広報誌「かけはし」

■2013年8月 No.503

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1) 政治・経済の動向

 社会保障と税の一体改革関連8法は、通常国会が延長されたなか紆余曲折を経て平成24年8月10日に成立した。一体改革によって、社会保障の安定財源として消費税の引き上げ、社会保障の充実強化が謳われているが、高齢者医療制度の見直しなどの諸改革は国民会議での議論に委ねられることになった。
 平成24年10月には第3次野田内閣が発足し、厚労相に三井辨雄氏が就任、「社会保障制度改革推進法により設置された国民会議は、三党合意に基づき早急に立ち上げ推進する」との姿勢を示したが、結局野田政権下では、2回の開催に止まった。
 そして、平成24年12月16日の衆議院選挙では自民党が圧勝し、特別国会では自民党の安倍総裁が首相に指名され、自公連立による第2次安倍内閣が発足した。厚労相には田村憲久氏が就任、持続性のある医療・介護保険制度を構築することを重点課題にあげた。
 また、安倍首相は平成25年2月28日の施政方針演説の中で、持続可能な社会保障制度を構築する決意を表明した。少子高齢化が進むなか、社会保障・税一体改革に基づく消費税率引き上げを念頭に、安定財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた制度を構築すると述べた。社会保障制度の基本的あり方は、個人の自助・自立を第一に、これに共助と公助を組み合わせていくとしている。
 平成25年3月になり、健保法等改正案が国会に提出された。内容は、被用者保険間の後期高齢者支援金の3分の1総報酬割と、協会けんぽの国庫補助率16.4%に引き上げる特例支援措置を25、26年度2年間延長するもので、健保連は「国の財政責任を肩代わりさせるものとして極めて遺憾であり断固反対する」との会長コメントを即時発表した。
 一方、新政権は、経済の再生・震災からの復興・危機管理の徹底を最重要課題とし、アベノミクスと呼ばれる経済再生策では、大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢として推進する方針をかかげ、国民の期待を担って滑りだした。各政策は様々な考え方が交錯しているなか、市場でも一定の評価をされ、株価の上昇・円安傾向など、先行きの見通しも持ち直し、企業マインドも改善しているといわれているものの、財政赤字をはじめとする難題は依然山積しており、予断を許さない。

 (2) 社会保障制度改革国民会議と三党実務者協議

@ 社会保障制度改革国民会議
   社会保障制度改革推進法の規定に則し、年金・医療・介護・少子化対策の4分野の改革を集中審議する国民会議が、平成24年11月に発足し、平成25年8月21日までに法制上の措置を講じることとなっている。政権交代を経て、経済団体・医療関係団体・保険者団体・地方団体など、各関係団体からのヒアリング、意見交換など議論され、健保連は4月4日に国民会議で意見表明を行った。焦点となるのは、高齢者医療制度と年金の改革であると考えられ、議論の成果を期待したい。
A 三党実務者協議
   平成24年6月、今後の公的年金制度、高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について3党間で合意に向け協議するなど3項目につき確認した。協議は継続されて、政権交代後も社会保障制度改革の議論が行われてきているが、自民党は高齢者医療制度の維持改善、民主党は制度廃止を主張して噛み合わず、また年金制度も方向性を見出せないままで平行線が続いている。

