広報誌「かけはし」

■2014年12月 No.519
時評

再度提言する「高齢者医療拠出金の是正」

― 難解な算定式の見直しも含めて ―


 また予算編成の時期がやってきた。悩みのタネは今回も同じ。前期高齢者納付金と後期高齢者支援金の捻出対策だ。拠出金が二の次とはいわないが、健保組合の予算は本来、主として加入者のための医療給付や健康づくり、医療費適正化のための施策に充てることにありはしないか。
 毎年、予算編成にあたり、手引書というべき冊子(A4判・240ページほど)が配付される。そのうち数十ページが割かれ、拠出金の算定式がズラリと記載されている。目いっぱいのボリューム。複雑な加減乗除。式の一つずつを詳しく理解する関係者は、ごくわずかに違いない。
 算定式によって健保組合が支出する拠出金が決まる。新年度から、徴収機関である支払基金へ拠出金を分納することになる。平成26年度予算の拠出金は、全国1410健保組合の合計で3兆3155億円に達した。法定給付費が3兆8061億円であり、「本末転倒」となるのも近いだろう。
 拠出金の約半分を占める前期高齢者納付金については、保険者ごとの前期高齢者加入率の高低などにより財政調整された後、加入率の高い市町村国保に、前期高齢者交付金として交付される。市町村国保全体で前期高齢者交付金は、すでに保険料(税)収入を上回るという異常な様相を呈している。
 ところで、高齢者医療費の負担構造の見直し問題は、社会保障審議会医療保険部会で議論が行われている。
 健保組合財政に大きく影響する拠出金の見直しに関して、同部会での意見とりまとめの方向性は、2巡目の議論の段階では次のようになっている。
 ▽後期高齢者支援金の全面総報酬割化 ▽前期高齢者にかかる後期高齢者支援金の算定方法の変更(被用者保険者の前期高齢者加入率を加味して調整) ▽段階的な全面総報酬割実施、負担増となる保険者に対する軽減措置導入――などだ。
 厚労省によると、健保組合全体への影響額は、現行(3分の1総報酬割)と比較して、全面総報酬割の導入で1300億円増。さらに算定方法の変更で200億円増。1年間で合計1500億円の負担増となる。
 全面総報酬割で負担増となるのは、27年度推計では899健保組合。そのうえ、算定方法の変更によって、負担増となる健保組合がさらに増える。
 健保連は、「前期高齢者医療への公費投入を、納付金算定式の変更など制度見直しにより実現すべき」「後期高齢者支援金への全面総報酬割導入は、削減される国費を高齢者医療費の負担構造改革の財源として活用することを条件とする」と主張している。
 一方、経済3団体は10月下旬、健保連と同調するように、「医療保険制度改革への要望」を公表した。このなかで高齢者医療費の見直しについて触れ、「現役世代から高齢者医療への拠出金負担がすでに過大であることを踏まえるべきである」と、安易な制度改革に対してクギを刺した。
 政府は、医療保険部会での意見とりまとめをもとに、医療保険制度改革関連法案にまとめ、年明けの通常国会に上程する予定。われわれは制度改革にあたり、健保連の主張実現を強く願うところだ。
  (T・M)