広報誌「かけはし」

■2014年12月 No.519


「笑うからだに福来たる?!」

 11月19日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。福島県立医科大学 医学部 疫学講座 広崎 真弓 助教が「笑うからだに福来たる?!」をテーマに講演されました。参加数は、37組合・46人。(以下に講演要旨)
 

 

広崎 真弓 氏
はじめに
 日本には、「笑うかどには福来たる」ということわざがあります。でもよくみると、逆ではないかと思われませんか。普通は、楽しいことやおもしろいことがあるから笑うはずですが、ことわざでは笑うといいことがある、となっています。いったい、笑うとどんないいことがあるのでしょうか。
心とからだの関係
 近年、笑いが健康によい影響をもたらすのではないかと注目されつつあります。その発端となったのが、いまから40年くらい前、アメリカの有名な雑誌の編集長であったノーマン・カズンズ氏が発表した自らの闘病体験です。
 彼は、全快の見込みが少ないと宣告された病気の治療にあたり、ポジティブな感情の効果に注目し笑いを取り入れたのです。その発想はこれまでになく、世界中の注目を集めました。というのも、イライラしたりふさぎ込んだりといったネガティブな感情がからだに悪影響を及ぼすという研究報告は当時もあったのですが、ポジティブな感情の効果については誰も考えていなかったのです。
 最近では、ポジティブな感情と健康との関連についても研究が進んできており、ポジティブ感情が多い人の方が長生きするという報告もあります。
 皆さんの普段の生活のなかでも、心とからだのつながりを感じる機会があるのではないでしょうか。たとえば、血圧をお家で測ったときより病院で測ったほうが高くなるという方がいらっしゃると思います。白衣高血圧という言葉があるくらいで、医師や看護師を見ると緊張して血圧が高くなる場合があるといわれています。もし、ものすごいイケメンの医師だったり超ミニスカートの看護師だったりしたら、さらに血圧が上がってしまうかもしれません。
笑いと健康
 ノーマン・カズンズ氏がまず気づいたのは、笑いの鎮痛効果だったそうです。関節の痛みのために眠れなかったのが、コメディー映画などを見て10分間ほど大笑いした後は痛みが少し和らいで眠れたそうなのです。
 それ以降さまざまな研究が行われて、楽しく笑うことに鎮痛効果や、ストレス解消効果があること、免疫系のバランスを整えたり、アレルギー反応を和らげたり、糖尿病の患者さんの食後血糖値の上昇を抑えたりする効果があることなどが報告されています。
笑いを増やすには?
 笑いが健康にいいのなら、日常生活で笑いを増やせたらいいですよね。とはいえ、毎日たくさん笑うというのは案外難しいものです。実際、高齢者の方を対象とした調査で笑いの頻度についておうかがいしたことがあるのですが、一日中まったく笑わない日があるという方が3割ほどいらっしゃいました。
 そこで、最近注目されているのが笑いヨガです。インドの医師が考えた、おもしろいことなしにエクササイズとして笑う健康法なのですが、いまや世界中に広まっているそうです。
 最後に、笑いを増やす「さしすせそ」をお伝えしようと思います。まず、「さがす」。なにかおもしろいことはないかなと探す姿勢が大切です。「しゃべる」。やはり笑いは会話から。「好き」なことやものを見つける。「世間」に関心を持つ。そして、「外」に出る。もしくは「空」を見る。視線が上がるだけでも少し気分が前向きになります。
 ぜひ、普段の笑いを増やして、「笑うからだに福来たる」を目指していただけたらと思います。

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