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自分自身、愛する家族、そして職場の仲間を

インフルエンザから守るために |
10月26日、薬業年金会館で健康教室を開催。大阪市立大学大学院 医学研究科 金澤 博准教授(呼吸器病態制御内科学)が「自分自身、愛する家族、そして職場の仲間をインフルエンザから守るために」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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金澤 博 氏 |
インフルエンザとは、"インフルエンザウイルス"が宿主(人・鳥・豚など)に感染することによって引き起こされる感染症のことを指す。インフルエンザウイルスは、A型・B型・C型の3つに大別される。インフルエンザウイルス粒子の表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)が存在し、それぞれH1―H16とN1―N9の亜型に分類されている。またパンデミックインフルエンザとは、短期間に世界的に拡大するインフルエンザウイルスの流行のことで、多数の人が年齢を問わず感染する状態をいう。
インフルエンザの症状としては、突然の高熱から始まり、頭痛、関節痛、四肢痛、倦怠感など全身症状が強いのが特徴である。日本では、幼児にインフルエンザに伴った脳炎、脳症が発症することが問題となっている。高齢者がインフルエンザに罹患すると、肺炎を併発するなど重症化する場合が多い。季節型インフルエンザの年齢別の死亡者をみると、乳幼児以外では加齢とともに死亡者は増加し、70〜80歳代の死亡が最も大きくなる。
インフルエンザの予防には、咳エチケット、手洗い、うがい、マスク着用、ワクチン接種等の個人レベルでの感染予防策を実践するよう努めることが望ましい。手洗いは必ずせっけんを用いて行う必要がある。感染予防のための手洗いの目的は、減菌よりはウイルスの付着を洗い流すことである。マスクは着用することで他者への感染を減らすことができる。また、手洗い等との組み合わせにより、マスクの予防効果がさらに向上するとされている。
インフルエンザウイルスは、高温・湿気が苦手であるために、事業所内の室温は22度以上、50%以上の湿度を保つことが大切である。
インフルエンザワクチンは、高齢者や基礎疾患を有する者ではとくに必須である。現在、季節性インフルエンザワクチンの接種率は約33%であると報告されており、今後の接種率の向上が期待される。薬物治療薬としての抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)には、現在、オセルタミビル、ザナミビルに加え、ペラミビル、ラニナミビルの4剤が使用可能である。しかしながら、平均解熱時間から判定したノイラミニダーゼ阻害薬の有効性は4剤間で大きな差はないとされている。
学校・事業所内での感染拡大防止対策は、複数の予防対策を総合的に行うと効果が大きい。とくに感染者の自宅待機措置は、経済、社会的コストへの影響を最小限にとどめるためには重要である。
このように、感染拡大防止のために施行可能な対策を、各事業所ごとに計画し、着実に進めることが最も重要な施策であると考えられる。 |
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