広報誌「かけはし」

■2015年3月 No.522


 健保連はじめ被用者保険関係5団体は、政府の医療保険制度改革関連法案の国会提出を控えた2月20日、社会保障審議会医療保険部会で意見書を提出した。健保連、協会けんぽ、連合、日商、経団連推薦の同部会委員連名によるもの。後期高齢者支援金の全面総報酬割によって生じる国庫補助削減分を国保に優先投入する案は、国の財政責任の転嫁であり容認できない――などとした。
[平成27年2月20日 社会保障審議会・医療保険部会委員 白川修二(健康保険組合連合会副会長) 小林剛(全国健康保険協会理事長) 高橋睦子(日本労働組合総連合会副事務局長) 藤井隆太(日本商工会議所社会保障専門委員会委員) 望月篤(日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会長)]
医療保険制度改革案に対する被用者保険関係5団体の意見
 政府は医療保険制度の改革案を取りまとめ、今通常国会に関連法案を提出しようとしている。ここに至るまでの議論過程を振り返ると、被用者保険関係5団体の意見(26年5月の要望書を含む)が尊重されていないばかりか、改革骨子案に関する医療保険部会の議論も十分に深まったとは言い難い。このような経過を踏まえて、我々は、以下により、この改革案の問題点を指摘するとともに、今後のさらなる改革の実現を求めて意見を申し述べる。
1.国保財政対策、全面総報酬割関連
被用者保険における後期高齢者支援金の全面総報酬割導入(29年度実施予定)によって生じる国庫補助削減分(2400億円)の使途については、本来、被用者保険の負担軽減に活用すべきであるが、改革案は、7割相当部分(1700億円)を国保の財政対策に優先投入するとしている。これは国保に対する国の財政責任を被用者保険の負担増に転嫁するものである。我々が当初から明確に反対してきたとおり、被用者保険にさらなる負担を求める財源捻出策は容認できない。
国保財政に対しては、定率の公費負担のほか、被用者保険が負担する前期高齢者納付金等も充当されている。今後、医療費の共同負担による基盤強化策(27年度実施)に加え、改革案による保険者支援制度の拡充や都道府県単位化等による財政安定化を図りつつ、指摘されている法定外繰り入れや保険料収納など、国保固有の問題の改善を優先すべきである。
なお、全面総報酬割導入による財政影響については、中長期的な見通しを明らかにするとともに、実施後も、拠出率の上昇による負担の変動等について継続的な評価が行われることが必要である。
2.医療費適正化等
医療保険制度の持続可能性を確保するには、実効ある医療費適正化対策が不可欠である。そのために、改革案による医療費適正化計画の取り組みを強化するほか、診療報酬の仕組みの再構築、医療機関の機能分化・連携の推進、ジェネリック医薬品の使用促進、療養の範囲の見直し等により積極的に取り組み、これらを通じ、医療保険制度全体の保険料負担の上昇抑制を図るべきである。
3.さらなる改革の実現
我々は、医療保険制度改革において、高齢者のみならず、現役世代の納得性を確保することが重要であり、現役世代に過度に依存する制度を構造的に見直すべきであると主張してきた。後期高齢者医療費と前期高齢者医療費への公費投入・拡充のほか、現役世代の拠出金負担の上限設定等、負担増に歯止めをかける仕組みの導入を求めたが、改革案は、こうした要求を満たすものとは言えない。今回の改革案にとどまることなく、高齢者医療制度の負担構造の改革をはじめとして、医療保険制度全体のさらなる改革に取り組むべく、議論を継続させ、積極的に進められることを強く要望する。