広報誌「かけはし」

■2014年12月 No.519
 平成26年度(2014年度)健康保険組合全国大会が11月26日(水)、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
 高齢者医療費の負担のあり方をはじめ、医療保険制度改革の論議がヤマ場を迎えている。健保組合・健保連にとっては、まさに正念場のとき。全国大会は、「皆保険を次世代へつなぐ改革実現総決起大会」との副呼称が掲げられた。
 折りしも11月21日に衆議院が解散。総選挙の投開票日が12月14日に決まり、あわただしい政治状況のなか、大会には4000人を超える健保組合関係者が参集した。大阪からは約200人が参加した。
 開会の辞、議長あいさつの後、健保連の大塚陸毅会長が基調演説を行った。
 大塚会長は高齢者医療費について、「世代間の負担として現役世代の一定の負担は必要」としながら、「それにも限界がある。このままでは支えるほうがつぶれてしまう」と健保組合の苦境を訴え、公費投入の必要性を強調した。
 また、医療費の負担と給付のあり方について、「公平性と納得性が重要」とし、政府の社会保障制度改革推進会議での中長期の改革ビジョン検討を期待した。さらに、健保組合の状況と主張を広く理解してもらうために「わかりやすく粘り強く訴えていくこと」と示唆した。
 続いて、健保連の白川修二副会長が、大会決議(下部参照)の趣旨を説明した。白川副会長は大会決議について、「健保組合の問題意識とその解決方法、具体的解決策、健保組合の姿勢・宣言をまとめたもの」と述べた。
 決議文は、参加者を代表して百十四銀行健保組合の宮武厚志常務理事が朗読。全会一致で決議を採択した後、原勝則厚生労働審議官(塩崎恭久厚生労働大臣代理)に手交された。
 このあと、厚生労働大臣あいさつ(原厚生労働審議官代読)、政党代表あいさつ(自民党・石井みどり参議院議員〔党厚生労働部会長代理〕、民主党・柳田稔参議院議員〔党企業団体対策委員長〕)、関係団体あいさつ(日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、全国健康保険協会)があった。
 日本経済団体連合会からは望月篤社会保障委員会医療改革部会長、日本労働組合総連合会からは古賀伸明会長、全国健康保険協会からは小林剛理事長が出席、力強いメッセージが寄せられた。
 大会は、クボタ健保組合の阪口克己常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    三菱健保組合 徳永一夫理事長
  議長あいさつ 北海道電力健保組合 佐藤厚理事長
  会長基調演説 健保連 大塚陸毅会長
  決議の趣旨説明 健保連 白川修二副会長
  決議 百十四銀行健保組合 宮武厚志常務理事
  厚生労働大臣への決議の手交
  厚生労働大臣あいさつ
  政党代表あいさつ 自由民主党・民主党
  関係団体あいさつ 日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    全国健康保険協会
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健保組合 阪口克己常務理事


 毎年1兆円規模で増大する国民医療費を現在の仕組みのままで支えていくことは困難であり、世界に冠たる国民皆保険制度はいま、危機的な状況に陥っている。特に、国民医療費の6割を占める高齢者医療費への現役世代の負担は既に限界に達しており、平成27 年度には団塊の世代全員が前期高齢者となり生産年齢人口も減少するため、皆保険制度を支える現役世代の負担はさらに増えることが見込まれる。
 高齢者医療費を現役世代が支援していくことは当然必要なことだが、拠出金という形で現役世代の保険料に過度に依存する現行の仕組みでは、早晩行き詰まることは確実である。現役世代とその家族3、000万人が加入する健康保険組合は、7年連続の赤字という極めて厳しい財政状況の中で、年間3兆円を超える規模で高齢者医療費の支援を行ってきた。平成20年度以降の拠出金総額は20兆7、000億円にも及び、このうえさらに負担が増加すれば、企業と従業員の保険料だけで皆保険制度を支えてきた健康保険組合の存続さえ危うい状態である。
 将来にわたり皆保険制度を維持していくためには、今後予定される消費税率10%への引き上げ時に、高齢者医療制度、特に公費の投入がない前期高齢者医療へ適切に公費を投入し、現役世代の過重な負担の軽減を図るとともに、現行の前期高齢者にかかる財政調整の不合理な仕組みの是正等を含む高齢者医療費の負担構造改革を行うべきである。今般、消費税率の引き上げは延期される方針となったが、もはや保険者の財政は待ったなしの状況であり、適切な公費投入による財政支援、また不合理な制度の是正、改正等によって、引き上げまでの間も現役世代の負担の軽減を図るべきである。あわせて、増え続ける医療費に対して重点化・効率化を行うなど、国を挙げての実効性ある医療費適正化対策を更に推進すべきである。
 全国3、000万人の健康を守り支える健康保険組合は、これからも皆保険制度の維持・発展に向け使命感を持ち、保険者機能を十分に発揮して、データヘルスへの取り組みなど医療費適正化の推進に取り組む所存である。国民の安心確保に向け、皆保険制度を守り、次世代へつなぐために、次の事項の実現を期し、組織の総意をもってここに決議する。
一、前期高齢者医療への公費投入の実現
一、高齢者医療費の負担構造改革と持続可能な制度の構築
平成26年11月26日
皆保険を次世代へつなぐ改革実現総決起大会
平成26年度 健康保険組合全国大会

会場で多彩な催し
 全国大会当日、多彩な催しが行われた。大会終了後、会場内で「あしたの健保プロジェクト」の一環で特別制作のVTRが放映された。内容は、著名人・タレント、一般の方による健保組合へのエール、現役世代の重い負担に関する街頭インタビュー、保険料シミュレーターによる試算の模様など。
 当日あいにく雨天のため、場所を会場内に変更したトークイベントには、元大リーガー・田口壮氏、プロゴルファー・古閑美保氏が出演。自身の体験談を交えて、健康管理や健康づくりのたいせつさを語った。
広報活動を活発に展開
 一方、全国大会の開催に合わせて、広報活動が盛んに展開された。日刊紙への意見広告は、大会当日に読売・朝日の朝刊にカラー全1面で。大会前の11月21日には、日経に白黒全1面を掲載。大会前日の読売「論点」に大塚会長の寄稿記事を掲載。テレビCMは、11月中旬から大会当日まで集中放映された。
 東京都内では、地下鉄駅構内にポスターを掲示。大会当日までの1週間、アドトラックが山手線内主要地区を巡回し、全国大会と健保連の主張をアピールした。
 全国大会後には、経済誌などへ大塚会長と経団連の斎藤勝利副会長の対談記事が掲載された。
当日の要請活動は中止
 急きょ衆議院の解散・総選挙となったため、予定していた大阪連合会による全国大会後の国会議員等への要請活動は取りやめになった。前職議員の多くは東京・永田町の議員会館を不在にしていることなどによる。本格的な要請活動は、総選挙後の各党勢力や政府の新体制確定後、あらためてスタートすることになる。

決議文を手交 全会一致で大会決議
司会・大阪連合
主事
クボタ健保組合
阪口常務理事
会場内風景
アドトラック トークイベント 大阪連合会受付