 |
メンタルヘルス問題は本当に"こころ"の問題か

− 課題構造の解明と考え方 − |
11月13日、薬業年金会館で心の健康講座を開催。関西福祉科学大学 健康福祉学部三戸秀樹学部長が「メンタルヘルス問題は本当に"こころ"の問題か―課題構造の解明と考え方―」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
 |
|
 |
|
三戸 秀樹 氏 |
いま労働で起きていること
国際比較データの多くから、わが国の働く人々のストレス実態は、さほどランキングが高くないのが実状です。したがって、いま労働で起きているメンタルヘルス問題が、本当に"こころ"の問題なのかという問いかけを発してみます。
現在実施されているメンタルヘルス対策のほとんどは、現象的原因の対策に終始してしまっています。本当は、この裏に隠れている本質的原因への対策へ、いかに肉迫するかが問われているのではないでしょうか。
「自殺対策基本法」は、2006年10月に施行されました。5年あまり経っても、未だ劇的減少の効果は出ているとはいえません。働く人たちへ向けたメンタルヘルス対策の多くは、事業場という組織の森の風抜けが悪く、そしてその土が腐っていることに根本的原因があったとしても、ひたすら、1本の木である構成員を取りだし、その木の回復をさせ、再び森へ戻しているのではないでしょうか?
現代の労働者のこころに見合った事業場の組織構成や、労働の仕掛けへ組み直す必要があります。この点は、"現代労働者のこころ"を知ると称し、二者対応表を示し、「主人公化」するこころから掘り下げてみました。もちろん1本の木の側に、まったく問題がないわけではありませんが。
クライアントを中心にしたテトラ構成
この課題構造を主人公化するこころから解明し、次に防止へ向けた考え方を提示しました。"現代労働者のこころ"が「主人公化」していくなか、クライアントを中心におくと、そこには周囲にテトラ構造が構成できることに気づかされます。これらは、@家族、A事業所、Bワーカー、C医師(精神科医)・看護師の4つです。現代クライアントの主人公化心理からは、対応の基本は、あくまでクライアントと同じ地平で考えることにあります。
そして、この4つの構成要素のうちで、弱体化が急速に進んでいるもの、それが@家族、A事業所です。これを説明する概念としては、「家庭の外化」論があります。家庭の外化とは、家のなかのものがハード、ソフトともに外へ出されていくことを意味しています。もっとも時間の関係から、家庭の外化についての詳細説明は割愛しますが…。
以上の結果、家のなかの機能は空洞化し、ストレス解消機能であった癒し機能が失われつつあります。加えて、この4つの構成において、今後大きく期待できる要因がワーカーやワーカー的役割担当となります。さらに現行状況において、C医師(精神科医)・看護師が、クライアントと同じ地平で考えるワーカー的役割を担うことが重要になります。 |
|
 |