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「食」によるメタボ予防の実践

〜現代日本人の食生活改善ポイント〜 |
10月28日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。同志社大学大学院 生命医科学研究科 市川 寛教授が「『食』によるメタボ予防の実践〜現代日本人の食生活改善ポイント〜」をテーマに講演されました。参加数は、57組合・77人。(以下に講演要旨) |


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市川 寛 氏 |
現在の日本は世界一の長寿国であると同時に、その高齢化の速度も世界で最も速い国の一つとされている。米国などと同様に日本においても、医療も含めた健康管理関連の費用は年々莫大な増加率を示しており、将来的に若い労働世代への経済的負担が増加していくことが避けられないと予想されている。
耐糖能異常であっても、生活習慣の改善により2型糖尿病の発症を抑えられる可能性が報告されているにもかかわらず、日本における糖尿病が強く疑われる人は増加の一途をたどっている。
不適切な生活習慣は、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病を引き起こすばかりでなく、加齢にともなう老化を加速させることはよく知られており、生活習慣の改善、すなわち、栄養療法、運動療法、精神療法などの生活療法が、内臓脂肪型肥満に注目したメタボリック症候群の発症予防の基本になるといわれている。
なかでも、栄養療法、食事療法が非常に重要な役割を果たすと考えられており、江戸時代からすでに貝原益軒の「養生訓」のなかに食養生のことが書かれているように、日本人は昔から食生活を通して「健康長寿」に大きな関心を示してきた。
さらに現代では,日本国民の健康志向の高まりも後押しをし、食品の持つ機能性が注目され、日本から世界に発信された機能性食品の研究は急速な発展を遂げている。
メタボリック症候群予防に効果がある栄養素としては、老化の成因に酸化ストレスが強く関与していることもあり、その多くが、抗酸化作用を持つ物質で占められており、機能性食品として研究が進められている。
これら機能性食品は、さまざまな生体調節機能を示しうるものであるが、その概念から分類すると、一つは「免疫能」を調節するもの、もう一つは前述の「抗酸化」に働くもののうち、@いわゆる抗酸化ビタミンのように、化学的に酸化側に傾いたものを戻す「酸化還元制御」にかかわるもの、A抗酸化酵素や解毒酵素を高める「酵素」にかかわるもの、Bさまざまな原因による遺伝子の損傷に対する「遺伝子修復」にかかわるものである。
さらに、これらがん予防に密接にかかわる「免疫能」「抗酸化」のみならず、近年は、「脳機能」にかかわるものも重要になってきており、認知症だけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病、また、黄班変性や白内障などの感覚器領域の疾患を標的とした機能性食品の登場が期待されている。
第2次世界大戦前から戦後のある時期までは、「栄養をとる」ことが健康・長寿に直結する時代であった。なぜなら、戦後から1980年代においては、健康で長生きするために重要なことは結核などの感染症対策であり、栄養が十分であるなら免疫力で細菌やウイルスから身を守ることができたわけである。
しかし、現在の日本は、その疾病構造の変貌からしても、以前とは状況が変わってきている。日本を除いた世界の先進国は、すでに日本型食事の知恵を自らの食生活に取り込み、積極的に生活習慣病予防に挑んでいるようである。日本独自の予防医学を確立させるとともに、将来の健康長寿日本を実現させるための、機能性食品研究の進歩が問われる時代となっている。 |
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