広報誌「かけはし」
 
■2012年12月 No.495

 平成24年度(2012年度)健康保険組合全国大会が11月21日(水)、東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催された。「待ったなし!超高齢社会に持続可能な制度を今!」と副呼称を掲げた全国大会には、大阪からの約200人の参加者をはじめ、全国の健保組合関係者約4000人が参集した。
 大会では、空前の財政危機にある健保組合の窮状を示す声が続出した。また、その打開策として、高齢者医療制度に対する公費投入拡充の早期実現―などを強く訴えた。
 健保組合に財政危機をもたらした最大の要因は、高齢者医療制度への過重な拠出金負担だ。全国1435の健保組合の拠出金総額は、今年度予算ベースで3兆1355億円にも達する。そして保険料収入に対する割合は過去最高の46.2%にも及んでいる。
 健保組合の負担は、もはや限界を超え、健保組合の最大メリットである保険者機能の発揮を阻害し、健保組合の存続さえも危うくしている。高齢者医療制度改革の先延ばしは許されない状況にある。
 全国大会は、三洋電機連合健保組合の小村俊一理事長が議長となって開会した。冒頭、健保連の平井克彦会長が基調演説に立った。平井会長は、「1年前と比べて医療保険制度の危機的状況が改善されたかというと『否』である」と切り出した。そして、今年8月に成立した社会保障・税一体改革関連法について、「消費税率を引き上げて社会保障の安定財源確保をめざすもの」と一定の評価をした。
 しかし、「持続可能な制度の骨格は示されていない」と指摘し、今後の社会保障制度改革国民会議での議論の進展に期待を寄せた。
 次いで、健保連の白川修二専務理事が大会決議の趣旨を説明。決議と4つのスローガン(下記参照)が、満場一致で採択された。
 続いて、三井辨雄厚生労働大臣のあいさつ(金子順一事務次官代読)があった。厚生労働大臣へ先刻採択されたばかりの決議文と、全国の健保組合から厚生労働大臣へ寄せられた要請書が、平井会長から金子次官に壇上で手交された。そのあと日本経団連、連合、協会けんぽの代表があいさつ。各団体ともに、高齢者医療制度の改革を訴えた。
 引き続き、特別企画のシンポジウムが行われた。テーマは「これからの社会保障に求められるもの〜皆保険制度の持続・安定に向けて〜」。シンポジストは政策研究大学院大学の大田弘子教授、日本経済新聞社の大林尚編集委員兼論説委員、白川修二専務理事。コーディネーターはキャスター・千葉大学教育学部の木場弘子特命教授が担当。超高齢社会下の皆保険制度のあり方について、それぞれ意見を述べた。
 全国大会は、クボタ健保組合の阪口克己常務理事の閉会の辞で盛会裏に終了した。
議長あいさつ 三洋電機連合健保組合 理事長 小村俊一氏


 健康保険組合は、現行の高齢者医療制度が施行された平成20年度以降、かつてない厳しい財政状況におかれている。平成24年度までの累積赤字額は2兆1000億円を超え、同年度予算において全組合の約9割が赤字となる見込みである。
 この財政危機を招いている最大の要因は、過重な高齢者医療制度の費用負担にある。平成24年度予算では、支援金・納付金は3兆1355億円に達し、保険料収入に対する割合は過去最高の46.2%にも及んでいる。もはや負担は限界を超え、健康保険組合の持つ最大の価値である保険者機能の発揮を阻害し、さらに、健康保険組合の存続さえも危うくしている。
 本来、高齢者の医療費は広く公平に負担すべきであり、現役世代に過度に依存することなく十分な公費を充てるべきである。健康保険組合が崖っぷちにある今、国は、速やかな公費投入拡大によって、過重な負担に苦しむ健康保険組合の負担軽減を図るべきである。
 加えて、前期高齢者納付金の計算式をはじめとする現行制度の持つ不合理・不公平な仕組みを早期に改め、健康保険組合が安定して運営できる制度とすべきである。
 一方、抜本改革とはほど遠い理不尽で一方的な負担転嫁策は、保険者の自主性を阻害するものであり、断固反対する。
 皆保険制度を今後も安定して維持するためには、公平で納得性ある持続可能な制度の構築とともに、医療費の適正化が欠かせない。国は、医療費の適正化に向け実効ある施策をとるべきであり、医療費の適正化に資する保険者機能を最も効果的に発揮できる健康保険組合方式を将来にわたり堅持・発展させるべきである。
 超高齢社会を支え得る持続性ある制度の構築に向け、我々健康保険組合は、次の事項の実現を期し、組織の総意をもってここに決議する。
 高齢者医療制度の負担は健康保険組合の負担の限界を超え、財政悪化の主要因となっている。とくに団塊の世代が前期高齢者となり、その傾向に拍車がかかる今こそ、国は、高齢者医療を支える責任を公費投入という形で明確に示し、持続可能な制度の構築を図るべきである。
 後期高齢者支援金の負担方法を変更し、健康保険組合に負担を転嫁させようとする動きは、これまでも国庫補助削減分の「肩代わり」の仕組みとして繰り返されてきた。単に予算編成上の財源捻出だけを目的とする理不尽な負担転嫁策には、断固反対する。
 健康保険組合は、健康づくり、疾病予防等きめ細かな保健事業を行うなど、保険者機能を最も効果的に発揮し得る保険者である。将来に亘って盤石な皆保険制度を堅持していくためにも、国は、適切な医療費適正化の施策を進めるとともに、制度の中核を担う健康保険組合方式の維持・発展を図るべきである。
 後期高齢者支援金・前期高齢者納付金の重い負担によって、健康保険組合はかつてない財政危機に瀕している。国は、制度改革が実施されるまでの間、過重な高齢者支援金等の負担に苦しむ健康保険組合に対し、適切かつ十分な財政支援を行うべきである。
平成24年11月21日
待ったなし!超高齢社会に持続可能な制度を今!
平成24年度健康保険組合全国大会