広報誌「かけはし」
 
■2012年12月 No.495
時評

柔整等療養費の適正化へ第一歩

− ようやく公開の場での議論開始 −


 柔道整復等療養費の適正化へ向けた議論が動き出した。社会保障審議会医療保険部会に設置された「柔道整復」および「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう」の2つの療養費検討専門委員会のメンバーが決まり、初会合が10月19日に開かれた。
 専門委員会では柔整等療養費について当面、平成24年度(2012年度)療養費改定のとりまとめと関連事項の検討をする。その後、中・長期的な視点に立った療養費のあり方の見直しを行う。
 すでに医療保険部会から、昨年12月に柔整等療養費問題に関する議論の整理と、療養費改定の基本的考え方(案)が示されている。それによると適正化方策は次のようになっている。
 まず、柔整療養費については、@多部位施術、A長期・頻回施術、B受傷初期段階での施術、C瀕度が高い施術への理由書添付―などの見直し。あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費については、それぞれの施術の特性を踏まえた往療料等、運用面では施術者に施術録の整備を求める等の見直し―などだ。
 今回の療養費改定は、この方向性に沿って行われる。したがって、専門委員会での具体策への落とし込みが焦点となる。
 療養費改定率に関しては、これまで慣例により診療報酬改定率の2分の1の幅とされてきた経緯がある。ちなみに24年度の改定率はプラス0.004%だった。
 しかし、柔整等療養費が近年、国民医療費をしのぐ伸びを示している点や、経済の低迷という現状からも、これまでの慣習どおりにはいかないだろうとの見方が強い。10月19日の専門委員会の初会合でも、当然ながら保険者代表委員が一致して引き下げの意見を提示した。議論の成り行きが注目されるところだ。
 柔整等療養費については、21年の行政刷新会議による事業仕分け、および会計検査院の21年度決算検査報告で、問題点が指摘された。それ以降、柔整施術等の実態について国民の認識が深まり、不正排除へ向けた声も高まった感がある。こうした流れは好ましいものだ。
 また、これまで水面下で議論されていた療養費改定問題が、専門委員会の場で公開実施されるようになったのは、大いに歓迎できる。
 柔道整復、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう施術に関する問題は多い。施術所開設のあり方、医療機関との関係、施術者教育などいろいろある。今回検討の俎上に載っている項目以外のこれらも、今後専門委員会で検討され、それをきっかけに柔整等療養費の適正化が進むことを期待したい。
 他方で、健保組合など保険者は、被保険者・家族に対していっそう正しい受療の啓発活動、施術者側には健康保険制度のルールにもとづいた適正な施術の励行が、国全体の医療費適正化の観点から求められている。
  (T・M)