■2013年9月 No.504
いまこそ耳障りな政策の選択を!
− アベノミクスの次は? −
社会保障制度改革国民会議の設置期限8月21日が過ぎた。結果はいかに?
国民会議の報告書によると、主な改革案は「国民健康保険運営の都道府県単位化」「70〜74歳の医療費自己負担の段階的な2割適用」「後期高齢者医療制度の負担面での全面総報酬割の導入」などとしている。
負担のあり方は「年齢別」から「負担能力別」に切り替えるとし、高齢者にも応分の負担を求めるというが、これで将来にわたって皆保険制度の持続性を担保できるのだろうか。いかにも踏み込みが足りないといわざるを得ない。
とくに健保組合に直接関係があるものをみる。
全面総報酬割の導入。これまでも案として出てきているが、いうまでもなく、またさらに多くの健保組合の負担増大につながる話である。
70歳以上の患者負担については前進がみられそうだが、そもそも差額の1割分は公費負担であったため、2割負担にしてもその分が直接健保財政にプラスに働くわけではない。ただし、今後の医療費の節減につながることなので、早急に実行に移してもらいたい。
今回の報告書の最大の問題は、健保連が強く主張してきた「現役世代の負担軽減のための高齢者医療全体に対する公費5割投入」など、健保組合の負担軽減のための具体的な措置に関しては触れられていないことである。
5月に健康保険法等一部改正法等が成立し、協会けんぽへの国庫補助率16.4%、後期高齢者支援金の3分の1総報酬割を平成25年度、26年度と2年間延長などが確定した際には、附帯決議が採択されている。それには「高齢者医療制度に係る保険者間の負担調整について現役世代の負担が過大なものとならないよう、公費負担を充実する」とある。この附帯決議が形骸化するようなことが決してあってはならない。
さて、国民会議が報告書を提出した以上、あとは政府の強いリーダーシップに期待したい。
現政権は連日アベノミクスを連呼し、もっぱら経済面での政策アピールでリーダーシップを発揮している。一方で、いまの社会保障制度の課題は経済成長だけで払拭できるとは思えない。現状のわが国の社会保障制度は財政的に事実上、破綻をきたしている。まずは消費税を財源とした公費投入と高齢者の給付削減をすべきであろう。
世界に冠たる国民皆保険制度である。われわれの子や孫の世代がこれからも安心して暮らしていくためには、いまこそ耳障りな政策であっても、あえてその選択を望む。それも一刻も早く。
「アベノミクスの次はアベ****です。社会保障制度を抜本的に改革します!」という政策を心待ちにしている。
(M・I)