■2013年8月 No.503
高齢者医療の拠出金制度を改めよ
− 現役世代にあまりにも過重な負担 −
「現役世代に過度に依存する高齢者医療制度を見直すべき」。これは、経営者団体・労働団体・被用者保険団体である日本経団連、日商、連合、協会けんぽ、健保連、5者の一致した意見である。
健保組合が拠出する65〜74歳の前期高齢者医療への納付金と、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度への支援金等の総額は、平成25年度に約3兆3000億円に達する。実に、保険料収入の46.25%を占めており、多額の納付金と支援金のために、健保組合では保険料率を引き上げても、なお約4600億円の経常赤字が見込まれている。
保険料率の引き上げが、労使にとって直接負担の増大となることは、論をまたない。景気回復の兆しがみえ始めたいま、企業活動にとって痛手であり、サラリーマンには給与の手取り額や消費生活に影響する。
25年度の被保険者・家族への法定給付費総額は約3兆8000億円であり、納付金・支援金の額は、これに迫っている。
直近5年間の健保組合の法定給付費の伸び率は2〜5%。一方、納付金・支援金の伸び率は5〜9%で、いまの高齢者医療制度がこのまま続けば、納付金・支援金の額と自組合の法定給付費の額は、ほどなく逆転し、まさに本末転倒する。
しかも、これに輪をかけるように、後期高齢者支援金をいまの3分の1総報酬割から全面総報酬割に改めるという議論がある。厚労省の試算によると、それによる健保組合の負担は27年度に、現行制度よりさらに年間1400億円増加、共済組合も900億円の負担増となる。
協会けんぽは逆に2300億円の負担減となるが、実際には国庫補助の削減と健保組合の肩代わりの拡大を意図したものだ。肩代わりについてわれわれは、22年度の3分の1総報酬割導入時から反対を訴えてきた。
さらに驚いたことに、今度は肩代わりの拡大によって浮く2300億円の国庫補助削減分を、国保財源への補てんに回す議論もあるという。言語道断である。
一方、前期高齢者の医療については現在、加入者の偏在による負担の不均衡是正を名目に、被用者保険からの納付金の拠出により調整されている。前月号本欄でも指摘したとおり、いまの姿はあまりにも過剰な財政調整の仕組みになっている。
健保連など5団体は、負担構造の改革に要する財源として、「消費税率の引き上げ分を活用、充当すべき」と主張している。それによって、被用者保険はじめ医療保険制度の長期的安定・強化が図れる、とも指摘している。
合わせて、70〜74歳の一部負担を法律の本則どおり2割とすることなど、高齢者の一部負担を見直すことも、高齢者と現役世代の負担バランス適正化の観点から必要である。
参議院選挙は政権与党側の圧勝で終わり、国会のねじれ現象は解消された。「決められない政治」に終止符を打つことが期待される。高齢者医療については、社会保障制度改革国民会議の結論を得た後、「国民全体で支える」ことを基本に、現役世代にあまりにも過重な負担を強いている現行方式を早急に改めるよう、政治の場で議論が進むことを願いたい。
(T・M)