっている。保険料率の引き上げにより886億円、月額の増加により499億円、賞与額の増加により464億円、被保険者数の増加により410億円増えた。保険料率の引き上げによる増収効果が最も大きかった。
 被保険者1人あたり保険料収入額は47万8649円で、対前年度比1万1296円(2.42%)増加した。
 平均保険料率(調整保険料率込み)は、対前年度比0.159ポイント上昇して9.021%となり、初めて9%を超えた。平均の保険料率引き上げ率は0.792%で、相変わらず高率の引き上げとなっている。
 これにより、協会けんぽの平均保険料率(10.00%)以上の料率の組合は、285組合となり、前年度の255組合を上回った。
 財政収支の指標となる実質保険料率は9.499%で、協会けんぽの27年度予算での収支均衡率(9.74%)に近づいた。協会けんぽ以上の組合は542組合で、約4割もある。
法定給付費の伸び率鈍化
 一方、支出をみると、法定給付費総額は3兆8354億円で、対前年度比186億円(0.49%)の微増。被保険者1人あたり額は24万3757円で、対前年度比413円(0.17%)の微減。
 支援金・納付金等の総額は3兆2893億円で、対前年度比254億円(0.77%)減少した。内訳は、後期高齢者支援金等が3.27%増の1兆6562億円、前期高齢者納付金等が4.55%減の1兆6331億円。
 拠出金の増減要因を詳しくみると、増加の要因は、前期高齢者数の増加、後期高齢者支援金の2分の1総報酬割での算定、高齢化にともなう医療費の増加などによる。減少の要因は、退職被保険者の新規適用がなくなったこと、25年度拠出金の精算(戻り)分などによる。
 保健事業費は、前年度より81億円(2.28%)増加して、3635億円となっている。
被保険者数約10万人増加/被扶養者数約15万人減少
 おもな適用状況をみると、健保組合数は、1403組合で、前年同期より7組合減少した。
 被保険者数は1573万4543人で、前年度に比べて約10万人増加した。被扶養者数は1347万1407人で、約15万人減少した。この結果、扶養率は0.86となった。被扶養者数は、後期高齢者医療制度への移行などもあって、ずっと減少傾向にある。
 被保険者1人あたり平均標準報酬月額は、36万8491円で、対前年度比3055円(0.84%)増加。平均標準賞与額は、106万9449円で、3万4067円(3.29%)増加した。
おもな適用状況
保険料収入に対する拠出金の割合は43.68%
 支援金・納付金等の保険料収入に対する割合は43.68%となった。保険料収入の50%以上を支援金・納付金に充てざるをえない組合が305組合もある。支援金・納付金等が保険料収入の50%以上の組合は、20年度以降、全組合の20%を超える状態が続いており、拠出金が恒常的に過重な負担となっていることがわかった。
 支援金・納付金等と法定給付費を合わせた、いわゆる義務的経費の保険料収入に対する割合は、94.6%。保険料収入だけでは義務的経費を賄えない100%超の組合が447組合にものぼった。
おもな収支状況
負担構造の改革が急務
 27年度予算早期集計の概要から、健保組合の危機的な財政状況が続いていることがわかった。後期高齢者支援金の総報酬割が28年度、29年度と段階的に高まり、さらに財政への圧迫が予測される。
 組合財政の改善のみならず、現役世代の負担軽減を図り、皆保険制度維持のためにも、高齢者医療の負担構造改革の実現が必要だ。実効性のある医療費適正化対策に取り組むことも求められている。