市町村国保は、年齢構成が高く医療費水準が高いことや、所得水準が低いことなどの構造的な問題をかかえている。
厚労省によると、65〜74歳の割合が32.9%(健保組合2.5%)、1人あたり医療費が30.9万円(健保組合14.2万円)。加入者1人あたり平均所得が83万円(健保組合198万円〔推計〕)、無所得世帯割合が23.7%。保険料(税)収納率が89.86%(速報値)と低い――などがある。
このため、市町村国保は構造的な赤字になっている。平成24年度の収支状況(全国計)をみると、国庫支出金、保険料(税)、ならびに被用者保険からの納付金が原資の前期高齢者交付金の3科目で、収入のほとんどを占めている。
それでも実質的な単年度収支差は3055億円の赤字。決算補てんなどのための一般会計繰入金3534億円により、かろうじて均衡を保っているのが実情だ。
都道府県別に一般会計からの法定外繰入金額をみると、最も多いのが東京都で1102億円。次いで神奈川県368億円。3位は大阪府で258億円。以下、埼玉、愛知、千葉の各県が続いている。大都市をかかえる6都府県での繰入金合計が2353億円で、全体の3分の2を占めている。
これらの都府県では総じて、無所得者が多く、保険料(税)収納率も低い。大阪府の収納率は87.76%で、東京都(85.63%)に次いでワースト2だ。
市町村の一般会計の原資は、住民の税金。したがって、国保の法定外繰入分は、正当に保険料(税)を支払っている国保被保険者には、二重の保険料負担になる。健保組合など被用者保険に加入する住民(=サラリーマン)からみれば、自分の保険料以外に国保被保険者の保険料の一部まで負担することになる。
5月19日の社会保障審議会医療保険部会(部会長=遠藤久夫学習院大教授)では、健保連の白川副会長が法定外繰入について、「健保組合など被用者保険では、保険財政の赤字に対しては積立金をとり崩すか、保険料率を引き上げるしかない。国保に『繰入』という方法があること自体問題ではないか」と質した。
また、「国保は保険制度である以上、あくまで保険料でどう賄うかというのが最優先であるべき」と指摘した。
同日、健保連はじめ被用者保険関係5団体は、国の財政責任を被用者保険に転嫁する後期高齢者支援金の全面総報酬割には断固反対、と一致要請している。
これまでにも、前期高齢者の医療費に対する財政調整などによって国保救済策が図られた。しかし、当面の財政対策にしかならず、根本的な国保安定化には至らなかった。
一方、現段階で市町村と都道府県は「広域化は財政構造上の問題解決が前提」と、国保の保険者を引き受けることに、どちらも難色を示している。重荷になっているのは高齢者の医療費。思い切った公費の投入・拡充が必要だ。 |