 (3) 健保連の主な活動状況

@ 民主党・厚労省に平成25年度予算要望
   平成25年度政府予算概算要求に向けた個別要望事項を24年6月、民主党・厚労省に提出した。内容は、高齢者医療制度の抜本改革が実現するまでの間、健保組合に適切な財政支援策を講じること、また70〜74歳の自己負担割合を早期に2割とすることなどを要望した。
A 民主党・自民党へ制度見直し等要望
   平成24年5月・8月に民主党厚生労働部門会議に、前期高齢者を含む高齢者医療制度への公費投入・拡充や、70〜74歳の2割負担の早期実施などを要望した。また9月には自民党の厚生労働部会医療委員会に過重な拠出金負担に対する財政支援の拡充などを要望した。
B 臨時総会で会長に平井克彦氏再選
   平成24年4月、就任の挨拶で平井会長は「社会保障・税一体改革の対応を最重視し、消費税率8%への引き上げと合わせて高齢者医療制度への公費拡充を強力に要望していく」と決意を表明した。
 また、7月の定時総会では「社会保障制度改革国民会議の議論が、高齢者医療制度改革などの課題の解消につながることを期待するとともに、健保組合・健保連の主張が反映されるよう、国民会議に焦点を定め、要請活動を展開する」と強調した。
 25年新年の挨拶では、「本年は、健保連が昭和18年4月に公法人として発足して70周年を迎える。この節目の時期に日本の社会保障制度は国難ともいうべき危機に瀕しているが、国民皆保険制度を維持発展させていくのは国民共通の願いであり、医療保険者に課せられた使命」との強い決意を述べた。
C 健康強調月間の実施(平成24年10月)
   スローガンは「あなたの健康、見つめる1カ月」とし、行動変容の大切さをイメージした。月間では、健康づくりに関する各種事業の実施を通じ、健保組合加入者のみならず全国民の健康意識を高めることをめざし取り組んだ。
D 平成24年度健保組合全国大会
   平成24 年11月、東京国際フォーラムで健保組合全国大会を開催し、「待ったなし!超高齢社会に持続可能な制度を今!」を副呼称に、@高齢者医療制度に対する公費投入拡充の早期実現、A国庫補助削減を目的とした負担転嫁策に断固反対、B医療費適正化の推進と組合方式の維持・発展、C健康保険組合に対する適切かつ十分な財政支援措置の実施、の4項目を全健保組合の総意として決議した。また、金子厚労省事務次官に平井会長より決議要請文を手渡すとともに、当日は関係省庁・政党・国会議員に対して要請活動を実施した。
E 平成23年度健保組合医療費の動向
   健保組合の加入者1人当りの医療費は、本人13万2860円、家族14万2201円で、厚労省が公表した被用者保険の1人当り医療費(本人14.0万円、家族14.9万円)と比べると、本人・家族とも約0.7万円低いことがわかった。
F 健保連が意見広告
   平成25 年1月21日、読売・朝日・日経の3紙に、『日本の財産、国民皆保険制度を持続可能にする具体的な答えを「国民会議に期待します」』として、@高齢者医療を支えるために公費(税金)を投入拡充し、持続可能な制度を実現すべきです。A国は増大する医療費を適正化するための具体策を示すべきです。などを訴えた。

 (4) 健保組合の状況

@ 健保組合数
   健保組合は、平成24年4月1日現在、1435組合となっている。健保組合数はピーク時より392組合減少しており、財政状況の厳しさを如実に表している。特に解散組合は、過去5年間で66組合にもなっている。また平成25年4月1日では1420組合と、24年度の1年間で15組合減少した。
A 平成24年度健保組合予算概要
   経常収支は、5782億円の赤字を計上し、赤字予算は5年連続で全組合の9割が計上している。保険料率の引き上げ組合が584組合もあってもなお赤字となっており、厳しい状況が続いている。
B 平成23年度健保組合決算概要
   平成20年度の高齢者医療制度の創設以降、4年連続の赤字となっており、この間の累積赤字は1.6兆円を超えた。平成23年度の高齢者医療の支援金・納付金は過去最高の2.9兆円に達し、収入確保のため571組合が保険料率を引き上げた。

 (5) その他関連状況

@ 平成24年度厚生労働白書
   24年度版厚生労働白書は、「社会保障を考える」をテーマに、国民一人ひとりが参画する国民的議論の一助となることを期待した内容になっている。
A 敬老の日の65歳以上人口3074万人
   男性1315万人、女性1759万人で前年比102万人増と過去最高となった。団塊の世代の昭和22年生れが65歳に達したことで大幅に増加し、総人口に占める割合は24.1%。
B 平成22年度国民医療費は過去最高の37.4兆円
   厚労省が平成24年9月に公表した国民医療費の総額は、22年度診療報酬改定や自然増の伸びを反映し、前年度比3.9%増の37兆4022億円となり、また、1人当たり国民医療費は、前年度比3.5%増の29万2200円といずれも過去最高となった。

2.大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開した。特に、高齢者医療制度改革における公費拡充については、関係各方面に理解と支援を強く要請するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ。また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 24年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪177組合の24年度予算では、経常収支は861億円の赤字で、161組合91.0%が赤字組合となっている。対前年度予算比では、保険料収入に対する納付金等の割合は0.05%とわずかに減少して46.7%、平均保険料率は4.69‰上昇して83.65‰、また、実質保険料率は3.74‰上昇して94.71‰となり、厳しい財政状況が続いている。

 (2) 23年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪178組合の23年度決算見込では、経常収支は769億円の赤字で、144組合80.9%が赤字組合であった。対前年度決算比では、保険料収入に対する納付金等の割合は10.0%上昇して45.9%、平均保険料率は3.35‰上昇して79.21‰、また、実質保険料率は4.44‰上昇して86.14‰となり、組合の財政状況はさらに悪化した。

 (3) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、高齢者医療制度改革・柔道整復施術等関係情報・健康づくり情報など、健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や各種情報を掲載するとともに、大阪連合会の総会・理事会・委員会・地区会活動など主要な事業活動の広報に努めた。

 (4) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会を開催した。

 (5) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 改定診療報酬点数説明会、歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化対策の推進を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査等における問題点の解決を要請した。

 (6) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、生活習慣病の予防と対策など効果的ながん対策、またメンタルヘルス、救命講習会等をテーマに健康教育を実施したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (7) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の運営に資するため、財政状況分析など調査・研究し、有効活用を図った。

           
   
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