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COPDを御存知ですか? 喫煙がもたらす生活習慣病 |
6月15日、薬業年金会館で健康教室を開催。大阪市立大学大学院 医学研究科 金澤博准教授(呼吸器病態制御内科学)が「COPDを御存知ですか?喫煙がもたらす生活習慣病」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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金澤 博 氏 |
喫煙が、肺癌や心循環器系疾患等、さまざまな病気の主要な危険因子であることはすでによく知られた事実であり、COPDと呼ばれる病気も、その代表的なものの一つです。今日では、かつて"肺気腫"、"慢性気管支炎"と呼ばれた病態をまとめて慢性(Chronic)閉塞性(Obstructive)肺(Pulmonary)疾患(Disease)と呼び、その英語の頭文字がCOPDというわけです。
「階段の上り下りがキツイ」、「咳や痰が多くなった」などといった身体の変化を、年齢のせいと見逃していませんか?同世代の他の人よりも「息切れがしやすい」と感じていませんか?日本ではCOPDの有病率は40歳以上の8.5%、すなわち潜在患者数は530万人以上と推測されていますが、治療を受けているのはそのうち5%未満にとどまっています。
最大の原因は喫煙で、長期間にわたる喫煙がCOPDの発症に大きく関わるという意味で、"肺の生活習慣病"といわれています。たばこの煙による気管支や肺の慢性的な炎症によって、徐々に肺の破壊が進行するとされ、今後COPDで亡くなる人は年々増加するものと推測されています。COPDは肺の病気ですが、胸部X線検査では診断が困難です。このことが、COPDでありながら治療どころか診断も受けていない「放置された患者さん」を多数生み出している一因になっています。
COPDの診断にはスパイロメーターという検査装置を使った呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要です。スパイロメトリーは息を吐き出す力を数値化できる検査で、この数値によってCOPDの診断が可能になります。息を深く吸い込んで思い切り最後まで吐き出した量が努力肺活量ですが、最初の1秒間に吐き出す息の量(1秒量)が努力肺活量に占める割合(1秒率=1秒量/努力肺活量)を計測し、この1秒率が70%以下の場合にCOPDと診断されます。タバコを吸い続けている方、吸ったことのある方は、ぜひこの検査を受けてみてください。
さらに、測定結果を誰にでもわかりやすい「肺年齢」として示すこともできます。肺の機能は年齢とともに衰えていきますが、「自然な衰え方をした場合の何歳の人の肺に相当するか」が肺年齢です。肺年齢が実年齢と同じか若ければ健康、実年齢より上だった場合は要注意で、COPDの危険性もある、と判断できます。
COPDの予防は、いうまでもなく禁煙であり、最大の危険因子である喫煙をやめることで、病気の進行を遅らせ、生命予後を改善します。このように禁煙はいろいろな治療法のなかで、唯一COPDの進行抑制効果を持つとされています。家族にタバコを吸う人がいる場合は、喫煙の有害性を話し合って、禁煙を勧めましょう。禁煙したくてもなかなかできない人は、禁煙外来などで医師に相談してみてください。薬物療法としては、気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張剤、咳を切れやすくする去痰剤などが対症療法的に用いられます。
息が切れると動くのがおっくうになり、運動不足になって運動機能が低下して呼吸困難がさらに悪化する、という悪循環になりがちです。そのため、ウォーキングなどの軽い運動や腹式呼吸も効果的です。肺や気管支の障害は、インフルエンザや肺炎などにかかった場合に重症化する危険性があります。インフルエンザが流行する冬季にはうがいを励行する、ワクチン接種を受けておくなど十分に注意することが大切です。このようにCOPDという病気をよく理解し、禁煙活動を通して予防に努めることが、今後ますます重要な健康推進活動の一つになることでしょう。 |
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