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医療保険制度改革案に対する評価 |
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政府が決定した医療保険制度改革案に対する健保連の総括的な評価は、大要次のとおりである。
評価できる点は、制度化対応による公費投入が、わずかだが初めて実現したこと。国の予算措置である高齢者医療運営円滑化等補助金に、前期高齢者納付金に着目した措置が入ったことである。
健保組合のなかでも、報酬が低く拠出金負担の重い組合の負担が、円滑化等補助金の拡大等によって一定程度軽減されることとなった。
入院時食事療養費、所得水準の高い国保組合の国庫補助、後期高齢者の保険料軽減特例措置など、医療費の適正化、ならびに負担の公平化に向けた課題に、不十分ながら切り込めた。
問題点としては、全面総報酬割により捻出される国費財源の7割国保転用は、「肩代わり」にほかならない。理不尽な財政調整を拡大させるもので、まったく容認できない。
制度化対応による公費投入が実現したものの、限定的である。「取りやすいところから取る」構図は変わらず、われわれが求める負担構造改革とはいい難い。
制度持続に欠かせない医療費適正化への取り組みが先送りされた。 |
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今後の主張点 |
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高齢者医療の負担構造に関する将来ビジョンを確立するとともに、改革を今後の検討課題として明確に位置づけるべきである。
消費税率10%への引き上げに合わせ、その財源を高齢者医療制度に投入し、制度対応による負担軽減措置をさらに拡充するなど、現役世代の負担軽減につながる負担構造改革に早急に着手すべきである。
負担軽減措置が実現するまでの間、団塊世代の高齢化の状況や総報酬割拡大の影響を踏まえながら、必要な予算措置を講じること。
国保の財政支援拡充については、すでに高齢者医療へ多額の支援をしている被用者保険の納得性の確保が必要である。
医療費の重点化・効率化は、持続可能な制度の構築に向けたもう一つの柱である。医療費適正化計画見直しの実効性確保、高齢者の自己負担見直し、保険給付の範囲見直しなどの課題も早急に検討し、実現を図るべきである。
短時間労働者の適用拡大については、影響の大きい健保組合に対する負担軽減措置が別途必要。任意継続被保険者、現金給付、資格喪失後給付などの見直しも、引き続き検討のうえ対応するべきである。 |
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今後の対応 |
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具体的には、今通常国会の審議期間中、われわれの主張を理解していただくため、関係国会議員を中心に要請活動を展開する。
28年度政府予算も全体的に緊縮型となり、政策経費削減の恐れがある。総報酬割拡大による負担増に対する予算措置での支援等、われわれの主張が埋没しないよう、早い段階から要求活動を展開する。
マスコミ、関係団体等に対しても、継続して改革の必要性を訴える。健保組合の存在・価値、皆保険制度維持についてアピールしていく。 |
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支払基金関係 |
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昨年の規制改革に関する第2次答申で、「保険者がまずすべてのレセプトの点検を可能とする仕組みの導入」が打ち出された。この方針に沿って1月に2回、厚労省による説明会が東京で開かれ、227組合の参加があった。
支払基金からの説明もあり、仕組み導入にともなう費用試算等が示された。
正常分娩の支払事務は、現在、国保連が取り扱っているが、支払基金の追加もいわれている。
マイナンバー制度運用のための中間サーバー設置について健保連は、これまで健保連に設置する案に難色を示していた。そうしたところ、このほど支払基金への設置が決まった。 |