■2013年4月 No.499
将来見据え社会保障の成案を
− 「国民会議」本格審議へ −
社会保障制度改革国民会議(会長=清家篤・慶応義塾長)の審議が続いている。3月末までに7回の会合を重ね、論点整理や、労使団体・地方自治体団体、および日本医師会など医療団体へのヒアリングを終えた。
国民会議は、社会保障制度改革推進法により設置されたもの。社会保障・税一体改革でめざす医療、介護、年金、少子化対策の改革像を描く。期限は今年の8月21日までで、政府は国民会議の審議結果等を踏まえて、改革に着手する。
国民会議の存在は重い。改革推進法の本則に明記されたこと、総理大臣が直接主管すること、メンバーは、政治家や利害関係にある団体は除かれ、社会保障審議会の各部会長をはじめ、各界の著名な有識者で構成したこと―などがその理由だ。
「一体改革」に関しては、ここ数年、政府関係諸会議で消費税率アップの取り扱いをはじめとして、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がなされた。しかし、安定を欠いた政治情勢もあって、改革全体の決定は再三、先送りされてきた。
この間、健保組合財政は、時を追って悪化し、保険料率の引き上げを繰り返しても、毎年度決算の経常収支は赤字を重ねた。われわれとしては、「先行きのみえない不安をなんとか払拭できまいか」との思いをつのらせてきたところである。しかし、昨年の自・公・民3党合意から一体改革関連8法の成立によって、その具体化に一筋の光明がみえた。これは非常に大きな意義がある。
さて、国民会議の審議の動向だが、現在、精力的に開催されている。これまでの議論を集約すると、注目される意見が何点かある。「現役世代支援に軸足を移しながら、持続可能な社会保障をめざすべき」「持続可能にするためには、長期的なビジョンをもって、給付を抑制していくことが重要ではないか」「将来世代にツケを残さず、制度が持続可能となるよう、負担の引き上げ、給付の削減を議論すべき」などだ。
これらは総論としての意見で、それぞれ理にかなっている。これをわれわれの立場で各論を主張すると、次のようになる。
まず、現役世代支援の視点でみれば、現行の高齢者医療制度への拠出金増加のシワ寄せが健保組合財政を直撃し、現役世代にかかる保険料率の引き上げ要因になっている。したがって、高齢者医療制度の拠出金制度そのものに対して、早急にメスを入れなければならない。
また、現在70〜74歳の医療費一部負担金は、政府の予算措置で1割に軽減する措置がとられている。これを健保法や国保法等の本則通り、2割に戻すことが、公正な負担バランスの観点から必要だ。
国民会議は、いよいよ本格審議の局面を迎える。盛夏には、国民皆保険制度を将来にわたって持続安定させるため、大所高所からの結論がまとまるであろう。われわれはその行方を大きな関心をもって注視していく必要がある。国民会議の結論後、政府が勇断をもって法制化することも期待したい。
(T・M)