■2014年7月 No.514
皆保険制度 最後の砦
『あしたの健保プロジェクト』
これからの半年は、健保組合にとって、いままでにない大切な半年になるだろう。それは、来年初めからの通常国会に提出される医療保険制度改革法案の中身がこの半年で決められるからである。
ご承知のとおり、皆保険制度を支える中核であるべき健保組合は、未だかつてない存続の危機にさらされている。
世界一の超高齢社会といわれるいま、最も重要な課題は、増加の一途をたどる高齢者医療費を、「どこが、誰が、どう負担していくのか」という問題である。
もちろん、これまで日本を支え、発展に尽くされてきた方がたの医療を支援するのは、国として国民として当然の責務である。これまでも高齢者の医療費を現役世代が支える構造で皆保険制度が成り立ってきた。
ただ、数十年前の制度設計の段階といまでは、人口構成はもちろん、前提条件が大きく異なっている。高齢者は増え続け、現役世代は減少し続けている。増加する医療費を保険料率アップ、積立金の取り崩しで賄ってきたが、もはや限界である。
2008年度(平成20年度)からの高齢者医療制度は、健保組合をはじめ、保険者にあまりに過重な負担を強いる制度となっている。事業運営を阻害し、解散せざるを得なくなる状況に追い込むようなしくみは、なんとしても改善されなければならない。
大阪の健保組合の現状をみても、300〜800億円という巨額の経常赤字が、08年度から7年間ずっと続いている。この3年間で保険料率を引き上げたのは、12年度88組合、13年度64組合、14年度55組合にのぼり、2年連続して引き上げている組合もある。
この財政悪化が続く原因が、高齢者医療制度への拠出金の増加にあるのは明白だ。保険料収入に対する拠出金の割合は45%になっている。もはや保険と呼べるような状況ではない。
このタイミングで健保連から『あしたの健保プロジェクト』が発信された。
15年10月に予定されている消費税率の引き上げはラストチャンスであり、まさに正念場である。医療保険制度の一番のポイントである高齢者医療制度。とりわけ前期高齢者医療への公費投入を実現しなければ、われわれ健保組合はもたない。現役世代が負担に押しつぶされ、皆保険制度そのものが崩壊してしまう。
本質的な制度改革のためには、国全体を動かす大きなエネルギーを創り出していかなければならない。健保連を中心に有力な政治家へ直接、要請活動を行うことや、マスコミへの働きかけを強めることが重要だ。
それと合わせ、自らの健保組合の事業主や加入者に高齢者医療制度の問題点、課題を理解してもらい、われわれの主張、要求が大きな声となって響き渡るようにならなければ制度改革は実現しない。
改革のラストチャンスに、『あしたの健保プロジェクト』をシンボルとして、それぞれの健保組合、健保連、大阪連合会が一層結束して世論を動かし、改革の実現と皆保険制度の将来に向けた道筋がつけられるよう、全力を尽くしたい。
(K・H)