広報誌「かけはし」
 
■2013年12月 No.507
時評

医療の効率化・重点化推進を

− 次期診療報酬改定に望む −


 来年4月実施予定の診療報酬改定の議論が、中医協(中央社会保険医療協議会)で進んでいる。診療報酬は、通常2年ごとに改定されるが、今回改定は、消費税率引き上げ分の取り扱いもあって、一段と複雑化している。
 改定率は、年末までの国の予算編成過程で、内閣が決定する。消費税率アップ分とセットで改定率を示すのは、今回が初めてのことだ。
 改定率決定から4月改定実施までのスケジュールは、次のようになっている。まず、社会保障審議会・医療部会ならびに医療保険部会が策定した「改定の基本方針」にもとづき、厚生労働大臣が中医協に、診療報酬点数等の改定案を諮問。続いて、中医協が、改定率の範囲内で診療行為などの個別具体的な評価・適正化策を検討して、来年2月中旬ごろに改定を答申する。
 その後、厚生労働大臣が、改定に必要な告示・通知などを発出。そして4月診療分から実施の運びとなる。
 もともと社会保険診療は非課税だ。けれども、医療機関が投資した設備・機器や医療材料の仕入れには消費税負担が発生する。そこで、平成元年の消費税3%導入時、さらに平成9年の5%への引き上げ時には、診療報酬に消費税相当分がそれぞれ上乗せ手当された。
 中医協での議論のなかで、診療側は、これまで医療機関が負担した消費税は、診療報酬の補てん額を上回っていると主張している。一方、健保連はじめ支払側は、診療報酬を引き上げること自体疑問とし、意見は大きく隔たっている。
 支払側は、賃金・物価の伸びに対応した診療報酬改定を望んでいる。財政制度等審議会の資料によれば、平成11年を100としたときの平成23年度の指数は、民間賃金・物価ともに100を割っているのに対して、医師給与は115に上昇している。"失われた20年"と指摘されるなかで、医療界だけ世間外れの突出でいいはずがない。
 今回の改定は課題が多い。「入院医療」では、急性期病床の機能の明確化や長期入院の是正。「外来医療」では、大病院・中小病院・診療所など施設の機能分化・連携の促進。「在宅医療」のさらなる推進―など、医療提供体制に関する事項が懸案としてあがっている。
 このうち必要不可欠な部分は相応の報酬とし、ムダな部分は大胆に切り込む対策がほしい。
 「超高齢社会や医療高度化のため、毎年1兆円ずつ医療費がかさむのは当然」という意見が片一方にある。しかし、医療の効率化と重点化をいっそう進めることによって、限りある医療費資源の有効活用を図ることこそ、消費税率を引き上げ国の財政健全化を図ろうとするいまの時期、最も重要なことではないか。
 審議の山場を迎えた中医協は、来年2月の答申まで週2回のペースで開かれる予定。審議の行方に注目したい。
  (T・M)