広報誌「かけはし」
 
■2012年7月 No.490
時評

健保組合存続のために保険者機能を果たそう


 大阪連合会傘下の177健保組合の平成24年度収支予算の概要をみると、昨年度を上回る約半数の健保組合が保険料率を引き上げた。その結果、平均保険料率が0.47%上がった。にもかかわらず、経常収支は861億円の赤字となっている。
 これは、高齢者医療制度への拠出金などの保険料収入に占める割合が47%と全国平均を上回り、医療給付の増加とともに負担が増大していることによるものである。
 また、実質保険料率も全国平均を大きく上回っており、このままだと大阪では健保組合の存続問題が他地域よりも早く浮上する可能性がある。
 これまで私たちは、健保連とともにさまざまな機会に高齢者医療制度への公費投入拡充、医療保険制度の安定的運営による皆保険制度の維持を訴え続けてきた。しかしながら、この数年は高齢者医療制度改革会議をはじめ、多くの検討の場は設けられたものの、結果が見え進展したことはない。むしろ、制度間の財政調整による負担増の話が年中行事のように出てくる。
 今回の社会保障と税の一体改革の議論も同じである。本来、社会保障の支出増を抑え現役世代や将来世代の負担を和らげること、年金・医療・介護の見直しにより持続可能な社会保障の仕組みをつくることが改革の目的だったはずだ。
 これ以上、社会保障の改革が遅れ消費増税ばかりが議論され、政争に利用されていてよいのだろうか。
 一方で、国の動向がいかにあれ、医療保険者として健保組合は、その存続に向けて加入者の健康を守り高めるために、さまざまな対応をする必要がある。
 とりわけ母体企業と連携した組合組織の強化、保険給付の適正化など継続した取り組みが大切である。ジェネリック医薬品の使用拡大、療養費の透明化、レセプトの点検強化、加入者への医療情報提供・啓発活動など、まだまだできることがたくさんある。
 また、広い意味で、これらの取り組みにより、健康な加入者による経済活動の活性化と雇用機会の増加で健保財政の健全化が図られるという好スパイラルに結びついてくれれば、保険者の役割を高い次元で果たすことになるし、組合方式の優位性が理解されることになる。
 財政が厳しいなかではあるが、大阪においては母体企業と問題点を共有しながら着実に保険者機能を果たしていくこと、加入者に健保組合の存在価値を理解いただくことが、私たちの喫緊の課題だと痛感している。
  (T・N)