広報誌「かけはし」
 
■2012年4月 No.487


24年度事業計画と予算を決定



 健保連大阪連合会は3月28日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で平成23年度第2回総会を開催した。出席組合156組合、委任状提出35組合、合計191組合が参加した。
 総会は規約の定めにより安藤力会長が議長となり、議事録署名者にエディオンWEST健康保険組合、近畿化粧品健康保険組合を指名したのち、議案の審議に入った。
 議事に先立ち、安藤会長からあいさつがあった(下欄に安藤会長のあいさつ要旨)。続いて来賓として出席した近畿厚生局の中元京和保険課長からあいさつがあった。
 中元保険課長はそのなかで、平成24年度の予算編成に際して、現時点で近畿厚生局管内の289健保組合のうち、127組合(44%)が一般保険料率を引き上げたことを示唆した。また、厳しい状況にあっても、特定健診・保健指導等保健事業の推進、被保険者証の検認、ジェネリック医薬品の使用促進、レセプト点検―など医療費適正化事業の重要性は変わらないことを強調した。

 安藤会長あいさつ (要旨)
安藤会長
 昨年の東日本大震災から1年が経過しました。あらためてお見舞い申し上げます。新聞やテレビの報道を見聞きするにつけて、多くの一般の方がたの温かい支援活動が行われる一方、政治・行政の鈍い動きがもどかしく、いささか疲労感を覚えます。一日も早い確実な復旧、復興が待たれるところです。
 政治に目をやりますと、1月24日に開会した第180回通常国会は、3月8日に平成24年度予算案がやっと衆議院を通過し、参議院で審議中ですが、4月6日には自然成立する運びとなっています。今国会の会期は6月21日までとなっていますが、他にも問題が山積しています。
 まず、われわれにとって最も関係の深い「社会保障と税の一体改革」は、入口の消費増税問題に対する与党内調整で紛糾し、今後の野党の出方も不透明で、関連法案の提出、成立までにはたいへん高いハードルがあるように思われます。これ以外にも、東日本大震災の対応はもとより、衆議院の一票格差是正、国会議員定数の削減、選挙制度の見直しや、国家公務員の給与引き下げ、外交、沖縄問題など、いずれも重要な課題の早期解決が求められています。いずれにしても、国会議員の皆さんには、国家国民のために党派を超えた真摯な対応が強く望まれています。
 さて、われわれを取り巻く情勢は、好転する兆しもなく厳しさだけが増しています。23年度予算の大阪連合会における集計では、経常収支赤字組合が178組合中166組合で93.3%にもおよび、赤字総額は1073億円に達するといった状態です。長引く経済環境の厳しさにともなう保険料収入の伸び悩みや、高齢社会下での保険給付や、拠出金の増加が大きく影響して、ここ2〜3年でほとんどの組合が保険料率を引き上げるというたいへんな状況になっています。
 「社会保障と税の一体改革」については、消費税率の引き上げが強調され議論されるなか、解散風や増税反対の声が大きいものがあります。消費税法案は、3月中には閣議決定し国会提出するという方針は変わっていないようです。
 われわれとしては、消費税を社会保障目的に使うことや、実施時期、税率を明らかにしている点については評価するものの、健保組合・健保連が主張している前期高齢者医療への公費投入など、健康保険事業への負担緩和がどれだけのものになるかがまったく不透明であり、現役世代に負担を強いることのないよう意見具申をしていかなければなりません。マスコミ報道も「一体改革」の問題は、年金問題が中心であり、われわれとしては医療問題を、とくに現役世代の負担軽減に結びつくような主張を取り上げていただかなければならないと考えます。
 一方、国会審議でも取り上げられた健康保険料率の統一は、医療保険制度の一元化に結びつくものであり、健保組合の自主運営による優れた保険者機能を否定するものであって断じて容認することはできません。
 高齢社会の進展にともない、医療費が増大するなかで、医療提供側の適正化、効率化についても大いに訴えていく必要があります。
 長年にわたり日本の国民皆保険制度をけん引してきた健保組合が、今後も医療保険制度を進歩、発展させていくうえで欠かせない存在として、自覚と覚悟をもって、胸を張って事業を推進していきたいと思っています。


 ●総会の経過
 議案第1号
 平成24年度事業計画(案)
 議案第2号
 平成24年度収入支出予算(案)
 議案第3号

 平成24年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること

  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号

 大阪連合会役職員表彰規程(案)

 議案第5号
 平成23年度被用者保険運営円滑化補助金事業会計収入支出予算および同説明(案)
  以上、原案どおり承認された。
総会では、議案の審議終了後、来賓として出席した健保連本部の白川修二専務理事から中央情勢報告があった。

