広報誌「かけはし」
 
■2014年4月 No.511
時評

特定健診・保健指導の充実を

― 分析踏まえて保険者機能を発揮する ―


 特定健診・特定保健指導制度が7年目に入った。創設当初、「メタボ」ということばが耳新しく、話題になった。けれども、いまでは国民の間にすっかり定着した観がある。
 実施状況を厚労省の発表資料でみると、次のようになっている。
 平成23年度の確定データによると、医療保険者全体の特定健診実施率は44.7%。このうち健保組合は69.2%(単一組合71.3%、総合組合65.0%)。これは共済組合(72.4%)に次いで高く、協会けんぽ(36.9%)、市町村国保(32.7 %)より数段高い。
 健診結果にもとづく特定保健指導実施率は、全体では15.0%。このうち健保組合は16.7%(単一組合20.5%、総合組合8.9%)だった。
 制度創設当初の目標値は、特定健診実施率が単一組合80%、総合組合70%、特定保健指導実施率が45%であり、健診、保健指導ともに及ばない。
 目標値については、当初から、高すぎるのではないか、との指摘があった。しかし、苦しい財政状況のなかにあって、真面目に取り組み、徐々にだが着実に実施率を上昇させた健保組合に対して、高い評価をする関係者も多い。
 特定健診・特定保健指導制度は、第2期事業の2年目に入ったが、これまでの実施過程で、課題がみえてきた。
 その1つは、がん検診と、特定健診の一体的実施の問題だ。当初、とくに国保サイドで戸惑いがあった。そこで行政当局は、がん検診と特定健診の同時実施体制による受診促進の協力依頼を、あらためて各保険者あてに要請した経緯がある。
 もう1つは、被扶養者の受診率の伸び悩みである。これについては、職域を主体にして成り立つ健保組合の手が回りにくい部分でもある。
 しかし、新しい試みとして、事業主の理解により家族を招き、健診・保健指導を行うケースなども出てきており、健保組合での創意工夫も始まった。
 この制度の主目的は、「生活習慣病のリスク要因の減少と、生活習慣病に起因する医療費の減少」にある。(厚労省「円滑な実施に向けた手引き」基本的事項より)
 健診・保健指導双方の受診率を向上させることは、中高年の被保険者・家族に、生活習慣改善のための行動変容を起こさせる機会〈チャンス〉を増やすことにつながる。
 健保組合は事業主の協力を得やすいため、より効率的・効果的な対策の企画ができる。まさしく保険者機能を十分に発揮できる組織が健保組合といえる。
 折しも、厚労省の「23年度の実施状況」の資料発表と同じときに、健保連本部から24年度の実施状況速報版が出された。
 これはデータ提供731組合のまとめであり、単一・総合組合別、被保険者・被扶養者別、業態別などの数値が示されている。全健保組合の数値ではないため、傾向値のみの把握となるが、厚労省資料より、速報性と詳細さにおいて圧倒的に優れている。
 この資料を活用して、自組合の状況と突合分析を行うなど、深掘りすれば、一歩踏み込んだ取り組みが進められよう。今後、「データヘルス」の実施にも役立つに違いない。
  (T・M)