広報誌「かけはし」

■2015年4月 No.523
時評

「肩代わり」に反対する

― 国保の構造改革が先だ ―


 医療保険制度改革関連法案が3月3日、通常国会に提出された。名称は「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」となっている。
 内容は、国保法、健保法、高齢者医療確保法の改正など、医療保険制度全般にわたっている。消費税増税にともなう社会保障制度改革の検討項目と進め方を示し、一昨年12月に施行されたプログラム法に沿ったものだ。
 注目の後期高齢者支援金の総報酬割については、現行の3分の1を平成27年度に2分の1、28年度に3分の2に引き上げ、29年度から全面総報酬割とされた。
 これによって、健保組合全体では27年度から段階的に350億円、700億円、1500億円の負担増となる。逆に国費は600億円、1200億円、2400億円の削減となる。29年度には、国費削減分のうち1700億円を国保に投入するという。
 全面総報酬割で生じる国費を国保へ優先的に投入することは、国保の赤字補てんのための財源を、被用者保険の負担増で捻出する「肩代わり」の構図だ。われわれはこの方法に反対する。削減される国費は、高齢者医療への公費拡充や、現役世代の高齢者医療への拠出金負担軽減のために活用するべきだ。
 一方、拠出金負担が重い保険者の負担軽減措置の対象を拡大、法制化することも盛り込まれた。法制化は初めてのことで、国の予算措置のように不安定なものではない。これに対しては、一定の評価ができるといえよう。
 今後、拠出金負担に上限を設けるなど、疲弊する健保組合と負担増に苦しむ現役世代のために、高齢者医療の負担構造の改革を推進してもらいたい。
 法案名が示すように、今回改正の主眼は国保対策にあるのだろう。いま国保制度確立から半世紀以上経過したが、財政難は当時からの懸案事項となっている。法案では、30年度から、国保の財政運営を都道府県単位に広域化して安定させ、適用、保険料徴収、給付、保健事業など、住民に密接するサービスは、従来どおり市町村が実施することとした。
 広域化については、一昨年の社会保障制度改革国民会議報告、プログラム法、社保審医療保険部会の審議過程で方向性は出ていた。だが、国の補助金など支援のあり方が定まらず、安定運営を行う見通しがつかなかったため、全国知事会、市長会、町村会がそれぞれ、国保保険者としての運営主体を引き受けることに難色を示していた。
 健保連、協会けんぽ、連合、日商、経団連の労使・被用者保険5団体は、法案の国会提出に先立ち2月20日、「肩代わり」に対し、一致して「容認できない」との強い意見を表明している。
 国保には、年間3500億円もの市町村一般会計から国保特別会計への法定外繰り入れを解消できない問題などがある。財政苦境の健保組合など被用者保険に負担を上乗せする前に、国保の構造改革を先行させるべきだ。
  (T・M)