広報誌「かけはし」

■2015年1月 No.520
時評

「データヘルス」で保険者機能発揮

― 加入者の健康に寄り添う ―


 各健保組合では、データヘルス計画の作成が佳境にさしかかった頃ではなかろうか。
 この「計画」づくりを進めていくと、保健事業の現状を整理、評価する場面に遭遇する。そこで、ひと昔前のラインナップとは様変わりしたことに気づく。ひと言でいえば、ハード主体からソフト主体への変化である。
 直営保養所や契約保養施設の数は減り、スポーツ施設との契約も絞られ、常備薬の配付や周年行事の健康グッズの配付といったことは昔懐かしい。
 いまは人間ドックの健診補助をはじめとする健康保持・増進や、生活習慣病予防に関する事業が中心になっており、シンプルではあるが保健事業の名にふさわしい姿となっている。
 これは高齢者医療への負担増が健保財政の硬直化をもたらし、優先度が低くかつコストが高い事業から順に整理された結果と思われる。
 こうした状況下で実施されるデータヘルス計画は、ソフト化が進む保健事業の中核に位置づけられようとしている。
 データヘルス計画により、健保組合は保有する健診データとレセプト(診療報酬明細書)データを分析することになる。そして、多種多様なデータの組み合わせによる突合が行われることによって、将来は、より深い分析も可能になり、健保組合の本来の機能発揮が期待されている。
 すでに取り組んでいる特定健診・特定保健指導も、PDCAサイクルによってより効率的、効果的に実施されていくこととなる。
 そのPDCAサイクルでは、D(実行)が一番難しい。Dについては、各健保組合の状況に応じた知恵と工夫が求められているが、個人的には、ぜひこうした工夫の部分が共有できればと思う。
 実施にあたっては、事業主(人事担当など)、加入者(被保険者、被扶養者)、医療関係者(医師、保健師、栄養士)といった方がたとの密接なコミュニケーションが必要である。
 これまでも関係者との連携がうまくいっていれば、データヘルス計画を作らなくても生活習慣病で悩む人を減少させることができたであろう。
 先般、NHKの高倉健さん追悼番組を見ていて、これかと思った。
 それは、健さんが、映画づくりを支えた、演技経験のない農民の迫真の演技を目の当たりにして「感動させることは、お金ではない。力ではない。ものではない。人を想うということがいかに美しいかということ」と語った場面である。
 このままの生活を続けていけば、将来重篤な病気になる可能性が高まる多くの人に、早く気づいてもらえるよう、その想いを伝えることこそDの本来の目的である。
 目標数値を定めることがすべてではない。数値は、これが実施できれば自ずとついてくると確信している。
  (T・N)