広報誌「かけはし」
 
■2013年9月 No.504


 社会保障制度改革国民会議(会長=清家篤・慶応義塾長)は8月6日、社会保障制度改革推進法にもとづく報告書を安倍晋三首相に提出した。報告書は、自助・共助・公助の最適な組み合わせによる社会保障制度の構築を強調。「21世紀型(2025年)日本モデル」をめざし、これまでの「年齢別」から「負担能力別」の考え方への転換を求めている。この報告書に対して、健保連の平井克彦会長は8月7日、次のとおりコメントを発表した。

平井会長コメント
社会保障制度改革国民会議の報告書について
 このほど、社会保障制度改革国民会議において報告書がまとめられたが、その内容には、国民皆保険と高齢者医療を支えるための拠出金負担に苦しんでいる健保組合の厳しい財政状況に関する認識がまったく感じられない。改革への大きな期待を裏切るものであり、健保連として、到底、納得できるものではない。
 国民会議は、社会保障制度改革推進法にもとづき、医療、介護、年金、少子化対策の4分野の改革について議論してきた。このうち医療については、今後も増え続ける高齢者医療にかかる費用負担のあり方を見直し、持続可能な制度への再構築を図ることが最重要課題であったはずだが、この問題について、議論が尽くされず、将来展望につながる具体策は見出されなかった。
 かねてより健保連は、高齢者医療制度の持続性を担保するためには、とくに前期高齢者医療への公費投入・拡充が必要と訴えてきたが、結果として、報告書に反映されなかったのは極めて残念である。併せて、伸び続ける医療費の効率化、適正化のために諸策を講ずることも求めてきたが、70歳から74歳の患者負担の見直し等、一部、方策が見られるものの、充分とは言えない。
 また、後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入によって削減される国庫財源を、被用者保険ではなく、国民健康保険の財政補填のために転用するといった方策が、強い反対意見があったにもかかわらず、報告書に打ち出された。これは、現在すでに、国保のために過重な財政負担を強いられている被用者保険に対して、さらなる負担増を求めるものである。国保財政の分析と改善の努力が不十分なまま、国の財政責任を被用者保険に転嫁する方策は、国民の理解を得られるはずもなく、強く反対する。
 今後、この報告書の内容を踏まえた法制上の措置が講ぜられることになるが、政府・与党においては、現役世代の負担軽減、持続可能な制度への再構築につながる真の改革の実現に向けた熟慮を求めたい。その際、本年通常国会の健康保険法等一部改正法の審議で採択された「附帯決議」の趣旨を尊重し、過重な拠出金負担の軽減を実現されることを改めて強く要請する。

社会保障改革の骨子
政府が閣議決定法案策定へ
 政府は8月21日、社会保障制度改革推進法にもとづく「法制上の措置」の骨子について閣議決定した。社会保障制度改革国民会議の審議結果を踏まえたもの。医療、介護、年金、少子化対策の4分野についての今後講ずるべき措置などを骨子にあげた。国民会議の報告書のエキスを反映したかたちになっている。
 医療保険制度に関しては、財政基盤安定化措置として、@国保財政支援の拡充、A都道府県化を見据えた国保運営適正化、B費用負担に関する被用者保険者間の共同事業の拡大―をあげた。
 また、保険料にかかる国民負担の公平確保策として、@低所得者の保険料負担の軽減、A被用者保険者の後期高齢者支援金のすべてを総報酬割とする、B国保組合に対する国庫補助の見直し、C国保保険料の賦課限度額、被用者保険の標準報酬月額上限の引き上げ―を明記した。
 このほか、70〜74歳の一部負担金、高額療養費、外来・入院給付―の見直しをあげている。
 これらの措置の実施状況を踏まえ、高齢者医療制度のあり方などについて、必要に応じ見直しに向けた検討を行うものとしているが、具体策の記載は避けた。
 骨子では、以上の必要な措置を平成26〜29年度までを目途に順次講ずるとし、法改正が必要であれば27年通常国会に法律案を提出することをめざしている。
 医療保険制度以外の医療関連事項については、健康管理や疾病予防など自助努力を行うインセンティブを持てる仕組みの検討、事業主・自治体・保険者など多様な主体による保健事業の推進、後発医薬品の使用促進、外来受診の適正化をあげた。
 さらに、病床機能の分化の推進、地域の医師・看護職員の確保と勤務環境の改善、医療法人間の合併に関する制度等の見直しを盛り込んだ。これらは、次期医療計画の策定時期の平成30年度を見据え、それまでに必要な措置を講ずるとした。