 ●健康保険組合をめぐる諸情勢
 
(1)社会保障と税の一体改革
   昨年6月に一体改革の成案がまとめられ、その後「社会保障審議会」等での議論を踏まえて、本年1月に政府・与党社会保障改革本部で素案を決定し、閣議報告された。しかし、与野党協議は遅々として進まず、結局不調に終わり、2月17日には、素案のまま「社会保障と税の一体改革大綱」として閣議決定された。
 政府は今後、消費税率の引上げを柱とした「大綱」を基に必要な関連法案を国会に提出していくことになるが、与党内部・与野党間に不協和音が充満しているなかで、先行きの不透明感はぬぐえない。
 「大綱」に対して健保組合・健保連は、@消費税引上げによる財源で手当される社会保障の項目・内容が明確でない、A高齢者医療への公費投入・拡充、特に前期高齢者医療について全く触れられていない、B実施時期が先送りされているなど、問題点が多くあることを指摘している。我々としては、改革の動きを見定めながら、従来から主張している社会保障の安定財源の確保により、安心できる持続可能な制度の確立を強く求め、広く世論に訴えていくことが重要である。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
   平成22年度決算の経常収支は、全体で633億円の赤字となり、赤字組合は81.2%(147組合)となっており、また23年度予算では、経常収支で赤字額が1073億円にものぼり、赤字組合は93.3%(166組合)にも達した。
 健保組合では、医療給付や納付金等の過重な負担に対応するため、レセプト点検、療養費適正化、後発医薬品の使用促進や各種保健事業など、医療費適正化をきめ細かく実施しているが、毎年続く負担増には対処しきれず、多くの健保組合が保険料率の引上げを余儀なくされているのが実情である。
 24年度予算も、診療報酬・介護報酬の改定や納付金等の増加が見込まれており、また介護納付金の総報酬制の導入は、24年度は見送られたものの必ず再浮上してくる状況にあるなど、一段と厳しい環境にある。
(3)大阪連合会の事業等
   大阪連合会では、各健保組合・各地区会をはじめ、理事会・各委員会において常に真摯な議論を重ねて当面する課題に取り組んでいる。
 本年度は事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、次の事業活動を実施する。


事 業 計 画
 
基本方針〕
(1)重点事業活動
   社会保障と税の一体改革に対する的確な対応および保険者機能の強化に向け、健保連本部との連携を一層密にして、次の事項について取り組む。
 

@理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A健保連の主張を国政の場に反映させるため、政党・国会議員への要請活動を積極的に推進する。
B機関誌「かけはし」やホームページなどの広報活動を通じて、健保連の考え方の周知を図り、理解度を高める。
Cデータ分析事業を展開し、保険者機能強化への支援を行う。
Dマイナンバーと医療情報等の活用に向けた調査・研究に取り組む。
E健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
F健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
G関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
H医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
I大阪府保険者協議会では、健保組合の意向を踏まえて、医療費の適正化や有効な保健事業に取り組む。
J国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
K「けんぽれん病院情報『ぽすぴたる!』」への登録促進について、引き続き積極的に取り組む。
L健保連地域懇談会では、大阪連合会の意見を反映させるとともに、近畿地区各連合会とは密接な連携を図る。
M都道府県連合会の枠を超えての連帯の強化を図るための保健事業等に取り組む。
Nその他、時宜に応じた諸対策を実施する。

(2)組織活動
 

 組織活動の強化を図り、次の事項を実施する。

 

@理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催して対策を協議する。
B地区会を中心とした諸活動の充実を図る。

(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、次の活動を実施する。

@会員組合に提供する情報の充実を図る。
A組合予算編成および組合事務に関し、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B組合予算編成事務説明会を開催する。
C永年勤続者表彰式を挙行する。
D会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
E会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談を実施する。

〔事業活動〕
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行

@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・社会保障と税の一体改革関連(医療保険制度等改革への対応、健保組合に対する国の財政支援の継続・拡大等)。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と事業運営。
・政党・国会議員への要請活動。

(2)広報活動の強化

@会員組合の事業活動の推進に役立つよう大阪連合会ホームページの充実を図る。
A会員組合が行う広報活動に役立つ広報研究会を開催する。
B会員組合の広報活動に役立つ広報資料を提供する。

(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。

・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
・経営者団体・労働団体および医療関係団体。
・その他、必要な関係者。


2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・合理化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上

@事務長研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・庶務会計・徴収)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D健保事務相談を実施する。

(2)組合業務の改善・合理化の推進
    パソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
    データ分析研修会を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化

@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。

(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化

事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。

(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用

@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
Aレセプトおよび特定健診・特定保健指導データによる、医療費統計・分析の活用を図る。
B柔道整復療養費に関する情報の収集を行い、適正化を促進する。
C後発医薬品の使用促進を図る。

(4)レセプト点検等に関する研修会の実施

@診療報酬改定に関する説明会を開催する。
Aレセプト確認事務に関する研修会を開催する。
B柔道整復・鍼灸・マッサージ療養費に関する研修会を開催する。
C求償事務に関する研修会を開催する。

(5)医療対策室の活動強化

レセプト・保険給付相談を実施する。


4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施

メタボリックシンドローム対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。

(2)保健師活動の実施

@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。

(3)大阪府保険者協議会との連携

保健活動部会との連携を図る。

(4)感染症対策
    エイズ、インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約。
・プール利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
A健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。

5.総合組合の運営助成
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
   

@総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
A特定健診・特定保健指導の実施上の課題を検討する。
BIT化による組合業務推進について検討する。
C協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。


平成24年度 収入支出予算概要

(単位 千円)