■2014年1月 No.508
平成25年度 健康保険組合全国大会に想う
〜 新春に『二兎を追う』のも一考 〜
昨年11月22日に、健康保険組合全国大会が開催された。大会は「改革の実現と健康保険組合の存続なくして皆保険の維持なし!」の副呼称を掲げ、盛会だった。
この大会にあわせて作成し、日刊紙に掲載した意見広告「ピラミッドとは呼べない、2020年の日本の『人口ピラミッド』。」を目にされただろうか。まだご覧になっていない方は、ぜひ見ていただきたい。日ごろ、われわれ健保連がいう「1人が1人を支える肩車社会」が確実に迫りつつあることを、まざまざと実感されることだろう。
今回の大会は、例年にも増して"健保存続の危機"を訴える言葉に満ち満ちていた。平井健保連会長の基調演説によれば、「消費増税の機会を逸しては、持続的な皆保険制度への道が断たれる」という、まことに由々しき事態にある。
とくに強く感じたのは、「皆保険の維持なし」との言葉だ。これまで主張は、さまざまにスローガン化されてきたが、組合健保の枠組みを超えた「皆保険」に言及することは異例である。国民皆保険を支えているのは健康保険組合であるという、強い自負の表れでもある。
他方、その皆保険が本当に崩れるかもしれないという、切羽詰まった危機感の表れともいえよう。
本年度に入って、すでに11組合が解散したという。われわれに課せられた高齢者医療拠出金が、国保や後期高齢者への交付に充てられている以上、健康保険組合が減少を続ければ、いつか国民皆保険は崩壊する。いま1419組合ある健康保険組合が、果たしてどれほど減少すれば、国民皆保険が破綻するのか、それはいつか。われわれは、すでにその崩壊の予兆を感じとっているのかもしれない。最大で1800組合超あった健康保険組合が、いま400減ったわけである。「それでも健康保険組合は保っている」と行政が断じるのであれば、それはあまりに短絡的ではないか。
今年の消費増税の機会を逸して、次なる社会保障改革の機会を待つのか。それは来年なのか、10年先なのか。いびつな『人口ピラミッド』を見る限り、このままでは、10年後は皆保険の姿をとどめ得ないであろう。
一方、特別企画・講演で田ア史郎氏(時事通信社解説委員)は示唆に富んだ提起をされた。とくに医療費増加の問題点への言及には興味深いものがあった。ジェネリック医薬品と新薬との薬価差を縮小することについて、そして医療用医薬品の薬価のあり方の検討について、この2つが医療費削減への近道だと断じられた。確かに新薬のジェネリック並み薬価設定にも、6兆円を超える医療用医薬品についての薬価改定にも、大きな障害がともなうであろうが、検討に値する問題提起であり、高齢者医療への公費投入を声高に叫ぶことと同様、重要な課題だと感じた。
実現の可能性は低くとも、「理」を大上段に振りかぶって声高に叫ばねばならないこともある。しかし、大向うを唸らせる努力をする一方で、緻密にコツコツと具体的な施策を講じることも必要ではあるまいか。
硬軟あわせ持つ強靭さとでもいおうか。いまのわれわれに求められているのは、高く目線を上げて将来を見据えるのと、あわせて足下の小さなことを拾い集め、具体像を結ぶという2つの力であろう。主張するのはいい。しかしながら主張倒れに終わらぬよう、次善の策を着実に講じておくのが、求められる資質なのだと思うのである。
平成23年度の国民医療費は、とうとう38兆6000億円となった。一年の計は元旦にあるという。年の初めに、新たな発想で『二兎を追う』のもいいかもしれない。
(K・M)